第10話 休日の約束

とうとう、約束した休日が来てしまった。マネージャーが何を思ってここまでするのか?謎多き行動が何を意味してるのか?俺は期待してもいいのだろうか・・・・

答えが出ないまま、待ち合わせの場所へと走り出していた。


「あっ!横井君~遅い遅い~!女の子を待たすなんて酷すぎるぞ~(笑)」


「す・・・すいません、マネージャー・・・」


(待ち合わせの時間の5分前なんだけど・・)


「今はマネージャーじゃない~~!ちゃんと名前言ってくれないと~~」


「あ・・・すいません、今村さん」


「下の名前でいいよ~~」


「えっとー、下の名前教えてもらってないです。はい」


「あれ~~~そうだっけ(笑)靖枝よ!や・す・え!」


「靖枝さんですね。了解しました」


「あれっ?・・私も横井君の下の名前教えてもらってな~い~」


「あ・・・・そうでした。直樹です」


「それじゃーー出発ね~~直樹君!!」


ブーーーン 


ゆっくりとした速度で車を発進させた。

女の子らしく可愛い軽自動車。やっぱり車持ってたら行動範囲も広がるし、雨の日の通勤も便利。早く18歳にならないかなーと、しみじみ思った。


「さぁー着いたよ~。早く~いこいこ~~」


相変わらずの明るさで俺の腕を引っ張っていく。


「さてさて~どこの機種がいいのかな~?希望はある~?」


「えーと、持った事ないので、そんなの分からないですよー」


「そっかー、じゃ、私と同じ機種でいいかな?教えるのも簡単だし~」


「じゃー、それでお願いします」


「了解~~~直樹君!!」


初めてのスマホ契約・・・・店員さんの説明も全く分からないし、契約書を書くだけでも、ものすごく疲れた。

なんせ、学校の勉強も、まともにやってこなかったから、字を書くだけで憂鬱。

お勧めのプランとか、言われても「はぁ」としか答えられず、今村さんが仕切ってくれた。


「やっと終わったね~。じゃー私の番号を登録してっと・・・・これでOK」


「OKって?」


「これでお互いの電話番号登録したから、いつでも話できるよっ!」


いつも、今村さんに圧倒される。だけど、めちゃくちゃ引っ張ってくれるお姉さんもいいな~と、少し思ったけど、俺、なめられてる?歳下だから?とも思った。


「さて~もうお昼だからご飯食べに行こう!!」


「そうですね」


「直樹君は何が食べたいかな~?」


「なんでもいいですよ」


「なんでもいいって言うのが、一番困るんだけどな~~~。私、直樹君とゆっくりしゃべりたいから、コンビニでいいかな~?」


「はい、いいですよ」


コンビニでご飯を買って、海の方へと車を走らせた。


「ここの景色最高だね~~夕日が沈むともっと綺麗なんだろうな~~~」


「そうですね」


「あ~~。直樹君ってば、いつも私に遠慮してるでしょう!!」


「ま・・・まぁ歳上でもあり、本社の人ですから・・・」


「も~~~う。まったく~~~可愛いな~~直樹君は(笑)。本社って言ったって私、正社員じゃないのよ。ん~~何と言うか~パートでもなく、準社員的な感じ」


「あ、そうなんですか」


「直樹君も中学卒業から働いてる用に、私も高校に行ってないんだ~」


「えっ!そうなんですか!」(女子で行かないなんて珍しいな)


「うん、だってね、勉強で何を教えてくれる?ある程度は勉強しなきゃだけど、それ以上って、何か専門的な所に行くならわかるよ~。例えば、理数系学んで学者とかね。私は常識範囲を学べば、中学まででも、いいんじゃないかな~って思う」


正直、自分の考えに少しに似たような考え方だった。


「直樹君は何で高校には行かなかったの?」


「えっとー、俺はちょっと野球でケガをして、そこからグレちゃた感じで」


「え~~~~どこケガしたの~~?」


「顔面って言うか・・・・口にボールが当たって・・・・歯が何本か折れて・・・」

うっわ~~~~~~~!!痛そう~~~~~!!」


そう言いながら、小さな可愛い手で、俺のホッペの方をさすってきた。


「それでー直樹君は、高校行かなかった事に後悔してる?」


「そ・それはー・・・してないと言ったらウソになるかな。今村さんは?」


「靖枝でしょ!!や・す・え!(笑)」


「あぁ・・・・・・靖枝さんは?」


「私も、最初は少し後悔したけど、今は全く後悔してないのだぁ~~~。毎日が楽しいし、別に学歴無くたって生きていける。やりたい事やって人生楽しむのだ~~~」




「よし~~次~~ゲーセンでも行こっか~~~」


そうやって結局、夜まで付き合わされた。

ただ、自分と考え方が似てた事に、すごく共感するものがあって、少しずつ心が恋心へと変わっていくようだった。

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