第2話 淡い期待

卒業してから遊びで外出するのは初めて。

やっぱりカラオケとかになるんだろうな~と思ってたらやっぱりビンゴ。

(初対面で話すことすら出来ないのにカラオケか)

なんて思いながら3対3の合コン?的な感じでお店に入った。


「女性陣は直とは初めて会うわけだし自己紹介しとけって」


おせっかいな哲がやっぱり仕切りだす。


「あ~・・えっと~・・ヨコイ・・ナオキです。ども」

(俺は何、ガチに緊張してんだよ、ダサ)


「あ~哲君のいとこなんだね~。私は哲君の彼女の【二月ゆう】で~~す。

もしかしたら私とも親戚なるかもね~~よろしくね~エヘッ」


(何なんだ・・・このポジティブな女の子は・・)


「どうも初めまして~ゆうの友達の【吉村三月】で~す。よろしくね~そして~」

 

「・・あ・・・私は【加藤一恵】・・です。よろしくお願いします。」


(哲の彼女はやけに軽そうだな・・なんて口が裂けても言えんな・・)


「ところでさぁ。横井君はどこの高校に行ったの~?」


さらっと哲の彼女 ゆう が俺に質問してきた。

やっぱり・・・高校生前提として見られてるんだろうな・・みんなに


「俺、高校に行かず仕事してるんだ・・・・」


「えっ・・そうなんだ・・め・珍しいよね高校行かないなんて・・」


明らかにみんなの態度が変わった風に見えた。

そりゃそうだろな、高校に行くのは当たり前の世の中だから。


「じゃぁ・・ゆうが一番に歌うね~~」


それからは言うまでもなく話の話題にもついていけず、ただただボッチ。

淡い期待もみごとに砕かれた。


会社でもプライベートでも自分の居場所がない・・・

段々と自分の心の扉をまた閉じ始めていった。


「それじゃー今日はもう帰ろうかー」


駅までの帰り道、少し距離をおきながら歩いている自分に、3人の女性の中で1番おとなしそうな、加藤一恵さんが、そっと寄り添ってきた。


「あ、あの・・何かごめんね・・」


「えっ?」


「だ・・・だってみんなの話なんて、全然わからなかったでしょ・・・」


「それは仕方がないよ。初めから分かってた事だし」


「で、でもみんなで遊んでいたのに寂しい思いさせちゃって」


「加藤さんは優しいんだね、でもそんな気を使わなくてもいいよ。みんな青春してるんだな~と羨ましかったよ」

と、思いっきり強がって見せた。


「そんな・・優しくなんてないよ私なんか。引っ込み思案だから、横井君の分かりそうな話とか振れなくて・・」


(うわ、めちゃ気遣いされてる・・なんか逆に悪いな)


「あ。じゃあ私あっちのホームだから、またね」


「あ、うん、またね」


普通なら『またね』って言葉に、『次があるんだ』と期待してしまうが、

閉じた心には、その言葉さえも響いてはこなかった。

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