第39話 聞いてない
とりあえず、連休までは頑張ろう。
一区切りつけないと、身体も、精神的にも持たない。
そう自分に言い聞かせながら、忙しい日々を過ごしていた。
ただ、昼休みには必ず会いにきてくれる、靖枝さんの姿が昨日は見られなかった。
珍しい事もあるもんだ!と、最初は思っていたが、今日も姿が見えなかった。
どうしたんだろう?カゼでもひいたのかも?と思い、夜に電話をしてみた。
「もしもし、やすえ~。ど~したの?昼休み来なかったけど、カゼとか?」
「あ~。なおき。実は私、会社辞めたの」
「え?・・・・・・・・ちょ・・・・ちょっと待って、俺、何も聞いてないぞ!」
「うん、だって言ってないもん」
「今から部屋に行くから!!」
俺は慌てて、靖枝さんの部屋へと向かった。
「話の続きなんだけどさ、どうしたの??何かあった??」
「これは私の問題だから、なおきには言わなかったの。だって、心配するでしょ」
「それでも、一言くらい言ってくれなきゃ!」
真剣な表情で、靖枝さんは語りだした。
「私ね、今の会社に入って5年になるけど、正社員じゃないって、なおきには言ったよね」
「ああ、それは聞いた」
「最初は、周りから、嫌な目で見られてて、中卒だしね。これも言ったかな」
「うん、聞いた」
「それでも頑張れば社員にしてあげるって、上司が言ったのね。
だから今まで頑張ってきた。1年経つたびに、上司に聞いてた。
いつになったら、社員になれますか?って。だけど、いつも、なあなあの返事でごまかされ続けて、もう、いい加減に、腹が立って、言ってやったの。上司に!!
今年も、社員になれないんですかって。そしたら上司が、「学歴がな・・」とか言って、またごまかしたの!!!
最初から、社員にする気なんてなかったんだ!!!あいつらは!!!
人間扱いもしないで、働かせて、本当にただのブラックな会社だよ!!!!」
ものすごい勢いで、靖枝さんは怒っていた。こんな姿見た事ない。
「そ・・・・・そうだったんですか・・・・・」
「なおきも一応社員だろうけど、給料めちゃ安いでしょ!」
「バイトに毛が生えたくらいかも・・・・・・・」
「そんな会社、信用したらダメだよ!」
確かに・・・・・最近は・・・・・ひどいかも・・・・・・
「そ・・・・・それで、これからどうするんですか?」
「この前、なおきと行ったお店あるでしょ~」
「ああ、友達の店ね」
「店長の渡辺君は、私の気持ちわかってくれて、雇ってくれたんだ~」
「そうなんですか」
「どれだけ頑張っても、ダメなものはダメ!見切りをつけるのも重要だよ~!!
だから、私は後悔なんてまったくしてないんだ~」
社会人の辛さを、身に染みて実感したような気がする。
それと、学歴社会って言うことにも・・・・・・・・・・・・・
俺はそんな、偉くなろうとは思ってはいない。
だけど、それに見合ったお金は当然ほしい。
学歴がないだけで、バイト並みのお金しかもらえないくせに、
責任を任される仕事をさせる。矛盾してないか?!
この出来事で、俺の社会批判の考えが、さらに加速へと進んでいった。
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