第4話 魔法少女アーテル2
―――金属がぶつかり合う音が響く。
鬼は俺を圧殺しようと力を込めてくる。
俺はそれに対抗しようと、剣の腹に手を添える。
―――――ぐぎぎぎ。腕が! 腕がぁぁああ!
《あら? 身体強化してないの?》
頭に直接声が響いた。その声は先程の少女のものだ。
というか、さらっと流してたけど何で頭? に声が響くんだよ?
《それは、あれよ。人の子よ、今貴方の――》
それ以上は駄目! 絶対、駄目!
《むっ……》
あ、そうそう。それで、どうやって身体強化するの?
《そんなの魔法で身体強化すればいいじゃない》
――――hum?
意味不明すぎて思わず外国人のような返しをしてしまう。すると、頭の中にとあるフレーズが思い浮かんだ。
うっそ!? これ言うの!?!? ほんとに????
《早くしないと押し潰されちゃうわよ!》
うぐっ。でも……。
《……》
うぅ……。
《………》
………あぁもう! わかったよ! やるよ! やればいいんだろッ!?
俺は少女の無言に耐えきれず、早々に諦めて言葉を紡いだ。中二病的セリフとはまた違った馬鹿みたいなフレーズに恥ずかしさを押し殺して。
「ムキムキ、ムキキ! 筋肉よ! 今、私の願いに応えて! 強化魔法〈身体強化〉!」
すると、体の中から何かが抜けると共に、体の奥底から力が沸き上がってきた。
目に見える変化と言えば、レモンイエローとでも言うのだろうか?その色が手から溢れだし、体を覆った。
―――――恥ずかしい。恥ずかしさで死にそうだ。今、俺の顔は真っ赤になっていることだろう。見なくてもわかる。と言うよりも、何だこれ? 凄く力が沸き上がる!
《良かったわね。でも……やっぱり才能が有ったのね……》
え? 何か言った? 最後の方が聴こえなかったんだけど。
《そんなことよりも、目の前に集中なさい》
そう言われて鬼を見ると、口をポカンと開けて俺を見下ろしていた。それでも、力を込め続けるのだから、器用な奴である。
あっ、そう言えば男の人を庇ってたんだった。
「後ろの人! 早く逃げてください!」
「……はっ! あ、ああ! わかった!」
と、男性は我を取り戻し、俺に謝ると何処かへ逃げた。
「グッ! ガァァァァアアア!」
「おっと」
鬼の方も我を取り戻したのか、更なる力を込めてきた。しかし近くに誰もいないので、受け流しても問題ないと考え持っている剣を少し傾ける。たったそれだけで、金棒は剣の腹を滑り床に勢いよく当たった。
ドッガアアァァァアアアンッッッ!!!
金棒を起点に放射状にヒビが広がり、一部が陥没した。
どんだけ力込もってんだよおおぉぉお! ふざけるのも大概にしろよ!?
俺は直ぐさま剣を横に振った。鬼の腹に当たった感触が手に伝わるが、鬼は咄嗟に後退したのか浅かった。
俺は続けざまに剣を振り続け、鬼を攻め立てていく。
「グッ、ガアア!?!?」
鬼の反応は鈍いもので、何度が剣が命中し切り傷を作った。しかし、全て浅いところで止まる。剣術なんて習ってない奴がタダ剣を振り回してるだけだからな。
「チッ!」
俺はもう一歩深く進んだ。鬼はそれに反応したのか、間合いを取るように一歩下がる。
「グアアア!!」
そして、持ち直したのか金棒を再び振りかぶる。
「一々動作が大きすぎる、よ!」
俺はそれよりも早く、速く。刀を振り抜く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます