第29話 始めの戦闘
カンカンカンカン……。
艦の中を走る。ほぼ全て鉄のような物質でできており、音が鳴るたびに反響する。
数分ぐらい走っているが未だに誰にも出会わない。ただ無機質な通路が続くだけだ。
「広いな、ここ」
『そうね』
地図とか持っていないので行ったり来たりでめちゃくちゃ時間がかかる。
え?マッピングみたいな便利な魔法は無いのかって?
ねぇよんなもん。あったらずっと使ってるわ!こんなに迷ったりしねぇ!ほんと広いここ!
『あら?ここさっきも通らなかった?』
「……」
気の所為気の所為!ハハッ!……わかってるヨォ……。
心の中で涙を流して数十分。無我夢中に駆け抜けたせいか、更に迷った。
◇◇◇
地上では、魔法少女たちが戦闘を開始していた。地上に降りてきた怪物たちと、日本中で死闘を繰り広げている。
「このっ!」
「フハハハハ!当たらなければどうと言うことはない!」
毒を扱う魔法少女が虎型の怪物に毒液を投げつけるが、虎型の怪物はその俊敏さで避ける。
「来なさい!」
「フンッ!」
怪力の魔法少女がゴリラ型の怪物と力比べをしている。
「この!くの!当たれぇ!」
「誰が当たるもんですか!」
鳥型の怪物と風の魔法少女が攻防一体の激闘を繰り広げる。
このようなことが日本の至る所で起こっているため、戦闘の余波と怪物たちの手によって都市機能が低下したり、街がズタボロになったりしていた。
「クッ!このままでは……ッ!おい!外国への助力要請は、どうなっている!?」
ある場所では、怪物たちの猛攻に精一杯抗おうと準備をしていた。しかし、攻撃は激しくなるばかりで、その準備も一向に進まない。焦りが出始めていた。
「まだ連絡が来ません!」
緑の隊服を着た人の良さそうな青年が焦った顔で答えた。
「クソが!……民間人の避難を最優先!それが終わったら魔法少女たちの応援だ!」
「了解しました!」
「どこが避難完了してないんだ?」
「はっ!北海道と東北の一部地域、被害の酷い関西地域、九州の一部です!北海道は敵が多くなく、また広いために侵攻が遅いようで、現在着々と避難できているようです!」
「わかった!なら一番被害が大きい場所へ急行!自衛隊も総動員しろ!」
「了解しました!」
「あぁ……こんな時に〈伝説の魔法少女〉がいてくれたら……」
その男の悩ましげな呟きは誰にも聞かれることなく茜色の空へと消えていった。
◇◇◇
十数分くらい走り回って、やっと一人見つけた。イライラしていたので速攻で倒し終わり、また探し回っている。
「なんだこの迷路みたいなのは!」
『何十回と聞いたわ。その言葉』
いや、ほんとに。何十回言っても何百回言っても足りない。ずっと景色は変わらないし、時間も押して焦るしでイライラが募るばかりなのだ。
睨むように周囲を見回し続け、あることに気づいた。梯子を見つけたのだ。それも上に行くものを。だが、薄く輪郭が見えるだけで、本当に梯子なのかわからない。
え?いやいや……嘘だろ?
近くまで行って触り、本物だと確信する。そしてチラリと上を見上げると、穴が開いていた。遠くには白い光が見える。
次いで辺りを注意深く見回すと、梯子が10メートル間隔であった。
「……」
思わず無言になってしまった。
いや、仕方ないんだ!だってこんなにもわかりづらいし!同化してんじゃんむしろ!何で背景と同じ色なんだよ、アホじゃねぇの!?そりゃ迷うわ!20分くらい前にあった敵も絶対迷ってたわ!……ってこんなことしてる暇ない!
俺は触っていた梯子を飛ぶように勢いよく昇って───、
ガキンッ。
───落ちた。
「ウッソだろお前ぇ!がふっ!」
目の前の事象に憤り、叫びながら背中から落ちた。咄嗟に受け身を取ったお陰で、幸いなのか何なのか、腰を痛めただけで終わった。
梯子を見てみると、途中から手摺ごとボッキリ折れており昇ることが困難なことがわかる。
いやに細いなと思ったけど折れる前提とかふざけんなっ!と言うかよく見たら上に行く穴無いじゃん!幻影まで使うとかホントふざけんなッッ!
これ考えたやつ絶対泣かす!絶対だ!
『そんなことより、ホラ。早く行かなきゃ』
「わかってらぁ!」
再び俺は艦内を走り出した。
腰がまだちょっと痛い……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます