第33話 つり合い
「お~靖枝~。いらっしゃい~」
「お~、渡辺君~また来たよ~」
本当は来たくなかった、靖枝さんの、友達の店。
まー適当に、時間つぶして帰ろうと思っていた。
「渡辺君、私の彼氏、連れてきちゃった~~~」
「へ~~~。この子が彼氏さんか。ゆっくりしていってな~」
「はい」
席に座り、靖枝さんが、渡辺ってやつの事を、話してきた。
「渡辺君て、私と同い年なんだけど、すごいよね!店長なんだよ~~」
「それはすごいですねー」
「最初はね、会社勤めをしてたんだけど、一人の方が気が楽とかで、独立したらしくてね。出来る男はやっぱ違うよね~~~」
「そうですか~」
「でね、今、2号店もあって、すごくやり手なんだよね~~~」
「そうですか~」
「あと、面倒見もよくて、バイトさんにも好かれてて、もう欠点がないってくらい、いい男なのよ~~~~~~」
なんだ!?べた褒めじゃん・・・・・・・やっぱり来るんじゃなかったと思い始めてた時、次々と、仲間?らしき人が、靖枝さんに声を掛けてきた。
「お~~~、靖枝じゃん~~。今日は店の手伝いしないのか~~?」
「今日はしないよ~~~彼氏と来てるもん~~~~」
「あ~~~~。へ~~~。この子が彼氏か~~~~~。クスッ」
「えらい若い子を捕まえたもんだな~~~~~~フフッ」
(なんだ!!このバカにされたような笑い方は!!失礼な奴ら!!!)
「はいはい!もういいから~~~~~あっち行ってよ~~~!シッシッ(笑)」
やっぱり、靖枝さんには、友達が多そう。性格上、モテるのはよくわかる。
歳下の俺なんかと、一緒にいるのは、つり合いが取れてないんじゃ・・・・・・
また、嫌な捉え方を考え出していた。
しばらく経ってから、店長の渡辺?だっけ・・・が、靖枝さんに声を掛けてきた。
「ごめん、靖枝。デート中悪いけど、ちょっと手伝ってくれないか?」
「え~~そんなに人手が足りないの?」
「今日、バイトの子が次々と休んで困ってるんだよ・・・・・・・頼む!」
「ごめ~ん、なおき。ちょっと手伝ってくるけど、いい??」
「べ・別にいいですよ」
いいわけないだろ!!とは言えずに、靖枝さんは店の手伝いへと行ってしまった・・
なんだか、親しげにしゃべっている姿を見ているだけで、嫌な気持ちになってくる。
俺も、人の事は言えないか・・・・・加藤さんと仲良くしゃべってるし・・・・・
ただ、やたらと、知り合いなのか友達なのか、よく、靖枝さんに声を掛けてくる。
これが、本当の彼女の姿なんだなと、うれしい気持ちにはなれなかった。
結局、2時間くらいは、俺の事をほったらかしで・・・・・この店を後にした。
「ごめん!なおき!!この埋め合わせはちゃんとするから♡♡」
「別にいいですよ」
「あ~~~~~。なんか、なおき怒ってる~~~~~」
「怒ってないですって・・・・・・・」
「怒ってるよ~~~~~~。仕方がないか、私が悪いんだもんね・・・・」
「怒ってませんから」
「もう、いっぱい、いっぱい、いっぱいサービスしちゃうから、部屋にいこ♡♡」
「あ。今日はごめんなさい・・・・・・そんな気分にはなれないので・・・・・」
「あ~~~~~ん。本当に、ごめんてば~~~~~~~」
この後、靖枝さんの部屋には行かなかった。
嫉妬心もあったが、やっぱり、二人はつり合ってない・・・・・・・・・・・・・
あんなに、楽しそうに、みんなとしゃべっている顔。俺は見た事ない・・・・・・
もう、どうしようもない、ネガティブな考え方に自分でも腹が立ってきた。
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