第5話 まさかのマネージャー

次の日曜日、心変わりしないうちにと野球場の方に足を運んだ。


「お。横井君こっちこっちー」


「おはようございます田中係長」


「おはよう。来てくれてありがとね!最近みんなの集まり悪いから人集めに苦労するんだよー;;」


「ハハハ・・・」


よほどの野球好きくらいしか、日曜日にまで足運ばないかもね、休日だし。

周りを見渡してもやっぱり、おじさんが多い・・・と思った瞬間!!

若そうな一人の女性が田中係長と話をしていた。(あ~係長の娘なんだろな)

そう思っていたら違っていた。


「横井君にも紹介するよ。マネージャーの今村さんだ」


なんと!こんな草野球にもマネージャーがいたんだ!正直驚いた!


「おはようございますーマネージャーの今村でーす」


「お・おはようございます、横井です」


「今村さんは二十歳だったっけ?横井君はまだ15歳だけど、若いもん同士仲良くやってくれ、ガハハハ」


(あ~まさしくおっさんの対応の仕方だな・・)


「え~~!横井君15歳なの~~?!」


「う・・・ええ・・・はい・・」


「なんだかすごく可愛いね~!いやー若いって本当にいいよね~!」


「そうですか?」


少し圧倒されながらも、なんだか久しぶりに、まともに女性とおしゃべりをした。


「今日は珍しくうちのエースが来たので横井君、ライト守ってくれないかな?」


「はい、いいですよ」


(ライトだったらそんなに打球飛んでこないから楽だな)


そう思いながら試合が始まった。


草野球の練習試合だと5回で終了らしく、あっという間に最終回。

2度、打席に入ったけど、ブランクがあって中々ヒットも打てず、何も貢献できずにいた。


1-0でうちのチームがリードの中、5回裏ツーアウトランナー1.2塁。

ヒットで同点、長打でサヨナラの場面で、バッターがライト前ヒット。

肩には自信あるから、思いっきりイチロー並みのレーザービームをホームに投げ込んだ。

みごとなワンバウンド返球でホームタッチアウトで試合終了。

無事、試合に勝利して帰り支度をしていると、今村さんが駆け寄ってきた。


「最後の返球凄かったね~~!!ワンバンでビューーーーバンッ!!アウト~!めちゃ格好良かったよ~~」


「まぐれですよ」


「え~~まぐれであんな返球できないよ~~。やっぱり学生の時、野球やってたんでしょう?」


「ええ。まぁ。」


「だよねだよね~!ポジションとかどこだったの~?」


「まぁ一応ショートかな」


「あ~だからあんなに肩強いんだね~惚れ惚れしちゃう」


こんな会話がしばらく続いたが、なんだろ、すごくうれしい気持ちにさせられた。

ひとりで腐って、あまりしゃべらずの日々だったから、ささいな会話でも、すごく新鮮な気持ちになれる。

人との会話の重要性がわかった感じがした。


「それじゃー横井君。また今度の試合も来てね~バイバイ~」


そう言って今村さんは車で帰っていった。

今回の『また来てね』には、正直うれしくて次が楽しみって気持ちにさせてくれるそんな一言だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る