第34話 ホワイトデー(前編)

靖枝さんの友達の店に行ってから、俺の方が少し、心の距離を置いた感じになっている。

彼女の方は、そんなことも知らずに、相変わらず、ちょっかいをだしてくる。

好きな気持ちは変わらないけど、何かが違う・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そんな中、ホワイトデーが近づいてくる。

ちゃんと、お返しをしないと怒るだろうな~と、一人で買い物に出かけた。


今年は、2個のお返しをしないといけない。

実は、一日遅れだったけど、加藤さんからも義理チョコを貰っていたのだ。

一人で、買い物自体、あまりしないから、悩みに悩んで、お菓子でいいやと、無難な所で妥協した。


ホワイトデー前日に、加藤さんに渡そうと、電話かけようとした時、そういえば・・・・・・俺から一度も電話をした事ないのに気づき、めちゃ緊張していた。


プルルルルルルル・・・・・・・・・・ガチャ


「あ・・・・もしもし・・・・・加藤さん?」


「もしもし、横井君からの電話って初めてだね~(笑)」


「そ・・・・そうなんだよ~・・・・変に緊張してるよ~(笑)」


「アハハ、で、どうしたの?」


「明日なんだけど、あの場所には来ないのかな?」


「そうね~、最近は天気も悪くて行けてないから、天候次第なんだけど~。ちょっと調べるね~。・・・・・・・明日は晴れみたい!」


「よかったら、あの場所で会えないかな?バレンタインのお返しがしたいから」


「えっ!お返しなんてくれるの。横井君は断っても、意地でもくれそう(笑)」


「そんなの、当たり前じゃん(笑)」


「それじゃ~、ありがたく、もらっちゃおうかな(笑)」


「うんうん!もらってください!(笑)」


ホワイトデー前日に、渡す約束をした。

加藤さんと会話すると、自然に笑顔になってくる。一度は告白もしようとしたから、未練がまだ残ってるのかもな・・・・・・・・・・・・・・・


仕事が終わって、急いで、あの場所へと向かった。


「あ~!横井君~!お仕事ご苦労様~~!」


いつも通りのあいさつに、少し、懐かしさを感じられた。


「わざわざ、ごめんね、加藤さん」


「いいよ~。そろそろコンクールも近くなってきたから、また描かないと~(笑)」


「おっ!今度は大賞になるやつだね!」


「あ~~~~。またプレッシャーかけるんだ~(笑)」


「俺も、図工の時間だったかな。風景画を描いてたら、めちゃ先生に、褒められた記憶があるな~」


「横井君も、絵の才能があるんじゃないの~~」


「いや~、絵の具とかも、適当に塗ってたんだけど、なぜか褒められたよ(笑)」


「その適当な所が才能なんじゃないの?(笑)」


「そうなのか!!!今度、俺も描いてみようかな~(笑)」


「いいね!!描いてみようよ~~!!」


「ただ、時間がなくてね;;」


「そ~だよね。お仕事があるもんね。社会人は大変だと思うよ~」


「こんな事言ったらアレなんだけど、うちの会社って休みが少ないんだよね・・・・

今じゃ、週休二日制は当たり前なのに、土曜日が1日と日曜日しかないんだよね」


「そ~だよね~。学生みたいに、週休二日で、春、夏、冬休みもないもんね~。

そんな中、頑張ってる、横井君は偉いよ!見習わなきゃ!」


「ゴメン・・・・・・変なグチ言っちゃて・・・・・・・・」


「いいよ~~。溜めないで、なんでも話して!(ニコッ)」


「あっ!これ、お返し。何買っていいか解らなかったから、期待はしないで(笑)」


「フフフ、気持ちだけでうれしいよ~!ありがとう!!」


「それじゃ~暗くなるから帰ろっか~」


「そうだね~。それじゃ~またね~バイバイ~~(笑)」


やっぱり、同い年だからなのか?。加藤さんと話してると、安心感みたいなものが得られる気がする。


靖枝さんと居るときは、舐められないように、大人ぶって、背伸びして・・・・・・

男が、彼女に、甘えすぎるって言うのが、自分にとっては、カッコ悪いと思ってしまうので、どうしてもそんなに、甘えられない。

本当に、二人のバランスを保つのが難しいと、つくづく思ってしまった。

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