6 友達とのキャンプで


「幼い頃は純粋で見えると言いますが、

 大人になった今でも、波長が合えば

 見えたり感じたりするので、

 少し霊感があるのかな?とは自覚してはいます。」


そんな藤原さんが

忘れていることもありますがと教えてくださったのは

今から20年ほど前、

20代前半頃に友達とキャンプに行った時の体験でした。




当時付き合っていた彼氏とその友達のカップル2組、そしてもう1人仲良しの男の子の計7人でキャンプに行くことになりました。



そこは、

ちゃんとキャンプ場として整備された所ではなく、

木が何本か生え、短い芝生が生い茂り土と石がころころとまばらにあるような

見晴らしのよい場所でした。


そんな場所で、7人の大人が寝転べるほどのしっかりしたテントを張ってキャンプを楽しんだのです。


遊び盛りの青年が集って、

ただキャンプだけでは物足りなかったのでしょう。

誰が言い出したのか、

車で行けば近い所にある

心霊スポットのトンネルに行くことに。




トンネルに近づいてくる頃には

藤原さんの肌に鳥肌が立ち始め、

その場から逃げたいという気持ちが湧きました。

しかし、場の空気を壊したくないと必死にこらえているうちにとうとうトンネルに着いてしまったのです。


当時は携帯電話なんてありませんから、

彼氏が買ったインスタントカメラで記念撮影しようと

女の子3人が

トンネルの入り口を背に並ばされました。


その場にいるだけで怖い。

早く撮ってと急かして

さあ撮ろうという時でした。



「うー…。」



反射的に身体がビクッとはねる。

そして、3人は顔を見合わせました。



後ろから男の唸り声が聞こえたからです。

その反応から分かるように、全員に聞こえていたようでした。



写真が撮れたのを確認するやいなや、

3人はすぐにその場から離れました。



もう帰りたい…。

しかし、またそこから近くに空き家の心霊スポットがあるからと、今度は歩いて行くことになりました。


カップル同士が2列に並び、友人1人(仮にAさんとします)が1番後ろをついていきました。


藤原さんと彼氏の真後ろにいる彼は

終始無言で何も言わずにいます。


まあ、1人で気まずいのだろうなと

その時は気にも止めませんでした。



さて、その空き家ですが、

心霊スポットというだけあって、

今まで感じたものとは比べものにならないほど群を抜いた気味の悪さがありました。


開けたまま放置された三面鏡に

見つけた小箱のなかにはへその緒のようなもの…。

1分も居るのが辛いほど。


不気味な所ではありましたが、

特に変なこともなく無事にテントまで帰ってきたのは救いです。


テントで皆が緊張を解していると

急にAさんが話し始めました。


「怖くて言えなかったんだけれどさ。

 (藤原さん)ちゃんと(彼氏)と俺の間、

 見知らない男がいてついてきてたんだよ。」


そんな男なんて誰も知りませんし

見ていません。


身体を休められるはずのテントに嫌な空気がながれました。


仲良しの7人がせっかくそろったのに、

いつまでもくらい気分になるのは悲しいこと。

だからといって、わいわい遊ぶのも気がのらない。


じゃあ休むのが一番だと、

深く考えるのをやめてささっと寝始めた時でした。





カサッ…




カサッ…





藤原さん達しかいないはずのがらんとしたキャンプ場。


テントの周りの芝生を踏みならすような足音が聞こえてきます。


張りつめた空気になったテントの中。

突然外から何者かがぶつかってきました。


7人がパニックになっている最中もずっと

カサッ…カサッ…と物音が止みません。


それは何分か続きました。




勇気ある一人が外を確認し

「誰もいない。」と言ってから

全員で外を確認しましたが、

やはり人の姿は見当たりません。



ただ、真っ暗な闇が広まるばかり…。





キャンプがお開きになり無事に帰宅後、

写真を現像したらしい彼氏さん。



「3人が写ってる写真、その真ん中当たりの少し上に、骸骨が写っていた。」



藤原さんにそう言って教えてくれたのでした。


その彼氏とはキャンプのことがあって間もなく別れたため写真を見ることは出来なかったそうです。


因果関係があるか分かりませんが、

藤原さんがキャンプ場に行ったその日

叔父にあたる方が亡くなっていたのだとか。





藤原さんに亡くなったことを伝えたかったのか、

それとも、全く別の何かなのか。





なんにせよそれに

芝生を執拗に歩いたり、

彼らがいるテントにぶつかったりして、

存在を主張するほどの

思いがあったのは間違いがないでしょう。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る