第14話 夏休みの終わりに

8月も後半に入り、夏休みももう、終わろうとしていたある日。

コンクールが終わり、ちょっと、やる気モードが無くなっていた私。

このまま何もしないで休みを終えるのも、もったいない!どこかショッピングでも出かけようと、高校の友達 ゆうちゃんと三月ちゃんを誘ってみた。


「あ、もしもし、ゆうちゃん。明日の土曜日、どこか出かけない?」


「あっ!ごめ~~~~ん。彼氏とデートなんだ、ごめんね~~」


あっさりと断られた。ゆうちゃんは仕方がないかー。彼氏優先だし。

三月ちゃんは、たぶん大丈夫だろうと、電話してみた。


「あ、もしもし、三月ちゃん。明日の土曜って暇かな??」


「あ、もしもし、一恵ちゃん。ごめ~ん、土曜ってちょっと用事あってダメっぽい」


うぅ、三月ちゃんまで断られた。もっと早くに、予定聞いておけばよかった。

電話帳を見ていたら、横井君の登録に目が止まった。

ん~~~どうしようか。また断られたらってのもあるし、付き合ってもないのに迷惑なのもあるし、軽い女だって思われるかもしれない。

でも、まだ一度も連絡取ったことないからなぁ。せっかく勇気を持って聞いたから、一度くらいいいよね!っと、ドッキドッキしながら電話を掛けてみた。


「あ・・・もしもし、横井君?加藤ですけど、今ちょっと話いいかな?」


「あっ!どもども、加藤さん。大丈夫だよ」(実は、すごく緊張している)


「あ・明日の土曜なんだけど、友達誘っても、全部ダメで、横井君がもし予定とか、なかったら、ショッピングに付き合ってもらえないかなぁ~と、思って電話しちゃったんだけど・・・・・どうかな?」


「明日は暇だし、俺なんかで良ければ全然いいけど」(実は、すごくうれしい!)


「本当に~~!じゃーお昼くらいに駅前の公園で待ってるね~~!」


「う・うん、わかったよー」


は・・・はぁ~~。めちゃくちゃ緊張したけど、断られなくてよかった~。

男の子と二人っきりで、お出かけ何て初めて。気合を入れて私服選びに没頭した。




まさかのお誘いに自分でもびっくりしている。

この前の加藤さんは、やけに積極的だったからもしかしたら・・・・・・・

頭から妄想が止むことがなかった。


そして土曜日の12時。

待ち合わせの場所へと、はやる気持ちを抑えながら走っていった。

自分の駅から2駅先くらいが、加藤さんの馴染み駅らしい。

改札を出たら、駅の前に小さな公園がある。すでに、加藤さんの姿があった。


「あ、ごめん、待った?」


「ううん、全然。わざわざ来てくれてありがとうね!」


「ところで、何を買いにいくの?」


「ん~色々見たいものがあって~。でも、横井君には興味無い物だったら、ゴメンネ・・・」


そうやって、ショッピングモールへと二人歩きだした。

土手沿い以外で話することって余りないから、お互いに緊張で言葉が出てこない。

何だろ、付き合い始めた、リア充、みたいで、うれしはずかしだった。


「あ、横井君、ここ見てってもいいかな?」


やっぱり美術部。絵の具や筆が気になるらしく、すごく真剣に商品を品定めしていた。


「あっ。この筆すごく描きやすそうだ~。横井君どう思う?」


「あ、うん、いいんじゃないかな?」


っと言いつつ・・・とてもHな想像をしてしまった。


(この筆で加藤さんを・・・・・・・・・・・・・・)


んがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

ばっかじゃねぇの!ばっかじゃねぇの!!ばっかじゃねぇの!!!

加藤さんをそんな目で見るんじゃない!!!俺は何考えてんだあぁぁぁぁ!!!

でも、男だったらこれぐらいの妄想、一度はした事あるよね?

(って、誰に聞いてんだ!)



「あっ!このスカイブルー、いいな~」


「加藤さんも青色好きなの?」


「うんうん!やっぱり青空とか見てたら何か落ち着くから、あと海とかもね」


「俺も色では、青が一番すきかな~」


「あ~じゃー私と同じだね(笑)」


色々と品定めして、気に入った物を買い、またブラブラとしていた所に、前方から知っている二人が歩いてきた。俺のいとこの、哲と彼女のゆうさんだった。


「あれあれ~?直と一恵ちゃんじゃ~ん。もしかして二人ってそう言う仲なの?」


話がややこしくなるから、俺は哲と。

一恵さんはゆうさんとお互いに話し合いが始まった。


「直もすみにおけないなぁ~。いつから付き合ってたんだよ~」


「いやいや、付き合ってないし。友達だよ友達」


「そんな、二人でショッピングしてたら、デートでしょ!デーート!」


「加藤さんから誘われただけで、付き添いみたいなもんだよ」


「でも、一恵ちゃんと、いつからそんなに仲良くなったんだ?」


「会社の通勤路で、たまたま再会して、それで少し話するようになっただけだよ」


「ふーーん、でも、一恵ちゃん凄くいい子だろ!付き合っちゃいなって!」


「すごくいい子だよ。俺にはもったいないくらいだ」





「一恵って、いつから横井君と仲良くなったの?」


「あ~ほら、私、放課後に絵を描きにいつも、学校に居なかったでしょ。その場所が、たまたま横井君の通勤路で、仲良くなったの」


「それで~横井君とは、どこまで進んだの~~~ヌフフ~~」


「い・・いや・・まだ付き合ってないから・・・・」


「(笑)まだって事は、横井君の事、好きなんだね!」


「あ・・・・・えっと・・・・・気になってはいます・・・はい」





「それじゃー、お邪魔様だから、俺たちも行こうか、ゆう」


「そうだね~~。じゃぁまたね~、一恵~、ガンバ!(笑)」


そう言って、哲とゆうさんは、この場を立ち去って行った。


「アハハ、世の中狭いもんだよね」


「そうだね(笑)」


「そういえば、加藤さん、昼ご飯は食べてきたの?」


「あ~。なんか緊張してお腹空かなくて」


「じゃー、何か食べに行こう。俺、腹ペコでさあ」


「うん(笑)」


二人、照れながら、近くのお店へと入っていった。


「横井君、会社のお昼って、お弁当取ってるの?」


「食堂に居ずらいから、コーヒーで済ますことが多いかな」


「え~、ちゃんと食べなきゃ身体持たないよぅ」


「加藤さんは、やっぱり3人で食べてるのかな?」


「うんうん、そうだね、昼は女子会みたいなものよ(笑)」


「なんとなく、想像できるよ(笑)」


「じゃー、外かどこかでずっと一人で昼休み過ごしてるの?」


「いや、上司とキャッチボールすることが多くなったかな」


「あっ、野球とかやっても大丈夫??トラウマになってない?」


「確かに最初はすごく悩んだよ。ボールなんて見たくなかったからね。でも、ここから逃げちゃダメなような気がしてさ。ただでさえ、1度逃げて、辛い中学生活を送ったから。」


「ちゃんと、いい方向に進んでいってるんだね。同い年で、ちゃんと仕事して社会に貢献している、横井君はすごいな~って、本当に思ってるよ私」


「そんな凄い事はしてないよ(笑)」


「どんな仕事してるの?」


「自転車やバイクのチェーンの部品作ってる」


「ほら~~~ちゃんと、社会貢献してるよ~~」


何だか、やたら俺の事を褒めてくる加藤さん。

高校生で、ここまで言ってくれる人は、なかなかいないだろう。


遅すぎる昼ご飯を食べて、少しまた、服を見たりして、帰る時間となった。


「今日は付き合ってくれてありがとう(笑)」


「いやいや、俺も暇だったし、全然いいよー」


「ま・また、休みの日に予定が無かったりしたら・・一緒に行ってくれるかな?」


「うん!喜んで!」


そうやって、夏休みも終わろうとしていた時に、加藤さんとの距離が、グググっと縮まった。

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