第22話 野外活動・後編

 あの後、先生に質問攻めされたり、疲れ果てて休憩をとったりした。

 で、現在。


「材料は各班の調理台に置いてある。水場は左側。先生達はすぐ近くの席で作ってるから、何かあったら呼んでくれ。それじゃ、旨いもの作れよ」


 飯盒炊爨はんごうすいさんのお時間です。


「優希。指揮よろしく」


 友久.......。早速かよ.......。


「え?真漆辺まななべ君料理できるの?」


 四外神しとがみが友久に聞く。


「うん。滅茶苦茶めちゃくちゃ上手い」


 友久は間髪いれずに答える。


「おおぅ。そ、そか。なら真漆辺君主体で」


 四外神は押され気味に俺にぶん投げる。


「へー。ちょっと食べてみたいね」


「み、皆が、言うなら」


「あ、えと。できる限りお手伝いします...........」


 他の班員も肯定的。――俺の意見は?


「リーダーでしょ?」


 こんなときだけ持ち出すなよ(呆れ)。


「わかったよぅ。やればいいんだろ!やれば!」


 ちょっと泣きたくなってきた。


◇◆◇


 優希達が料理を作り始めた頃。

 優希達のキャンプ場に近づく二つの影があった。


「うへへ。楽しみだなぁ~」


 一人は楽しそうに。


「――――はぁ」


 もう一人はそんな一人を呆れた目で見ていた。

 二人とも、体格が分からないようにフードを着ているが、声で女性だと察することができる。


「?。どうしたの~?ショーちゃん」


 楽しそうにしていた女が、溜め息を吐いた相方を独特な渾名あだなで呼ぶ。


「っ!その名で呼ぶな!」


 ショーちゃんと呼ばれた女性が相方に怒鳴る。


「まぁまぁ。いいじゃん!」


「っ。..........はぁ、もういい。それで?何が楽しみなんだ?クーイ」


 ショーちゃんは気だるげにクーイに聞く。


「エヘヘ~。これから男をいっぱいからね!楽しみなんだ!」


「そうか。私はあまり気乗りしないがな」


「まぁ、ショーちゃんの好みはあんまり、と言うかほぼ居ないだろうね~」


「そうなんだよっ........。何でかなー.........」


 二人は軽口を叩きながら、キャンプ場へと消えていった。


◇◇◇


 特に事件が起こることは無く、二日目。

 今日は団体行動の訓練だ。

 所謂、並び順だとか、行進だとか。体育の先生が指揮を取るそうだ。


 そう言うわけで、一時間ほどかけて訓練をした。

 この後はレクリエーション大会だ。

 今まで何事も無く順調に進んだけれど(大嘘)。

 やっぱり来たんだなー〈怪物の侵略者モンスター・インベイダー〉の奴等。


「どうもー。こんにちわー!」


「..............」


 元気に挨拶したのは、奇抜な衣装を着た女だった。所謂、サキュバス衣装というやつ。

 もう一人は、まんま魔女といった風貌だ。


 なんだこの変な組み合わせ。


 と言うか、敵?に何で挨拶とかしてんの!?


「...........何で奇襲とか仕掛けないんだよ..........」


 ほら!もう一人の人も呆れてるじゃん!


「.........えーと。君たちは?」


 先生が戸惑いながら彼女らに誰何すいかする。


「あー.........えっと。ぐっ」


「ホラホラ。ちゃんとしなきゃ!」


 なんかコショコショ話を始めた。


「分かってる!...........コホン!えー、私たちはー(棒)」


 ―――滅茶苦茶棒読みだ。


「宇宙より侵略し天使!」


 こっちはノリノリ。


「「その名も、〈天使の軍勢ハルマ・ゲドン〉である!」」


「「「「「「.........................」」」」」」


 この場は静寂に包まれた。

 まぁ、そんなのは長く続かず。静寂を破ったのは先生だった。


「ああ。〈怪物の侵略者モンスター・インベイダー〉か」


 納得したようにポンっと手を打つ。


「えっ」


「え?何ソレ?」


 二人は困惑している。まぁ、それもそうだよね。この名称はこっちが勝手につけた名前だし。知らないのも当然だ。


 で、まぁ。この空気どうするんだろ。


「そっちの方が格好いいじゃん」


 奇抜な衣装を着ている女が堂々と言い放つ。うん。感性がよくわからん。


「いや、待て待て待て。私達はそんな話をしに来たんじゃないんだ」


 取り繕おうとしても遅いよ?


「そうだった!君たち!私達が何しに来たかわかるかな~?」


「襲いに来た、とか?」


 まぁ、それしかないよね。


「ど、どどど、どうしてわかったのぉ!?」


 どもり過ぎだろっ!今までしてきたことと大差無いこと言ってんだから吃ることないだろ!?


「はぁ。まぁ、いいや。取り合えず【パラライズ・ショット】」


 魔女の女(もう魔女でいいや)が溜め息を吐きながら、突然魔法を放ってきた。

 空中に突如現れた実態の無い電気を纏った球が、幾人かの生徒達に向かう。いきなり!?


「お?おっしゃ、こっちもやるよー!【魅了チャーム】!」


 奇抜な衣装を着た女(サキュバスと呼ぼう)がハートを飛ばす。これは先生に向かって飛んでいった。だから、いきなり!


「全員!建物まで退避!」


「「「「「「はいっ!」」」」」」


 先生の号令で全員が走り始める。


「あっ.........!」


 その中で一人、転けた子がいた。その声は小さすぎて俺以外は聴こえていないようだった。


「大丈夫?」


 すぐにその子の場所まで移動し、引っ張り上げる。見てみると、小桜さんだった。


「あ、う、うん。ありがとう」


 小桜さんが礼を言う。


「アギャッ!」


「グゥッ!」


「ガッ!」


 建物まで後少しと言うところで、至るところから悲鳴があがった。

 周囲を見渡すと、幾人かの男子生徒が痺れて動けないようだった。


「あら。私の【パラライズ・ショット】からはあんまり逃げられないわよ」


 あんまりって何だよ。逃げられるのかよ。


「むぅ~。私の【魅了】は全部避けられた!」


 それにしても、どうしようか。


 倒れた男子生徒達は、他の子に助けてもらい、建物に逃げていく。


「待ちなさ~い!」


 追いかけてくる。ただ、魔女の方はあまり走れないのか、凄く遅い。サキュバスの方も魔女を心配してか、遅い。逃げるのは容易だった。

 全員が建物の前まで集まり、先生が点呼していく。それしてて良いのかって思うけど、それをできるくらいの余裕があった。


「野崎先生!警察に連絡できました!」


「ありがとうございます!それで、いつ頃でしょうか?」


「10分後だそうです!」


「わかりました!全員!中に入れ!」


 野崎先生の号令で、生徒も先生も全員が建物の中に入った。

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