第19話 文化祭

いよいよ、始まった文化祭。

高校の校門を通るなんて、絶対にないと思っていた。


周りは、ほぼ、同学年だというのに、何だか別世界に見えてきた。

リア充も多いし、やっぱり、場違いに感じ、複雑な心境で、とりあえず、加藤さんのクラスへと向かった。



「お~い、直~」哲の方から呼んでくれた。


「横井君、一恵に会いに来てくれたんだね(笑)」


哲の彼女、二月さんが、冷かしに来た。


「まあ、加藤さんに誘われたんだから、会いに来たってのは事実だね(笑)」


「今、一恵は、美術室で受け付けしてるから」


「あーそうなんだ」


「だから、いろいろ回りながら美術室にいこうよ~。それでいいよね?哲君」


「そうだな。それでいいか直」


「それでもいいよ」


そうやって3人で、寄り道をしながら美術室に向かうことにした。

この二人が前で、その後ろから俺はついていった。

なんだか、イチャイチャを、見せつけられている。


周りも、神々しいオーラに包まれている。

とても、居心地のいいものではなかった・・・・・


やっとのことで、美術室の近くまで来たとき、哲と二月さんが、俺の背中を力いっぱい押してきた。


「それじゃーなー、直。邪魔者は消えるんで、ごゆっくり~~」


二人は楽しそうに、この場から立ち去って行った。

それに気づいた、加藤さんがニコニコしながら歩み寄ってくれた。


「横井君~来てくれたんだね!」


「約束したからね」


「絵画展なんて地味なんだけど、ゆっくり見ていってね」


「いや、凄く楽しみだよ」


地味なくらいが、俺には合ってる。何だか、落ち着く空間にかなりホッとした。


「うわ~みんな上手だな~、とても高校生が描いたなんて思えないよ」


「みんな上手でしょ~。私なんかまだまだで;;」


そうやって1枚1枚見ていくと、見覚えのある風景画が目に入ってきた。


「あっ!これ!加藤さんの!」


お世辞なしで、見事な作品だった。土手沿いから見える紅葉の山々。

素人の俺でも、引き込まれる!そんな力が感じられた。


「・・・・・・・・・」


「横井君、どうかな?」


「・・・・・・・ごめん。見とれてた」


「あ・・ありがとう。お世辞でもうれしいよ」


「いや。お世辞じゃない!すごいよ加藤さん!!そういえば、コンクールの結果ってもう出たのかな?」


「まだ出てないんだ~」


「これなら、絶対にいい所までいくよ!」


「そんなに、褒めても、何も出ないんだからね~(笑)。そうだ、横井君まだ時間大丈夫?」


「大丈夫だけど」


「もう少しで、受け付けの交代だから、良かったら、校内、一緒に回らない?」


「うん、わかった。その辺りで時間つぶしてるよ」


これは、願ってもない、告白のチャンス!!ここを逃したら、絶対に後悔する!!

そんな事を思いながら、加藤さんの来るのを待っていた。


「ごめん~~待たせちゃって~」


「ううん、全然大丈夫」


「それじゃ、いこっか・・・」


こうやって二人で歩いてると、周りから見ても、リア充にしか見えないんだろうな。

まさかの展開に、心臓が破裂しそうなくらい、バクバクしてた。


「いろいろ回ってみてどうだった?」


「最初は、なんて言うか、別世界に迷い込んでいた感じだったけど、加藤さんと一緒だと・・・・・何て言うか・・・・・幸せな気持ちになった・・・・」


ここで、もう告白するしかない!今しかない!幸せをつかみ取るんだ!!!!


「加藤さん!!俺と・・・・・つき」


「お~~~~い、一恵ちゃん~~~~」


そんな時に、一恵さんの友達の、吉村さんが声を掛けてきた・・・・・・

クソ~~~~~~。こんなタイミングで、なんで・・・・・・・・


結局、告白ができないまま、俺は高校を後にした。

でも、もう付き合うのは時間の問題と、自分にしては強気の考えになっていた。

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