第14話〈伝説の魔法少女〉

 俺達の会話に乱入してきたのは、四外神しとがみ こころと言う、所謂いわゆる陽キャ。陰の者である俺とは住む世界が違う。因みに、友久は陽キャ組だ。後、俺達が飯を食べている場所は、暖かい日の当たる後方の窓際の席だったりする。これで俺も陽キャ?―――なるかっ!


「えぇ......何で名前覚えてんの?」


「え?もうクラス全員の名前と顔は一致してるよ?」


 おかしいだろ!?まだ一ヶ月しか経ってないんだぞ!?バケモンかよ.........。


「いや、俺も覚えてるけど」


 え!?友久も!?な........んだ........と.........。


「で、真漆辺まななべ君は何で〈伝説の魔法少女〉を知らないの?」


 グイグイくるな。四外神。


「え?いや、だって。あんまりそう言う話聞かないし。それに、現れてからまだ一年しか経ってないんだよ?伝説って言うにはまだ早すぎる気が...........」


「ああ。確かに。伝説って言うには早いよな。しかも、居なくなったわけでもないし」


 俺は友久の同意の言葉にコクコクと頷く。


「まぁ、そこはあれじゃないかな?あれ、えーと。なんだっけ?」


 いや、知るか!


「まぁ、良いや」


 良いのかよ!?こいつの話は疲れる.........。


「.........で?その〈伝説の魔法少女〉って言うのは?」


「えーとね。最初に現れた魔法少女で」


 フムフム。俺以外にもいたんだな。ならあの時来てくれれば良かったのに。

 そしたら――――いや、何でもない。


「かっこよくて、キュートで」


 ふーん。俺とは程遠いなー。


「刀を使って、とっても強くて!」


 へー。まぁ、刀を使う魔法少女なんて――あれ?それ魔法少女なの?(今更)


「黒いゴシック和服を着た本当に可愛い人でね!?」


 はーん。黒いゴシック和服ね.........。あれ?あれれ?何だろうか?何か違和感が...........。


「全魔法少女の憧れの的で!世界中を飛び回ってて――――」


 あれー?何だろう?話の雲行きが怪しいぞ?


「一番最初に現れた所は此処の近くのデパート何だって!」


「――――」


 ............。それ。俺じゃん.........。

 刀を使って、黒いゴシック和服を着ていて、世界中を飛び回っていて、極めつけは此処の近くのデパートに現れた。確定じゃん!完全に俺じゃん!マジかよ.........。〈伝説の魔法少女〉とか言われてたのかよ..........。てかそれって、あの娘と同じじゃん!イヤだよ!?たった一人にしか覚えられていないとか、神以上になるとか!?後、俺はキュートじゃない!


「?。どうしたの?そんな、今まで気づいていなかったけど、今初めて言われてわかったみたいな顔して」


「めっちゃ的確だな!?」


 怖いわ!


◇◇◇


 さて、衝撃の真実がわかった後、俺は真っ直ぐ帰った。


「あ、お帰りなさい」


「うん。ただいま」


 玄関を開けて挨拶をしてきたのはクロノア。黒を基調とした、落ち着いた服を着ている。

 因みに、彼女にはいつも家で待機してもらっている。武器形態か人形態にしかなれないらしく、刀を持ち歩いていたら捕まるため(人形態の時も同様)、家で待機してもらっているのだ。勿論、俺には呼び出せる力があるので、すぐに魔法少女になれる。と言うか、クロノアって変身媒体なんだな..........。


 クロノアをじっと見ていると、ピクリと体を震わせた。


「優希」


 クロノアは平坦な声で俺を呼ぶ。俺はそれだけで何なのかを悟った。


「ああ」


 俺も端的に答える。


「ふ、気づいているようね」


 何かカッコつけて言っている。まぁ、当たり前だ、2年も共に過ごしているのだ。分かって当たり前である。


「ああ、そりぁな」


 奴等が現れたのだろう?お前の顔は、そう言っている。いや、顔を見なくてもわかる。これが、仲間ってことなのかな――――、




 ぐぅ~と音が響く。


「お腹すいたわ。何かご飯作って?」




「――――」


 ――――。


「嘘だろ!?」


 あれ!?俺あいつらが出てきたと思ったんだけど!?2年も一緒に居るのに、こいつのことなにも分かってなくね!?て言うかあの雰囲気出しておいて、言うことがお腹すいたっておかしいだろッ!


「俺、お前のことやっぱわかんねぇわ」


 俺の仲間意識はもうすでに遥か彼方へと飛び去ってしまった。


「何でよ!?」


 クロノアの声が家に響く。


 あぁ。今日も平和だなぁ。(フラグ)

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