第19話 班分け

 東間中学一年生の5月にはとあるイベントがある。


「そう!野外活動!」


 四外神しとがみが叫ぶ。

 そうこの5月の下旬頃に野外活動と呼ばれる一泊二日の親睦会がある。


「はいはい。四外神は落ち着こうな」


 野崎のざき先生――一年A組のクラス担任――が四外神を宥める。


「さて、5月の中頃になった今。四外神みたいに行く準備をしている奴はいるか?もうそろそろだからちゃんと準備しとけよ。今日のホームルームは、野外活動時の班分けだ」


 班?


「班分けは、飯盒炊爨はんごうすいさんでカレー作る時とか、ゲームする時とかの為だな。まぁ、基本は好きなやつと組め。6人で一班な」


 ただまぁ―――、野崎先生はそう続けて、ニヤッと笑った。


「―――ゲームとか飯盒炊爨の出来が良いと、色んなことがあるみたいだが、な」


 ちゃんとそこんところ考えろよー、と言って教室を出ていった。―――どこに行くんだあの人。

 教室に残された生徒達は動かない。突然言われたのもそうだが、入学してまだ一ヶ月だ。それに、幾人かが魔法少女学園へと編入していったから、そこまで仲の良い人が作れないだろう。―――中学から同じ高校に上がったやつら以外は。


「ねぇ、優希ゆうき


 友久ともひさが振り返って話し掛けてくる。因みに、4月の下旬に席替えをしたので、俺の席は日当たりの良い窓側の後ろから二列目に位置する。友久は俺の前の席だ。


「うん―――」


 と、俺が答えようとした途端、女子達が一斉に集まってきた。その衝撃で、俺はペイッと自分の席から放り出された。


「――――」


 うーん。なんだかなー?いや、別に良いんだよ?良いんだけど、なんだろうねこの気持ち。いやーしかし、やっぱりモテる男は違うね。


 「友久クンと同じ班になりたい!」「私も!」「同じ班にしてください!」と、友久の席から女子の声が聞こえる。

 因みに男共は、既に男同士で組んでいる。


「あ、そうそう。班は男子三人女子三人の組分けな。そいじゃ」


 突然ガラッと扉を開け、野崎先生は爆弾を落としてすぐにまた戻った。―――だから、あの人は何処に行くんだ。

 これによって、教室内は阿鼻叫喚あびきょうかんの地獄――までは行かないものの、それなりに騒がしくなった。また、友久の勧誘が激化した。


「あっ!ねぇねぇ!真七辺まななべ君!」


 四外神が俺を呼ぶ。


「ん?何?」


「一緒の班にならない?」


「良いよ」


 俺はすぐ答えた。自分から誘う方じゃないからね。誘われたら行くタイプ。


「やっぱダメ.........え?良いの?」


 え?むしろ何で断られる方考えてたの?


「いや、別に断る理由も無いのに何で断られると思ってるの?」


「いやー。だって..........の、ね」


 なんだよ。


「あんまり人と関わるのが嫌いな人なのかな、と........」


 お前普通に話しかけてくるよな?今更過ぎじゃあ?


「あ!後、他にもう一人女子がいるんだけど大丈夫?」


「ん?うん。大丈夫だけど。今のところ誰にも誘われてないから」


 そう.........。今のところ、ね。誰も、寄ってこないの(泣)


「あっ(察し)」


 さて、友久はどうなったかな?


 俺が友久の方を向くと、友久は両手を前に出しながら、イケメンな台詞を言っていた。


「ゴメンね、先に班に誘いたい人がいるからさ、その人誘ってからで良い?」


 「えー」「わかった」「じゃあ、まだ空きがあったら誘うね!」と、女子は各々の反応を示しながら解散していった。

 友久が此方に来る。


「ねっ、優希。一緒の「なぁ、友久!一緒の班にならねぇ?」.........」


 友久の台詞が他の男子に遮られた。お前ら話聞いてなかったの?友久苦笑しちゃってるじゃん。

 俺は溜め息を吐いた後、周りを見渡す。

 続々と決まっているようで、既に何グループかできていた。

 その中で、ポツンと二人ほどはぐれた人たちがいた。男子と女子で、どちらも離れた席にいる。


 ふむ。よし、行くか。


「あ、四外神!と.........」


 四外神が連れてきた女の子の名前が思い浮かばなくて、詰まってしまった。


「あ、小桜こざくらです」


 だが、すぐに答えてくれた。小動物みたいな可愛らしい人だ。茶髪に黒い大きな目と綺麗よりも可愛いよりの顔だ。


「ん。小桜さんね。後二人追加しても良い?」


「うん。OKだよ」


「はい。大丈夫です」


 二人の許可も降りたので、早速男子の方から向かう。男子の方が接し易いからね。


「あの、ちょっと良いかな?」


「えっ、あ、あの。はいっ」


 メチャメチャ挙動不審に返してきた。

 え?そんなに驚くこと?


「えっと........弓八ゆみや君、だよね?班のグループってもう決まっちゃってる?」


 弓八君はボサボサ頭で、髪で顔半分が隠れてしまっている男の子だ。所謂、クラスの陰のような子。


 だが、俺はそんなの許容しない。皆明るく楽しく、だ!


「え、あ、いや。ま、まだ。です」


「じゃあ、俺たちの班に入らない?」


 俺は弓八君に手を差し出して誘った。


「―――――」


 弓八君は黙ったままだ。


 ダメだったのだろうか?誘い方がおかしかったか。むぅ。


「あ、あの!」


 弓八君が食い気味に声をかけてきた。


「え?な、なに?」


 俺はそれに少し気圧されて、どもってしまう。


「ぼ、僕で、よかれ、あ、いや、よ、良ければ!」


 弓八君は少し噛みながらも、グループに入るの意思を示してくれた。


 よしっ。弓八君ゲット!


「ありがとう!これから宜しくね!」


「は、はい!」


「四外神ー。小桜さーん。弓八君が入ってくれるって!ちょっと親睦深めてて。もう一人誘うから」


「はーい。宜しく!弓八君」


「わかった。弓八君、宜しく」


「あ、は、はい。こ、こちらこそ宜しくお願いします!」


 さて、弓八君は四外神さん達に任せて、もう一人――――ある女の子の方に行く。


「ちょっと良いかな?茶杏院さぎょういんさん」


 茶杏院さん――名前が特殊だから覚えてた――は黒髪三編みお下げで丸眼鏡を掛けた、絵に描いたような文学少女だ。実際に本も多く読んでいるみたいだし。


「ふぇ!?あと、えと、え?」


 ふぇって言う人初めて見た。と言うか何でそんなに驚くの?弓八君もだけど。何で?この二人が特殊なだけ?それとも俺が特殊なの?


「茶杏院さん。まだ他の班に入ってないなら、僕たちの班に入らない?」


「ふぇぇ!?わ、私ですか!?」


「うん。そう、君」


「え、えと。あの。嬉しいです!」


「え?あ、うん」


 そ、そっか?


「あ、いや!違うんです!や、違くなくてっ。えっと、つまり、その、」


「―――入ってくれる?」


「っ!はい!」


 なんかいろんなやり取りがあったけれど、これで、後一人になった。

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