チェンジリングパニック(オールキャラ)
※時系列は一部作目第一話の第百節~第百一節の間になります。
※一部のキャラ以外のキャラ崩壊注意。
※TS要素あります。今回は男→女あります。苦手な方は閲覧非推奨。
こんにちは、ボクの名前はソワン・ハート。大国ミズガルーズの国家防衛軍救護部隊に所属している軍人だよ。そんなボクは今、世界中を巡回して各地の調査をする世界巡礼っていう任務に就いているんだ。今は、スズリ地方にあるムスペルースっていう国に来てます。温泉街が多く立ち並ぶこの地方にも、魔物などの被害があるらしくて。
ちょっと前までアウスガールズでごたごたがあって、ヤク様とスグリ様が大変な目に遭われていたけど……それも全部解決!リハビリを終えたヤク様も無事に前線に復帰。今はお二人とも軍艦内で先遣隊の方々の調査報告待ち。
ところで、この世界巡礼の最中にボクは久し振りに友人と再会して、さらに新しい仲間もできました。母国の学校の中等科で一緒だったレイに、レイの仲間でバルドル族のエイリーク。この二人とは同い年でもあって、とても話しやすいの。もう友達といっても過言はないね。ちなみに、この二人はとある事情で軍が保護して、そのまま世界巡礼を共に行ってるんだ。今は待機命令ってことで、三人一緒に部屋で休んでる。ボクは二人の監視役ってところかな。
……まぁそんな事情は端っこに置いておいて。ボクの手元には今、救護部隊のトップであるツバキ・クレナイ師長と共に開発した特効薬があるんだ。なんの特効薬かって?それを聞いちゃう?
単刀直入に言うと、これは性別転換の試薬なんだ。新しい試薬の開発の途中に、息抜きがてら作っちゃったんだよね。そうなったら、試したくなっちゃうじゃん?ツバキ師長も結果が知りたいって仰っていて、どうせならってボクに適任者を選ぶのを任せてくださったの!責任重大だよねぇ。ちなみに、薬は二人分。
いい香りはするけど無味だから、ボクはこれをお茶に混ぜて、ある二人をターゲットにして飲ませることにしました!そして実は一人にはもう飲ませてます!街の人たちからの贈り物だって説明したら、喜んで飲んでくださったの。……ボクが言うのもなんだけど、警戒心と抱かなかったのかな……?まぁいいや。
もう一人は、これから飲ませるつもり!ボクとレイとエイリークの三人でお茶でもしようって誘って、その人物のカップに特効薬入り紅茶を用意しました。こっちも何の疑いもなく飲んで、いい匂いの紅茶だねと呑気なことを話してた。うん、チョロいってこんなことを言うんだなぁと思ったのです。効果が現れるのは半日後くらい。これから夜だから、明日の朝を楽しみに待つことにしましょう!
******
翌日。
ふと目が覚めたヤクは、身体に感じる違和感を覚えた。どう表現したらいいのだろうか。とにもかくにも、何かが変だという確信はあった。心当たりもなく、本当に何気なく胸の辺りを触ったときに、違和感の正体に気付く。
ヤクも軍人だ、それなりに鍛えている。ラインは細い方ではあるが、彼の身体にもしっかりと筋肉はついている。そのはずなのだが手には、ふやん、と何か柔らかい感触。
「……は……?」
なんだ「ふやん」って。リハビリの影響で太ってしまったのか?いやそんなことはないはずだ。寝ぼけているのだろうか。そう、気のせいかもしれない。もう一度胸に今度は両手を当ててみると──。
もにゃん
手にはやはり、何やら柔らかい感触が。これはあれだ、明らかに胸だ。ああ、男の胸でなくて女の胸。そこまで理解して、恐る恐ると下半身に手を伸ばし──。
「っ……!?」
衝撃に言葉を失い、気付けばスグリの執務室へと助けを求めに向かっていた。
その頃スグリは、夜中の間に軍艦に戻ってきていた先遣隊からの報告書に目を通していた。ここムスペルースの危険度は、さほど高くはないようだ。早急に対策を取らなければならないことはないだろう。一通り目を通して息を吐いた直後。
「スグリ!!」
けたたましい音を鳴らせて扉を開いたヤクに驚くことになった。
鬼気迫る、といった雰囲気をも纏わせながら、しかし助けを求めるような目に何事かと心配した。まさか、まだ過去の夢に苦しめられているのだろうかと。ノックもせずに入ってきたのだ、余程のことがあったのだろうと考える。
座っていたスグリまでツカツカと近付き、ヤクは縋るように彼に迫った。
「ヤク、何かあったのか?」
「た、助けてくれスグリ……わ、私……」
ふるふる、と震えているヤクに、ただ事ではないと感じたスグリ。立ち上がってヤクの隣まで移動してから、肩を抱く。
「どうした、大丈夫だから落ち着け」
「あ、ああ……。その、わ、私……私……。お、女になってしまった……!」
「……。……は?」
なんだ、何を言ったこの幼馴染。緊迫した顔でなんつった?
スグリはすぐにヤクの言葉を理解できず、思わず聞き返す。
「……なんて?」
「だから!何故か女の身体になってしまっているんだ!!」
「女の身体って、いやそんなこと……」
「信じられんのなら触ってみろ!」
ほら、と無理矢理手を掴まされヤクの胸の辺りまで引っ張られた。
確かに、彼の身体のその部分からは、いつもとは違う感触を手に感じる。ぐい、とヤク自身に彼の胸の辺りを強く押すような形で触ってしまい、口をついて出た言葉は──。
「…………ないな」
瞬間、ピキリとその場の空気が凍る。
次にはヤクは己の愛杖を、スグリに向かって振り下ろしていた。普通ならそのまま殴打を受けるところだろうが、そこはスグリの軍人としての身体能力の高さか。直撃を受ける前に鞘ごと武器を引き抜いて、彼の杖を受け止めていた。
「そうか……これが、世の貧乳の女性が抱くという殺意か……。こんな形で実感するとは思わなんだ……!」
「いや待てこれは不可抗力……じゃなくて!すまんって!悪かった!!」
「黙れ!貴様に、貴様に何がわかる!貧乳であろうとも、胸であることに変わりはないだろうに!なーにが大きいは正義だ!ふざけるな!」
「待て待て待て待てこんなところで大技ぶっ放そうとするな!!俺が悪かったからとりあえず落ち着け!な!?」
「煩い貧乳はステータスだ大馬鹿者!やはり貴様も大きいのが好みなのか!?貧乳は胸にあらずとでも言うつもりなのか貴様は!?」
「そんなの人それぞれだろうが!とりあえず落ち着けって!!」
「うるさいこの変態!巨乳魔!!どーせ私は貧乳だわクソッタレェエッ!!」
「待てや!?そんなキャラじゃないだろ冷静沈着はどうしたお前!?」
そんなこんなで言い争いから殺し合いに発展しそうになったその時。開かれたままのスグリの執務室に、悲鳴を上げながら入ってきた人物が一人。
「うわぁあスグリさん助けてくださいぃ!」
「いや助け求めてんのは俺!!」
「俺も助けてほしいんです!レイがレイでレイなんですよぉお!」
「まるで意味がわからんのだが!?」
泣きついてくるエイリークに、殺気を隠しもしないヤク。収拾がつかない。この状態をどうしろってんだ、と泣き言を言いそうになった時。もう一つ別の悲鳴がスグリの執務室内に飛び込んできた。
「わぁああんスグリー!師匠ー!助けてくれよー!!」
その声に中にいた三人は執務室の入り口を見る。そこには、胸元がはだけている姿のレイが、涙目で立っていた。胸の部分は、程よく膨らんでいる。言うなれば、ジャストサイズといったところ。……いや何がジャストサイズだ落ち着け。
その姿を見たヤクが、冷静さを取り戻したのかお前もかと言葉を零す。
「レイ、まさかお前も……!?」
「お前もって、まさか師匠も!?」
言うが早いか、レイは遠慮なしに両手をヤクの胸に当てる。数回だけ揉むような仕草をしてから、ぱぁ、と少しだけ表情が明るくなった。
「あ、ホントだ!師匠も小さいけどおっぱいある!なんで!?」
「それは私も知りたいのだが……」
「待ってください!え、ヤクさんもなんですか……!?」
「ああ……起きたら何故か女の身体になっていてな……」
はぁ、と疲れた表情で溜息を吐くヤクに、エイリークは──。
「え……ヤクさん、いつもと変わってないように見えたんですが……」
ある意味で、最も残酷な失言を零すのであった。
静寂を取り戻すスグリの執務室内。しかしすぐにレイがスグリに縋ろうとして足を捻ってしまう。バランスを崩し、エイリークを巻き込んで床に倒れてしまった。どうにかエイリークがレイのクッションになったことで、レイは大きな怪我を負わずには済んだのだが。
「あいってて……って、あ」
レイのぽよんとした胸元に、エイリークの顔が埋まる形となってしまっていた。
エイリークはそれがレイの胸だと理解した瞬間、顔を真っ赤にして鼻血を垂らしてしまう。
「お……俺……俺の死因、おっぱいってことで……書いておいてね……?」
それだけ言うなり、きゅう、という効果音がついたかのようにエイリークは気絶してしまうのであった。
「わ、わぁあああ!?エイリークごめぇええん!!」
「とりあえずお前は彼の上からどいてやりなさい……」
「うう、コレのせいでバランス感覚わからないぃ……」
「……ひとまず、ソワンを呼ぶか……」
そしてしばらくの間、どたばたと執務室内が慌ただしくなる。
ソワンがスグリの執務室に呼ばれ、彼にエイリークの応急手当を任せながらソファに座ったヤクとレイに、スグリは心当たりがあるかと尋ねた。
「心当たりと言われてもだな……」
「うん。なんも思いつかなくて……どうしてこんなコトに?」
ふにふに、とレイは自身の胸を揉みながらどうしたものかと唸る。
その中で、ふとスグリが昨晩振舞われたお茶について思い出す。
「そういえば……昨日、俺とお前はソワンから紅茶をいただいたな?」
「ああ。いつもと違うところといえばそのくらいだが……」
「紅茶って、あのいい匂いのしたやつ?それなら昨日俺とエイリークもソワンから美味しいよって言われてもらったけど……」
まさか、と三人の目がソワンへとむけられる。その視線に対してソワンは、ウインクをしてぺろっと舌を出す。
「あっはは、バレちゃいましたか?」
「何してくれたんだよお前ー!」
「ちょっとした悪戯だってー!それにボクだって、ツバキ師長に頼まれてたことなんだから!上司の命令には従わなきゃでしょ?」
「ハート……言いたいことはたくさんある。だがひとまず、コレの効果はいつ切れる?大人しく吐け、さもなくば……」
殺気を抑えきれず、ヤクは愛杖を再び手にする。そんな彼の殺気に前に、ソワンは動じずにしかし正直に吐く。
「えっと、今日一日はそのままの姿です。所詮は試薬なので、長時間の効果はないですよ」
「そうか……。それともう一つ。この試薬を作ったのはクレナイ師長だけ、ではないのだろう?」
「あー……。まぁ、ボクも面白そうだなって。ちょっと協力しちゃいました」
「わかった。ひとまずお前はしばらく罰として修練上の掃除担当だ、いいな」
「うー、了解いたしました」
そんなこんなで、原因は突き止めた一行。しかしその日一日、彼らがどう過ごしたかはまた、別の話である。
******
まずは一言、尻切れトンボごめんなさいー!!正直言うと、展開がうまく思いつかなくて……!!今回はTwitterで「#エイプリルフールなのでリプ来たうちの子を性転換する」というタグで募集して、リプをいただいたレイとヤクの師弟に犠牲になってもらいました(笑)
またいつか性転換ネタ書けたらいいなと思います。
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