第27話 災厄
日本の遥か上空―――宇宙と呼ばれる領域にメタリックな色合いをした宇宙艦が浮かんでいた。シャープな形をしていて、所々に白色の羽の意匠をあしらっていた。
そう。これこそが宇宙航空艦〈
その中心部に彼らのリーダーである〈大天使〉の部屋が存在する。
「はぁ~......本格的に侵攻を開始した筈なのに」
そこには、青い人魂が幾つか浮かんでいた。
耳障りな声を発しながら溜め息を吐く。
「申し訳御座いません」
すぐ傍でローブを深く被り、顔の見えない男の耳障りな声が発せられる。
「よい。......しかし、何とかせねばならんな」
二重顎に手を当てて考え始める。
「フム......これで行くか」
そう言って〈大天使〉は男を引き連れてその場を去った。
後に残ったのは―――ユラユラと揺れる2つの青い人魂だった。
◇ ◇ ◇
最近、奴等の侵攻が激しい。ほとんど毎日のようだ。休む暇がない。まぁ、魔法少女学園の力もあるのでそこまで忙しくはないが、魔法少女学園があるのは日本のみ。それ故に外国には魔法少女が少ない。そのフォローを俺がやっているのだ。
何故か奴等が来るのは日本が一番多いけども。
それは兎も角、今現在。ゆっくりと過ごしている。中間考査も終わり、落ち着いてる。
が、それもすぐに終わった。
「優希!」
「え?な、なに!?」
リビングのソファーで優雅に麦茶(冷えてる)を飲みながらテレビでバラエティー番組を見ていた俺に、唐突にクロノアが大声をあげた。湯飲みを落としそうになりながら立ち上がる。
「......優希。彼奴等が動き出したわ」
「え?動、き?」
真剣な表情で子を諭すように言う。それに合わせるように俺も真剣な表情で身構える。
「奴等......遂に船を動かしたわ」
「船......?」
船とはなんだろう?普通の船?それとも何かの隠語?
俺が首を傾げると、想像できていないのが分かったのか、説明を始めた。
「船―――通称、宇宙航空艦〈天雲〉と呼ばれるいわゆる宇宙戦艦ヤ○トみたいな船が、奴等が乗ってる船なのよ」
「え?つまり......彼奴等は宇宙人ってこと?」
「まぁ、そうね、そう言えなくもないわ」
「それで、その〈天雲〉?が今地球に近づいてるの?」
「ええ。恐らく、決めに来たのね」
決めると言う言葉に首を傾げる。何を決めるのか。何を決めようとしているのか。頭を捻ってみるが、答えが出ることはない。
それに呆れたのか、すぐに教えてくれた。
「はぁ。この闘争を終わらせに来たってことよ」
「あぁ。なるほ……ってそれヤバいじゃん⁉︎」
納得して頷く途中でその危険さに驚いた。
終わらせに来た……ということはつまり、本気で地球を奪いにきたと言うことだ。
「全面戦争……ってことだよな?」
神妙な顔で頷くクロノア。
「そうね……そうも言えるわ」
俺たちを陰鬱な雰囲気が覆う。だが、そうも言っていられない。クロノアの言葉からまだ進攻には間があるみたいだし───、
『速報です!現在、○○県
流れていたバラエティ番組から唐突に速報ニュースに変わり、映像と共にキャスターが慌てた様子で現状を伝えてくる。
「なっ……⁉︎」
俺たちの予想を裏切り、奴らは既に……動き出していた。
これから起こるのは今までの比では無いくらいの戦いがある。俺は戦慄しながら、そう感じた。
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