第15話 動き出す不穏
暗い光のない空間にいつしかの形容し難い怪物がいた。
「さて、そろそろ動こうかの?」
「そうですね。少々やられ過ぎかと思われますので」
隣にのっそりと現れたこれまたいつしかと同様の形容し難い怪物が答える。
「うむ。では.........あやつじゃな」
「あやつ、ですか........?」
「ああ、さて呼んでくれるか?最弱の怪人を」
◇◇◇
どうも、こんにちは。忘れている、もしくは知らない人のために。
俺の名前は真漆辺 優希だ。現在、私立東間中学校の1年生。身長164cm。体重49kg。
え?小さいし軽い?うるさい!言うな!
また、魔法少女もやっている。巷では伝説の魔法少女なんて言われている。(最近知った)
さてさて。今日は俺の能力の制限の話をしよう。
基本は、加速と減速だ。どちらも自分にも他人にも使える補助魔法だ。ただ、付与している間は魔力を消費し続けるので注意が必要とのこと。(やったことない)
次に、時間停止。これは、日に3回とまあまあ少ない。その代わりか、永遠に止め続けられるし、攻撃や移動も時間を戻せば反映される。最大の制限は時間停止の間、経った日数分若返ることだな。と言っても、そこまで見た目が変化する程使ったことはないのだが。
こう言うキツい制限があるのだ。人によっては別だろうけど。
さてさて、何故こんな話をし始めたのか。その理由は今の現状にある。
そう、日に3回しか使えない大規模魔法を使った。
これの理由は数日前までに遡る。
え?いつも使ってるじゃんって?
――――ちょっと黙ってようか。
◇◆◇
???side
いつも通り、学校が終わり帰宅している途中にソイツは現れた。
デロンデロンの体で、何とも気持ち悪かった。
ソイツは俺に気づいていないらしく、俺は見てない振りをして足早に通り過ぎようとした。
俺がソイツの横を通り過ぎようとしたその時、ソイツが動いた。
「..............」
クルリと俺の方へ振り向き、ジッと見つめてきた。
俺はそれに驚き、固まってしまった。
「――っ!」
―――いや、違う。
俺が驚きで固まったんじゃない。
俺の体が動かなくなったんだ!
「.............」
俺がそれに気づくと、ソイツは嗤った。とても気持ち悪い笑みだった。見ていたくない。目を背けたい。でも――――動かない。
誰か!助けてくれっ!!誰でも良い!お願いだッ!!!
俺が心の中でそう叫ぶも、誰も来るはずも無く。ゆっくり近づいてくるソイツに呑み込まれた。ゆっくりとゆっくりと。
完全に呑み込まれた時、俺の意識は暗転した。
◇◆◇
side優希
原因不明の失踪事件が多発した。それも、この近辺で。
警察が調べても、誰が居なくなったのか分かっても、何処に、誰によって連れ去られたのかは分からなかった。
この事態を受けて、政府は魔法少女達に事件解決を依頼した。
そして、最初の失踪から数日が経ったその日。俺はその事を初めて知った。
「え――――」
ニュースを見ていてわかった。そして、困惑した。
初めてだったからだ。誰かが被害に逢った後に知るのは。
「うそ――――」
クロノアが思わずと言った風に呟く。今の様子からクロノアも知らなかったのだろう。いや、本来はあり得ない。
何故なら、クロノア自身に敵の襲撃を察知する能力が存在するからだ。
だが――――今回、それは機能しなかった。
俺は、混乱するしかなかった。クロノアの力もそうだが、被害に逢う前に助けられなかったことに対して、何もできなかったのだ。
「違うわ。これは――――」
クロノアが俺の心を読んで、真剣な顔で言う。
「これは?」
俺の心を読まれるのはいつもの事なのでスルーする。
「相手の、気配を絶つ能力が高かったのよ」
クロノアの探知を抜ける程の..........?
いや、これでクロノアの探知が絶対じゃないことがわかった。
でも、それでも変わらない。
誰かが被害にあった。
その結果は変わらない。
今まで、都合がよすぎたんだ。
俺はそれに慢心していた。
ヒーローなのに。
魔法少女なのに。
何が、何が助けるだよっ!
何にも―――誰も、助けられてないじゃないか!
「そんなことないわよ」
いいや、違わない。
結局は助けられてない。
この結果を見ればすぐにわかる。
もう既に、襲われているんだから。
「いいえ。貴方の考えが間違ってる」
間違ってなんか――――、
「間違ってるわよッ!」
クロノアが怒鳴った。
「貴方が全部なんか救えるわけないじゃない!何でもかんでも救えると思ってんじゃないわよッ!!」
「っ!」
「貴方以外に他に魔法少女がいるでしょう!?」
「貴方がカバーできないところだってあるでしょう!」
「貴方の及ばない力だってあるでしょう!」
「貴方は万能なんかじゃない!神でもない!だから..........だから.........」
いつの間にか、クロノアは涙を流していた。でも、クロノアが言いたいことは、わかる。
やっぱり俺は、慢心していた。
特異な力を手に入れて、
昔憧れたヒーローに成れると。
多くの人を助けて、
どんな状況でも助けられると。
多く現れた魔法少女の中で、
一番力が強いのだと。
そんな筈が無いのに。
俺は――――傲慢になっていた。
「――――ありがとう」
クロノアはそれに気づかせてくれた。
いつの間にか俺も泣いていた。
でも、涙は止まっていた。
悲嘆に暮れている場合じゃない。
「そう―――」
助けられなかったのならば――――、
防げなかったのならば――――、
「「今、助けに行けば良い」」
二人の声が重なった。
俺達は二人同時にお互いを見、笑った。
いつの間にかクロノアの涙も、
止まっていた。
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