第17話 強くなる
優希side
魔法少女になった俺は、ドロドロに苦戦していた。
まず、奴には物理的攻撃が効かない。
それは見た目からでもわかる通り、ドロドロとした体で再生されたり、威力を殺されたりするからだ。
次に物理系魔法攻撃。
此方も物理系という言葉からわかる通り、あまり魔法的な威力は無い。そのため、先程と同様の結果となった。
じゃあ魔法的攻撃は?それは――――、
「グヒュヒュヒュ」
ドロドロが笑いながら此方によってくる。
その体からは、人の手足が飛び出ていた。
「ぐっ――――」
苛立ちが募る。
魔法を使うと、中の人にまで影響を及ぼしてしまうかもしれない。そんな不安に駆られたからこそ、魔法も使えない。
と言うか気持ち悪いな、これ。―――SAN値チェックが必要かな?
「くそっ!」
いや、そんな馬鹿なことを考えてないで、勝つ方法を考えろよ!
どうすれば勝てるだろうか?
俺にその力は有るだろうか?
助けられるだろうか?
動けない。なにもできない。本当に?
こいつの弱点は?
そこまで考えて、俺は思い付いた。いや、正確には思い出した。
相手の弱点を探る魔法。その名は―――、
「――――
魔法:
自らの目に魔力を集め、魔眼として使用する魔法。周囲の魔力を可視化することができる。
つまり、この魔法で魔力の流れを視て、魔力が一辺に集まる所を見つける。そこが弱点だ!
因みに、俺は時間停止の特殊能力(15話に登場)で魔法の練習やら武術やらを頑張っているので、魔法なりなんなりは無詠唱で使える。
あ、時間止まってるのに何で色が見えたり魔法が使えたり、自分が動けたりするのかとか言う疑問は無しで。ふぁんたじーだからね!
俺が魔法を使ったことで、目に変化が訪れた。
周囲に光の粒のようなものが見え始めた。
俺はドロドロを視る。
奴の中に見えたのは光の線だった。この線が魔力だ。
そして、その線は一部分に集約されている。その場所は人間で言うところの、心臓だった。
◇◆◇
???side
私は暗い水の底にいた。
本当に水なのかはわからないけれど。
ただ、光の射しようもない場所だった。
ああ、暗い。誰も、誰も私を見てくれない。助けてくれない。
嫌い。
傲慢な自分が。
嫌い。
本音を言えない自分が。
嫌い。
自分しか見ていない私が。
嫌い、嫌い、嫌い、嫌い。
嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、大嫌い!
あぁ、こんなことなら。
こんなことならば、諦めれば良かった。
止めていれば、良かった――――。
そんな風に自分を責めているその時、一筋の光が舞い降りた。
◇◆◇
side優希
情けない。誰も助けられない自分が。
やるせない。助ける力を持たない自分が。
どうすればいいのだろうか?
魔法が使えない。
物理攻撃が効かない。
解析で視ても倒せる道筋が見えない。
くそっ。くそっ。くそっ!
苛立ちばかりが募る。
「グヒュヒュヒュ!ほらほら!」
ドロドロの鳴き声も俺の神経を逆撫でる。
と言うか、あいつ喋れたんだ。
いや、今はそんなことどうでもいい。
ああ。くそっ!本当に、先が真っ暗だ。
『本当に?』
じゃあどうしろってんだよ!何の方法もない!本当に、どうしようもないんだ―――。
『じゃあ見捨てるの?』
――――見捨てる。
俺の脳裏にとある場面がフラッシュバックする。
俺が魔法少女になる前の。少女が、無惨にも殺された場面だった。
――――見捨てる?そんなの、そんなこと。
出来るわけないだろうがッッ!!!
そう強く思ったその一瞬、俺の目の前が弾けた。
『フフ。やっとね。教えたげる。あいつに勝つ為の、たった一つの勝利の方程式!』
教えてくれ。あいつをぶちのめせる方法を!
『それはね――――貴方が、レベルアップすれば良いのよ!』
―――――――――――――は?
俺の思考が停止する。
え?いや、は?レベルアップ?え?どゆこと?
『よし!レベルアップ完了!』
そう言われた途端、いつの間にか覆われていた光のベールが剥がれるように消えた。
そこには、ほんの少しだけ――――いや、かなり装飾が増えたゴシック和服があった。
「グヒュ・・・・・・?」
ドロドロも突然のことで困惑している。
俺も困惑している。仲間だな!(錯乱)
『さぁ!反撃開始よ!』
いきなりだな!?まず説明しろよ!
『あぁ、そうだったわね』
―――おい。
『えーとね。このレベルアップで精神攻撃が可能になったのよ』
精神攻撃?なんぞそれ?
『まぁ、端的に言うと、物理じゃない攻撃ね!』
いやほんとに端的だな!?まぁ、でもうっすらとわかった。
『え、本当!?』
―――――多分。
『多分!?』
いや、今の説明でどうしろと!?
ま、今はいい。それで、どうやってするんだ?
『そうね――――。とりあえず相手を口汚く罵って!』
おう!目一杯罵ってやらぁ!
「おい!このノロマのハゲ!聴いてんのか!ドロドロして腐りやがって!」
「グ、グヒュ。の、ノロマ―――。ハゲ―――。グヒュ」
あれ?何か落ち込んでる?いや、当たり前だけど。後、ドロドロと腐ってるのは良いのか?
『ふふ。効いてるわね!』
え?どゆこと?
『ええ。あなたは今精神攻撃をしたわ!』
え?え?いや、え?
『通称――――口撃よ!』
いや、まんまじゃねぇかーーーッッッ!!!
確かに精神攻撃よ?だけどこんなの誰か予想できるんだよ!?もっと違う攻撃かと思ってたよッ!ねぇ、魔法少女って何なの?
『さぁ!今のうちに!』
え?いや、どうやって?物理攻撃が効かないんだから、無理でしょ?
『?。何言ってるのよ。物理攻撃に精神攻撃が乗るのよ』
――――。
――――そっちの方、先に言って欲しかったなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます