第16話 助けることと私
「どこにいるかわかる?」
俺はクロノアに聞く。
「――――ううん。わからないわ」
やはりわからないか。クロノア自身が言っていたように相手の隠蔽能力が高いのだろう。
「じゃあ――――」
「ええ。情報収集して待ち伏せるしかないわね」
俺が言おうとしていたことを、クロノアが代弁した。
そう。俺達は未だ身バレしていない魔法少女だ。このまま隠し通す為には、警察や魔法少女学園の人達に頼っては駄目だろう。
このままの姿で聞いても、疑問に思われて追求されでもしたら、隠し通せる自身がない。
なら――――、今の男の姿で辺りの人に世間話程度で聞き込みをすれば、勝機はある。
「よし。クロノア」
「うん。行ってらっしゃい」
俺は外へ出た。
◇◇◇
聞き込みをした結果、とある地域にのみいなくなる人が多いそうだ。
だが、誰も見たことはないらしい。
一人の時を狙って現れるそうで、誘拐する場面も場所もわからないそうだ。
「ここら辺、か...........」
俺は実際にその場所に来た。と言うか家の近くだった。全然知らなかった。
近くだったのに知らなかったことを知って俺の心はどん底である。
「――――!」
と、ブルーになっていると何かしらの音が聞こえた。
俺は迷わずそちらの方へと赴く。
「―――く―――!」
近くなるにつれて、声や音も大きくなる。
そして――――、
まさしくプリ○ュアの衣装(ピンク)を着ている女の子と、形容しがたい何かが戦っていた。
「え...........?」
えーと。これどうすればいいの?
女の子は何か光みたいな刃を出しながら、遠距離から攻撃を入れているが、形容しがたい灰色のドロドロした奴には効いてないみたいだった。
助けに入った方が良いのかな?
そんな風に悩んでいると、女の子が此方に気づき、叫んだ。
「そこの君!早くこの場から離れて!」
いや、叫んじゃ駄目だろーっ!
あぁ、ほら。そこの奴が俺に気付いちゃったじゃん............。
形容しがたい奴―――もう、ドロドロでいいか―――が俺に気づき、女の子を無視して此方に寄ってきた。
あぁもう。どうすんだこれ?
一旦隠れて、変身して出直すか?
うん。そうだな。そうしよう。
俺が背を向けて走り出すと同時に、女の子が俺とドロドロの間に入ってきた。
いや、え!?何で!?あいつメッチャ遅いじゃん!割って入んなくてもよくない!?
そう、ドロドロは歩くのがとても遅かった。
俺が驚きの表情で少女を見る。少女は何を勘違いしたのか、ちょっとムカつく顔で言ってきた。
「ふっ。貴女が逃げられる時間くらい稼げるわ」
――――いや、全然違うんだけど。むしろ時間稼ぎとか意味ないから。
「さぁ、かかってきなさい!」
う~ん。いや、かっこいいんだけど何と言うか。
俺がそんな風に悩んでいる間に少女はドロドロに呑み込まれた。
「――――え?」
俺は二度見する。先程まで元気に騒いでいた少女が突然その場から消えたのだ。
後に残っているのは――――呑み込んだ張本人であろう、ドロドロだけだった。
俺はその場で呆然とする。
さっきまでヒーローの様に少しばかりおかしい正義感を持っていたあの少女が。
新しい力を手に入れて浮かれていたであろう少女が。
状況判断ができなくても戦っていた少女が。
目の前で、居なくなった。
『――――優希!』
俺はクロノアの声で我を取り戻した。
咄嗟に走り出す。
すぐ近くまでにドロドロが迫っていたからだ。
「すまん。ありがとう」
俺は小声でクロノアにお礼を言う。
『どうってことないわ!さぁ、早く。あの子を取り戻しましょう!』
ああ。そうだ。今自己嫌悪に陥っている暇なんてない。そんなことをすれば、あの少女の二の舞になる。
――――そんなことになれば、絶対に後悔する。
ドロドロが見えなくなった辺りで、素早く周りを見渡し、誰も居ないことを確認する。
そして、俺は――――、
――――魔法少女となった。
◇◆◇
???side
変えられなかった。
自身が力を付けても。
変わることができなかった。
何も。何も。
小さな頃は神童と呼ばれていた。
私はそれが誇らしくて、有頂天になった。
でも、私がいたのは小さな世界だった。
小学校に上がり、その事を知った。
私よりも上がいた。
それでも、負けていられなかった。
中学校に上がって更に、劣等感を抱いた。
格が・・・・・違った。
でも、私は特別だと思い続けた。
そして、助けられた。
憧れた。焦がれた。この力があれば私は特別でいられる。
そして――――その力を得た。
それでも、此処でも格があった。
私よりも才能のある人がいた。
私よりも経験のある人がいた。
私はどん底に落ちる。
何で、何で。私よりも強いの?何で私よりも特別なの?
許せなかった。自分がそう思うことにも。
だから、特別であろうとした。
初めてのクエストで、先輩の言葉も聞かずに突っ走った。
そして、守られた。
目の前で呑まれるのを間近で見た。
それで、気付いた。私は、私しか見ていなかった、と。
だから戦った。例え打つ手が無かったとしても。
男の子が来た。背が低くて、服を変えれば女の子と間違えていたかもしれない。
咄嗟に叫んだ。そうしたら奴が男の子に気付いた。
奴が男の子に向かうのが見える。
私の体は既に動き出していた。
彼と奴との間に体を入れ、威勢よく言い放つ。
彼は驚いた顔をしていた。
私でも守れるかな?こんな傲慢な私でも。
そして――――、
――――私は、闇に包まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます