第7話 魔法少女がいる理由2

 世界中の人々はきっとこれを見ていただろう。現在の地球の科学ではなし得ない空中投影技術。全世界の電子機器をハッキングする技術。それに驚かされていたのだから。

『えー。マイクテスト。マイクテスト』

 おい。なにマイクテストしてんだよ。なんでマイクテストから始めてるんだよ!?

『えー。皆さん聞こえてます? え? 大丈夫だから早くしろって? ええ! もう回してるの? 早く言ってよ!』

 なにかドタドタとした音が聞こえてきた。後、グタグタだ。

『ゔうん。えー。先程はお騒がせ致しました』

 なんか謝りだした。え? ナニコレ?

『少々手間取ってしまっていて。それではもう一度』

 リテイクするのかよ!?

『世界中の皆さん。私は地球を襲いに来た〈天使の軍勢ハルマ・ゲドン〉だ』


 ――――。

 一瞬。全てが静まり返った。そして、世界中の人間がこう思った。


 ――――どこが天使なんだよッッッ!!!!


 ――――その気持ちの悪い顔と体躯で何が天使だよッッ!!!――――と。


『えー。皆さんは混乱していると思うが聞いて欲しい』


 ――――当たり前だッッッ!!!!

 ――――地球を襲いに来たはずなのに、何こっちの心配をしているんだ!?!?!?

 心の声が聞こえているのかいないのか、天使? は続けて言った。


『我々〈天使の軍勢〉は、失った力を取り戻すため、多くの魂が必要なのです。その魂は、人間である貴殿方に宿っています。もちろん、他の動植物にも宿ってはいますが、一番多く、栄養価が高いのは人間の魂なのです。それ故に、我々は貴殿方の魂を欲しています。ご協力お願いします』


 と。画面の天使? はお辞儀した。

 ――――ふざけんなッッッ!!!!

 というか、侵略する? 側なのに何でそんなに丁寧なんだ!?


『それでは――――ごきげんよう』


 ―――――プツン。

 空中に投影されていた、気色の悪い顔が消えた。

 しかし、そこら中は静まり返っている。

 俺はソッと立ち上がり、テレビを点けてニュース番組に切り替えた。

『速報です! 先程映像に出ていた自らを天使と言う生命体が侵略を既に開始していたとの情報が入って来ました!』

 ――え?

『鬼のような見た目で人間を軽く吹き飛ばす程の力を持っていたそうです』

 ――あれ?

『その鬼はというと――』

 ――ちょっと待って。まさか、この流れって――――、

『なんと! 突如現れたが激闘の末、倒しました!』


 やっぱりかあああぁぁぁあああ!!!

 やめてえええぇぇぇえええ!!

 晒さないでえええぇぇぇえええ!!


『その映像が、こちらです!』

 ――――ぅえ?

『ムキムキ、ムキキ! 筋肉よ! 今、私の願いに応えて! 強化魔法:身体強化!』


 あっ。あっ。終わった―――――。

 俺はテレビに流れた俺自身の映像に心を折られた。

 と言うか何故にそこ!? 一番恥ずかしいところじゃんッッ!!!

 もういっそ殺せぇ!!!

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