第15話 誤解

夏休みも終わり、新学期。そろそろ文化祭の話が持ち上がってきた。

なぜか、私に、絵の展示会するから渾身の1枚を書いてくれと頼まれた。

断ることも出来ずに、どんな絵にするか、部室で考えこんでいた。

そんな中、名前も知らない、同じ1年生の男子部員から、声を掛けられた。


「加藤さん、文化祭で絵を描いてくれって言われたんだって?」


「えっ、まぁ、それでちょっと悩んでて」


「この前の、コンクールの風景画でいいんじゃないかな?紅葉の季節だし、また違った感じに仕上がると思うけど」


そういえば、紅葉の風景は、まだ描いてなかった。


「ありがとう。それでいってみようかな」


じゃー早速、あの場所へ行こうとしたら、「僕も行っていいですか?」とお願いされて、断れずに「え・・えっと、別にいいけど」と答えてしまった。

横井君に会ったら、どうしようと思いながらも、土手沿いに向かった。


「この場所なんですねー」


「あ、ええ、まぁ」


知らない男子と会話が、続くこともなく、もくもくと下書きを描いていた。

こんな所、横井君に見られたら、誤解されないかな・・・・・そんな事を思っていたら、向こう側から、仕事帰りの横井君が自転車で現れた。


「あっ、加藤さん。ここで見かけるの久しぶりだね!」


「横井君、今日もお仕事ご苦労様~、うんうん、紅葉の季節だから、また違う風景が描けそうで」


「そっかー。がんばってね!それじゃねー」


「あ・・うん・・またねー、バイバイ」


いつもは、もうちょっと話するのに、やっぱり誤解されてる~~~。

やっぱり、断ればよかったと、後悔していた。


「いまの人、加藤さんの知り合いですか?」


「あぁ、うん。同い年の」


「え~、同い年の社会人ですか~。じゃー高校も行ってない、ヤンキーなんですか?」


「・・・・・・・・・」


何なのこの人!!さすがに、頭にきて、帰り支度をした。


「あっ、加藤さん、帰るんですか?」


「・・・・・・・・ごめん、これだけは言わせてね・・・・」


冷静な私はどこかへ消え去った。


「高校に行ってないからヤンキーって、どうしてそんな偏見な目で見るの!!もうちょっと、考えてから物事言ってよ!あなたにそんな事、言う資格あるの???高校生ってそんなに偉いの???逆よ。がんばって仕事してる社会人の方が絶対に偉いよ!!ほんと、もう~~~~最低!!!」


頭に血が上りすぎて、このあと、どうやって帰ったかも記憶になかった。





一方、俺は、ショックを隠せなかった。

加藤さんが、知らない男と一緒に絵を描いてた事に。

まぁ、同じ美術部なんだろうとは思うけど、やっぱり同じ高校生で部活も一緒となると、仲がいいのだろうな~とか思ってしまう。

しょせん、同じ土俵の上じゃないと成り立たないのか・・・・・・

と、またしても、ネガティブな自分が出てきてしまった。

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