第13話 先輩と後輩

今までの人生。辛い事や悲しい事は、容赦なく重なる事が多かった。

うれしい事や、楽しい事が、重なるなんて、人生初だ。

こんなに、浮かれてていいのだろうか。などと、また、ネガティブな事を考えながら今村さんが来るのを待っていた。


7時少し過ぎた辺りで、ブルルルル と、車の音が聞こえたので、窓の外を見てみたら、今村さんの軽自動車だった。


「おまたせ~~」


「ど・どもー」


「さて~、何をおごってもらおうかな~~(笑)」


「何でもいいですよ!」と、少し大人ぶった。


普段から出歩かないから、おしゃれな店なんて、全く分からない。


「引っ越し祝いだから、今村さんの好きな店でいいですよ」


「や・す・え・ね!!」


「や・靖枝さんの好きな店で・・・・・どうして下の名前に、こだわるんですか?」


「だって、下の名前の方が、親近感あるでしょ~」


「そんなもんですかね?」


「じゃー、私が行きたい店にいくねー な・お・き・君♡」


そうやって、少し遠くの店までつれて行かされた。


「着いたよ~~」


「うわぁ、すごいおしゃれな店ですね」


「でしょでしょ~~」


やっぱり歳上の、お姉さんは色々と詳しい。

経験値の差が明らかに違う。まー自分が知らなすぎるのもあるけど・・・

そして二人はお店へと入っていった。


「直樹君は、何、頼むの?」


「俺はこう見えても、ガッツリ食べるので、ガッツリ系かな。や・靖枝さんは?」


「私は、最近、食べるより、飲む方かな~。二十歳だし~~」


十代から見て、二十歳は、すごい大人に見えるものだ。だから、遠慮してしまう。

二人が注文を決め、俺が疑問になってる事を、今村さんに聞いてみた。


「あの、靖枝さん。こんな所、彼氏に見られたらまずいんじゃないですか?」


「ん~?私、今は彼氏いないよ~?いると思ってたの?」


「だって、靖枝さんは、人気あるから絶対にいると思いました」


「友達は沢山いるけど、今はフリーだよ。あっ!もしかして直樹君!私の事狙ってるな~~♡」


「いえいえ、そんなわけでは・・・・」


「直樹君、今は彼女いないよね。中学時代はどうだったの?」


「悲惨な中学生活送ってたので、いるわけありませんよ」


「だったら~~~、私が~~~、直樹君の、初めての女性になるわけか~~(笑)♡」


「え・・・・また、そんなこと言って、からかわないで下さいよ」


「あら、照れちゃって~~。本当に可愛いな~直樹君は~~」


これ以上の進展は見られなかった。

今村さんは俺の事を、弟扱いしてるみたい。そう感じられた。

まー実際に5つも歳が離れてるわけだから、当然と言えば当然なのかもしれない。

それでも、楽しければいいか!っと、ポジティブに捉えて、会社の先輩後輩の仲でいようと、思い始めていた。

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