23 部屋を走り回るもの
これは、前回のお話、“階段を上るもの”に少し関係があるかもしれない、短いお話であります。
さて、前回、妹から話を聞いた作者は、ある出来事を思い出しました。
この出来事があったのも今から5年前のことであります。
夕方の6時頃、私は妹と1階のリビングでテレビを見ていました。
放送されていたのは面白いバラエティー。
芸能人や観覧客の派手な笑い声が部屋の中に響きます。
2人でそれを見ていると、突然、足音が聞こえてきました。
ド…ドタ、バッタ、ドタ、バッタ。
それは頭上から聞こえてきました。
今いるリビングの真上にあるのは、妹の部屋であります。
妹の部屋の中を、ドタバタと走り回っている音が聞こえてくるのです。
今、この家には、私達しかいないというのに。
「ねえ、なんか変な音聞こえない?」
音が止んだのを確認すると、怖がらせないように軽い調子で妹に話しかけます。
が、妹から返答は返ってきません。
テレビに夢中になっているのだろう、それに、この足音も私の勘違いかもしれないと、黙りました。
が、少し時間が経ち、また、音が聞こえてきたのです。
ドッタ、ドッタ、ドッタ、ドッタ!
天井が揺れ、頭が揺さぶられるような激しさであります。
今度はもう、勘違いと無視できないものでした。
確実に何かいる。
その恐怖心に駆られた私は半ばパニックになりながら妹に話しかけました。
「ねえ!聞こえるよね?あんたの部屋から、ずっと足音が聞こえるよね?」
しかし、妹は一言も発しません。
頭上から聞こえる音に不安が募っていた私は、妹のその態度に苛立ちました。
「ねえ!」
一言言おうと妹の方を見て、ぐっと言葉を飲み込みました。
妹はテレビを見ていましたが、口元はぐっと結ばれ表情はこわばっていたのです。
その顔を見て、私は黙ってテレビに対面して芸人の笑い声を聞き流し、二度と足音について話題を振りませんでした。
不思議なことに、この時の記憶を、妹は全く覚えていないと言います。
夢じゃなく、確かに妹はあそこにいたというのに。
私と一緒にテレビを見ていたような気はするが、足音がしていたこと、そのことを訴えかけられたというところだけが丸々抜けているのだとか。
自分達以外誰もいないはずなのに、
2階にある妹の部屋から激しい音が聞こえてきたというだけでもぞっとするのに、
そのことを当事者の妹が全く覚えておらず、
記憶が食い違っているということに、な
んとも嫌な気持ち悪さを感じました。
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