第36話 春が近い

卒業してから1年が過ぎた。

去年の今頃は、後悔や不安の気持ちで、いっぱいいっぱいだった。

でも、彼女も、友達もできた。

悩んでいたのが、バカらしくなるくらい、充実している1年だったな~と振り返ってみて、人生も悪くないもんだ、と実感していた。


学生は、春休みに入り、あの場所で、加藤さんの姿は見れなかった。

と言うか、見られなかった。


社会人の俺には、春休みなんて関係なく、逆に、忙しい日々で、ストレスは溜まるいっぽうだった。

昼休みに、靖枝さんと二人でいることが多いが、最近は、仕事のグチの方が多くなっていた。


「はぁ~~~~~。また残業確定ですよ・・・・・・少しは休ませてほしい・・」


「ほんとだよね・・・・・・もうちょっと人間扱いしてほしいよね~~まったく」


「がぁぁぁぁ!もうこんな話してても、余計にストレス溜まるから、違う話題にしよう・・・・・・そう言えばもうすぐで、やすえの誕生日だね~」


「あっ!そうだった・・・・・・4月6日だった(笑)」


「当然、夜に誕生日会するんでしょ?」


「あ~~~~~。ゴメン・・・・・・・その夜は抜け出せない用事があって・・・・前の日だったらいいよ~~。0時過ぎたら、6日になるからね♡」


「そ~なんですか~。じゃー5日の夜と言うことで」


「うんうん。期待しちゃうぞ♡」


なんだか、毎月イベントがあるな~。

でも、こんな事もないと、仕事一筋になってしまうからな~。

仕事なんかに負けてたまるか!!と、訳が分からない闘争心が沸いてきた。


毎日の残業!残業!が嫌になり、今日は定時で帰ろうと、久しぶりに早めに帰ったら、あの場所に、加藤さんの姿があった。


「あっ!横井君!お仕事ご苦労さま!最近、忙しかったの?見かけなかったから」


「加藤さんの方こそ、休み中なのに、大変だね~。そそ、忙しかった・・・・・」


「横井君に比べたら、こんなの全然~~~。仕上げの段階に入ってたの(笑)」


「おっ!いよいよ完成なんだね!たのしみ!」


「本当に、私、この場所が好き!春になったら、桜も見えるだろうし、またここで描かなくっちゃ(笑)」


「季節ごとに、ちがう顔が見えてくるからね~。みてて飽きないよね!」


「そうそう!!・・・・・・・・

あそこの桜並木を誰かと歩きたいな~~綺麗だろうな~~~~~」


返答にすごく困った;;


「そ・・・・・・そうだね、綺麗だろうね~。そうだ、友達のみんなは元気??」


「うん。元気だよ~。彼氏ともうまくいってるようだし~」


またまた、返答に困った;;;


「そ・・・・そっか・・・・また、みんなで遊びにでも行きたいよね~」


「そうだよね、みんなで遊びに行きたいよね~。でも、横井君忙しそうだし~」


「いや、前もって言ってくれれば、予定はなんとかするよ~」


「そうなの?じゃーみんなに連絡とってみるよ(ニコッ)」


ここでも、仕事なんかに負けない!と言う、闘争心が沸いていた。

プライベートも充実してだからこそ、仕事の辛さも、乗り越えられる。

そう思わないと、やってられなかった・・・・・・・・


話は着々と進み、今度の日曜日に、遊園地でも行こうと決まった。

その夜に哲の方から、俺の家に来て、詳細を聞かされた。


「一応、6人で行こうって話になってるんだけど、大丈夫か?」


「6人?」


「おなじみのメンバーと、あと、三月ちゃんの彼氏なんだけど」


「初めて会う人だね。まー彼氏だったら、仕方がないよな」


「大丈夫、大丈夫!お邪魔はしないから(笑)」


「何のことだ???」


「それじゃー日曜日な~~~~」


なんか、意味深な言葉を言って、帰ってしまった・・・・・・・・・

休日出勤もたまにあって、今度の日曜日は絶対にしないように、よりいっそう仕事の方を頑張ってこなした。


無事に、仕事の方もこなし、日曜日の遊園地へと遊びに出かけた。


なんだか、俺と加藤さんを除いて、4人で話し合っていた。

「よし!決まり!」と哲が言い出し、何が決まったんだ??と、俺と加藤さんが不思議がってる中、こう言い出した。


「俺たち2人2人で園内を回るから、直と一恵ちゃんで後はお好きに~~~~~」


「え・・・・・・?おい・・哲~~~~」


ピューーーーーーと、4人はこの場を去って行ってしまった・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・いっちゃったね・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・何考えてんだ?哲の奴・・・・・・」


「・・・・いっちゃったもんは仕方がないよね・・・・・」


「・・・・そうだね。俺たちも行こうか・・・・・・・・」


「・・・・そうだね・・・・・行こっか・・・・・・・・」


これじゃー、デートじゃん!でも、加藤さんがいいのなら、いいか。

そんな事を思いつつ、二人で園内を歩き始めた。


「加藤さんは、絶叫系は強いほうなの?」


「ん~~~~~~~・・・・あんまり得意じゃないかな~~・・・・横井君は?」


「俺は、全然大丈夫!むしろ好きなくらい!」


「でも、せっかく遊びに来たんだし、私に構わずに、好きなの乗っていいよ~」


「じゃー、あのジェットコースターにしよう!」


「・・・・・・うゎ・・・・怖そう・・・・でも、いいよ~。覚悟はできた!」


そうやって、怖がる加藤さんと共に、ジェットコースターはスタートした。


「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


めちゃくちゃ、俺の腕にしがみつき悲鳴を上げていた。

俺の方も、心の中で、ドキドキの悲鳴を上げていた。

結局、最後まで、しがみつかれたまま、ゴールにたどり着いた。


「・・・・・・・こ・・・・怖かった・・・・・・・あっ!ごめんなさい・・・・

ずっと、しがみついてて・・・・・・・・・・」


「大丈夫だった??」


「う・・・・・うん。横井君がいたから安心だったよ(笑)」


二人は、いろいろな乗り物に乗ったり、お化け屋敷いったりで・・・・・・・・・もう、デートそのもだった。


最後は、お決まりの観覧車のとき、哲の方に電話してみた。


「そう言えば、帰りはどうするんだ??」


「そりゃー、直が加藤さん送って行ってな~~~~よろしく!ガチャ」


「お・・・・おいっ!・・・・」


あっさりと切られた・・・・・・・


「ここからの眺めから、描きたいな~。夕日にしずむこの景色・・・・・・・・・最高だなぁ~」


「本当に、綺麗だよね~」


「観覧車なんて、小さい時に乗った以来だ(笑)」


「俺もそうかも。なかなか乗る機会ってないからね~」


「え~~~~~。彼女さんと乗ったりしないの?」


「そうだね・・・・乗った事ないね」


「ふ~~~~~~ん。でも、今日は楽しかったね(ニコッ)」


「うんうん。加藤さんの怖がる姿がすごく良かったよ~(笑)」


「あ~~~~~~。それは言わないでよ~~~~~(笑)」


楽しい時間は過ぎるのが早く、加藤さんの最寄り駅まで送っていった。


「今日は、ありがとね~~~。すごく怖かったけど(笑)楽しかった!!!」


「こちらこそ!怖がる加藤さんも見れたし(笑)楽しかったよ~~」


「それじゃ~~~また遊びにいこうね~~~。バイバイ~~~」


結局、哲以下4人と、最初に合流したっきりで、二人で遊んだようなもの。

靖枝さんとは、部屋デートが多いから、こんな風に外出デートって、

なんだろ・・・・・青春そのものって感じがして、すごく刺激的だった。

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