第5話 勧誘?
――――おかしい。何で肉を切り裂いた感覚が無いんだ。
俺はその思考に意識を全て持っていかれ、剣を振り抜いた姿勢で固まった。
「グ……ガッ……」
ドサリ、と鬼は倒れた。そしてゆっくりと浄化されるようにじわじわとその体躯を消していく。
―――――え? 何だ? これ。
俺はまた突然の疑念に囚われながらも、姿勢を戻し剣を鞘に納めた。まて鞘どこから出てきた。剣出したときは抜き身だっただろ。
《これは消滅よ。生命維持出来なくなったから、消えてなくなるの》
へ、へ~。そうなんだ………。
俺は、マジマジとその光景を見る。
《それよりも、そいつが居なくなった後に何かしらが落ちるからそれ拾いなさい》
え? あ、うん。分かった。
俺は言われた通り、鬼の体が無くなってから現れたナニかを拾った。
―――――何だ? これ。
《それはね、
そう言われて、現在の状況を思い出した俺はやけに静かな周囲を見回した。
全員が此方を凝視していた。
――――――――怖ッ!
《ほらほら。怖がってないで倒しましたって言いなさいよ》
え? 何で? 見ればわかるじゃん。
《それでも、確実に倒したんだとは言い切れないでしょ?》
―――――確かに。そうか、安心はできないよな。なら―――――、
「やった、か?」
誰かが言った。
いや、それ。生存フラグじゃん!?
「倒しのか?」
「良かった・・・・・!」
「うわぁぁぁあああん!!!」
「怖がっだ・・・・・・・ズビッ」
段々と倒したという事実が周りの人達に伝播していったのか、いつの間にか張られた緊張の糸がほどけていった。
―――俺、まだ何も言ってないのに。もう、このまま帰っちゃおっか? うん。そうしよう。そうだよ。それがいい。よし。逃げよ。(思考放棄)
そして、俺は音を立てずにその場からソッと姿を消した。
◇◇◇
俺は急いで帰宅し、すぐに部屋の中に閉じ籠った。
「フゥ~……」
『あら? 疲れたの?』
「ああ、うん」
俺は適当に返事を返す。と言うか、もう色々有りすぎて脳の処理が追い付かない。
突然、俺の目の前が光りだす。
「うおっ! まぶしっ」
俺は咄嗟に目を瞑り、光りから目を守る。
「……ふぅ」
声が聞こえて恐る恐る目を開けると、そこには先程の少女が立っていた。
「あれ? どうしたんだ? っていうかどこにいたんだ?」
「さっきのはね、まだ一時的な契約でしかないのよ」
話聞けよ。まあいいや。
一時的な契約? それはつまり……俺はまだ完全な魔法少女じゃないってことか!? つまりまだ戻れる!?
「残念ながら、魔法少女に変身した人はもれなく魔法少女に成るのよ」
マジかよ……。というか、サラッと心読まれた……。
「さて、もう一度言うわ。こほん」
そう言って少女は一つ咳払いをする。
そして―――、
「僕と契約して、魔法少女に「ちょっと待ったあああぁぁぁああ!!!」なによ」
―――――全力で遮った。
「それ以上はいけない!と いうより、普通にできないの!?」
「むっ。できるわよっ。でも、これを一番最初に言うのが決まりなのよ」
マジかよ! 何だよその変な決まり!! 思わずツッコミしちゃったじゃん!
「それじゃあ、こほん」
また、少女は咳払いを一つ。
俺は次に出る言葉に身を構える。
「私と契約して魔法少女になって下さい! お願いしますぅぅぅ!」
見事な土下座を俺に見せつけて言った。
「いきなり卑屈になった!?」
低姿勢過ぎない!? さっきの勢いはどうした!?
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