(11) 秘密の隠し場所
11-1
佐藤さんが
佐藤さんと話したその日の夕方、僕は家のベッドでうずくまりながら考えを巡らせていた。もしも自分が佐藤さんの立場だったらいったいどう感じていただろうか・・・。僕は、人の気も知らずにのうのうと過ごしていた日々を反省した。
どれくらいそうしていただろうか。だんだんと意識が遠くなり眠りに落ちそうになっていた。そのときだった。
––––ドゴンッ
突然物音がした。音がしたのは、なんと櫻木さんの部屋からだ。
一瞬思考が止まった。なぜ櫻木さんの部屋から物音が・・・?まさか・・・櫻木さんが帰ってきた・・・?
僕はベッドから飛び起き、慌てて部屋を飛び出した。
––––ピーンポーン
櫻木さんの部屋の呼び鈴を押した。心臓の鼓動が速くなる。このドアの向こうに櫻木さんが・・・。
––––ガチャッ
ドアが開いた。
「櫻木さ・・・」
僕はそう言いかけた。しかし、ドアの向こうに立っていたのはビシッとした正装に身を包んだ、見知らぬ高齢の男性だった。
「あ・・・えーっと・・・」
「水野様でございますね」
僕が戸惑っていると、その男性は優しい笑顔でそう言った。
「え・・・どうして・・・」
「申し遅れました。わたくし、
柳と名乗ったその男性は深々と頭を下げた。
「は、はあ・・・」
「文化祭の折は多大なるご迷惑をおかけいたしまして、まことに申し訳ございません」
柳さんはますます深く頭を下げた。
「いえ・・・」
僕は頭が混乱していた。えっと・・・櫻木さんの執事・・・?
「言い訳がましくなりますが、わたくしは旦那様があのような行動にお出になるとは聞き及んでおらず・・・もし存じ上げておりましたらこのようなことには・・・」
「そう・・・ですか・・・」
「お嬢様をこの爺やがお守りできなかったこと、大変心苦しく思っております」
爺や・・・?
「あ・・・柳さんが、櫻木さんの爺やさん・・・なんですか?」
「はい、お嬢様にはそうお呼びいただいております」
この人が噂の爺やさんか・・・。
「あの、櫻木さんは・・・櫻木さんは元気ですか?」
「あまり詳しくは申し上げられないのですが、体調などは問題なく、お元気にお過ごしです」
「そうですか・・・」
なんだか含みがあるが、ひとまず櫻木さんが元気だと聞いて安心した。
「はっ、水野様、このような場所で立ち話をしてしまいまして申し訳ございません。よろしければ中にお入りください。お茶をお淹れいたします」
柳さんは慌てた様子でそう言った。
「あ、はい・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
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