第11話 引っ越し
8月に入り、毎日、暑い暑い日が続いている。
学生は、夏休み真っ盛り。めちゃくちゃ羨ましい!去年までは夏休みだったのに、1年でこんなにも変わるか!と少し、ひがんでいた。
仕事の帰り道に、加藤さんの姿は見かけなくなっていた。
そりゃー夏休み中だし、いるわけないかーと、少し寂しい気持ちになった。
コンクールの絵も、もうすぐ完成と言ってたので、もう完成したのだろう。
もう2週間くらいになるだろうか。
スマホを持ってから、まだ、今村さんから電話が掛かってきていない。
自分から掛ける勇気もなく、ただ待つのみ。
からかわれたのだろうと、あまり期待もしなくなっていた。
草野球の方も、熱中症対策として、しばらくは休みだという。
高校球児は甲子園で熱い戦いをしてると言うのに。
でも、仕方がないか。仕事に影響を及ばすかもしれないから、昼休みのキャッチボールも、しばらくは休止。
木陰にダンボールを敷き、昼寝をしてる所に誰かに起こされた。
「コチョコチョ~」
「ん・・・・あっ・・・・・」寝ぼけてて誰か分からない。
「こら~~直樹君~~起きろ~~」
「こ・・・・この声は・・・・今村さん??」
「も~~~靖枝って呼んでっていつも言ってるでしょ~~~(笑)」
「え・・・でも、職場ですよ」
「そんなの関係ないじゃん~~~」
「いやー、周りの目が・・・」
「まっいいや。そんな事より、今日からよろしくね!!」
「何の事ですか?って、そう言えば何で、や・靖枝さんがここに居るんですか?」
「本社から回されたのよ、新しく建ててたでしょ、会社」
「そう言えば建ててたっけ」
「お昼休みは必ず来るから、私の面倒見てよね♡~~直樹君~~~(笑)」
何だか、うれしいような、また、からかわれるのか。
でも、これから毎日会うのだから、何か進展があるかも!と、また要らぬ事を考え始めていた。
「ところでさぁ~直樹君は、職場で何の仕事してるの?」
「俺は、自転車やバイクとかの、チェーンの部品作ってるんだ」
「リンク?それともブッシュ?」
「ブッシュのほうですね」
「私はねぇ~チェーンの梱包やってるんだ~~」
こんな専門用語で話せる人が居るなんて。
やっぱり同じ現場同士、仲良くなれるのがわかる。
だから、同い歳でも、高校生同士じゃないと、会話が続かない。
俺はもう、別の世界の人間なんだと、認識してしまっていた。
「あっ!そうだ。電話なかなか出来なくてごめんね~~。こっちの会社になったから、引っ越しの準備したんだ~~。急に言われたから、何かとバタバタしちゃっててさぁ~。一人暮らし始めたから、直樹君!お・う・ち・に・く・る?♡」
「一人暮らしですかーいいですね。憧れます・・・・って。行きませんよ;;」
「アハハ~~赤くなって~~~可愛い~~~(笑)」
「からかわないで下さいよう・・・」
またいつものペースで、今村さんに圧倒されていた。
でも、まあ、昼休みの時間が、楽しみになったのも事実。
これから、どうゆう展開になっていくのか、この時、卒業してから初めて、俺も青春してるなーと思い始めていた。
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