第24話 安寧

 その後、警察が来て事情説明とかとかをして、解散になった。

 張り詰めていた緊張の糸が切れて、皆足を崩し、寝てしまった。

 バスで帰り、学校に着く。その場で解散し、帰路についた。


「いやー。濃い一日だった」


「そうね。出番がなかったのは残念だけれど」


 隣には黒いゴシックを着たクロノアがいる。


「まぁ、今の魔法少女の実力が知れたから良いんじゃね?」


「そうだけど........。はぁ」


 ため息吐くことないだろ.......。今日の晩御飯は奮発した方が良いか?


「ま、お疲れさま」


「おう」


◇◇◇


 同時刻。宇宙戦艦〈天雲〉内。

 オンバーは部下二人に説明を受けていた。


「――――そう」


 オンバー――黒丸影は無感情の声音で一言呟いた。

 その声に二人はビクリと体を震わせる。

 その二人とは、先程まで優希達を執拗に攻め立てていたサキュバスと魔女だった。


「それで、貴女達はおめおめと逃げ帰ってきた、と」


 その言葉には、少しばかり怒気が含まれていた。

 二人は膝をつき、顔を俯かせたまま動かない。


「ま、良いわ。二人とも休みなさい。その後で処遇を通達するわ」


「「ハッ!」」


 二人は一筋の光も射し込まない部屋を後にする。

 一人残った黒丸影は頭を抱えた。


「―――嘘でしょ!?魔法少女たちってそんなに強くなってるの!?はぁー。これ報告しなきゃいけないのかー。メッチャ憂鬱だわー。絶対弄られるじゃない!」


 黒丸影はこれからのことを考えて、意気消沈した。


◇◇◇


 あれからも襲撃はあったらしいが、特に俺たちは何もすることがなかった。

 全部他の魔法少女に任せてるんだ!楽!

 とまぁ、それは置いといて、もうそろそろ中間考査があるらしい。2週間後って先生は言っていた。とりあえず焦ることではない。


「うわー!どうしよー!」


 ―――そう。焦ることではない。


「アハハー。アセルコトナイヨー」


 ――――うん。焦ることじゃないんだ。


「.......小桜さん。とても片言に聞こえるんだけど」


「ハッ!ね、ね、琴音ことねちゃんは同士だよね!?」


 おい。同じように勉強してない仲間を増やそうとするな。


「あ、いえ、その.......私はできてますよ?」


「嘘だぁーーっ!」


 こころが泣き崩れる。

 そもそも勉強しなかった君が悪い。


「友久君はできるよねー」


「うん。70点は固いかな」


 憶音おくねが絶望した表情をしている。


「うぅ......。普通に勉強した方が良いかぁ........はぁ........」


 因みに、呼び名は野外活動の時に下の名前か渾名で呼び合うことになった。

 心は四外神さんの下の名前。憶音は小桜さんの下の名前。琴音は茶杏院さんの下の名前。弓矢君は健斗と言うらしい。今日は休んでいるみたいだ。

 そして、全員席に着く。


「..........」


「..........」


「..........」


「..........」


「..........」


「..........」


「........いや、聞けよ!」


「あっ、待ってたんだ」


 沈黙に耐えきれず、そう叫ぶと、心が思わずといった風に言う。


 悲しいよ.....俺だけ仲間はずれだなんて。


「あ、いや。そのー、別にね?仲間はずれにしてたわけじゃあ.......ないよ?」


「だったら何で聞いてくれないの?」


「えーと.....実は――――」


 心の説明を聞いた。


「........」


「........」


 俺だけ........。


「俺だけ恥ずかしいやつじゃん!」


 実は友久が既に暴露していたらしい。

 ちょっと恥ずかしすぎて誰の顔も見れない。


◇◆◇


 暗い闇の中で、ソイツは呟いた。


「これぐらいしか魂が無い.....少なすぎる」


 落胆の溜め息を吐きながら、周りに浮かぶ青い玉を見る。それはまさしく人魂のようだった。


「しかし、働きすぎもいけない。休暇でも出すか......」


 数瞬思案して、ポソリと漏らす。


「期限は一週間、それ以降は私も動くか」


 そして、その場からソイツは消えた。


◇◇◇


 一週間後。テストが終わり、クラス内は安堵の空気が蔓延していた。有り体に言えば弛緩した空気だな。幾人か絶望の表情をしているみたいだけど。


「それじゃあテスト返すぞー」


 野崎先生の担当は数学。今はその時間のため、テスト返しが始まった。

 続々と呼ばれていくクラスメイト。手に持った一枚の紙に一喜一憂している。


「次、真漆辺」


「はい」


 席を立って先生のところまで行く。


「お前すごいな。よく頑張ったな」


 紙を差し出しながら、笑って言った。


「ありがとうございます」


 手元の紙を見る。予想通り百点だった。まぁ中学最初だからね。これくらいは当然かな(ドヤァ)


「優希、どうだった?俺、98点」


 席に戻ると、友久が自分のテスト結果を見せながら聞いてきた。


「ふっ、勝ったな。俺は百点だった」


「マジか!うわ~、負けた」


 ほんと、こういう掛け合いって楽しい。

 日常は、大切にしていかなきゃな.....。

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