10-2
「
そう言ったのは
「全然だめだ・・・」
あれから、
僕は必死になって櫻木さんの居場所に関する情報を集めようとしていた。櫻木さん本人のスマホには何度も連絡したし、ダメもとで教師にも聞いた。とにかく、櫻木さんに会わないと始まらない。会った後どうすればいいのかは分からないが、そんなことはどうでもいい。
「そうか・・・。俺の方も全然だ。ネットでちょちょっと調べれば櫻木さんの実家の住所ぐらいすぐ分かると思ったのになあ・・・。すごい情報統制だよ。信じられない」
涼平も情報集めに協力してくれていたのだが、ネット検索に自信のある涼平でもお手上げになるほど、櫻木さんの実家に関する情報はどこにもなかった。
「そうか、涼平でも無理か・・・」
「櫻木さんの実家の住所どころか、
むかつくことに、橘尊も櫻木さんに便乗したように学校に来ておらず、特別生徒としての待遇を受けていたのだった。
「佐藤さんの方はどう?」
「こっちもだめ」
佐藤さんもまた、情報集めに協力してくれていた。
「
「そっか・・・わざわざありがとう」
***
結局そのまま一か月が過ぎた。日がたてばたつほど、実は櫻木さんと過ごした日々がすべて夢だったのではないかと思えてきた。櫻木さんの机とロッカーがそのまま残されていることだけが、櫻木さんがまだこの学校にいると思える唯一の救いだった。しかし、何の情報も得られない日々に嫌気がさしてきたのも事実だった。
「なんかさ・・・僕たちじゃ太刀打ちできないことなのかな・・・」
ある日の放課後、僕はたまたま側にいた佐藤さんにそうポロっとこぼした。
「なんていうか・・・。もう一か月もこんなにがんばってるのに何の進捗もないし・・・櫻木さんとは住む世界がやっぱり違うのかなって、最近考えちゃうんだよね」
僕は、佐藤さんなら共感しつつも活を入れてくれるだろうと思っていた。しかし、佐藤さんの反応は予想外のものだった。
「水野あんた・・・本気で言ってるの?」
佐藤さんはそう言ったのだった。
「えっ?」
僕は驚いて聞き返した。
「本気で言ってるのかって聞いてるの」
「いや、本気っていうか・・・そんな気がすることもあるってことなんだけど」
「・・・」
佐藤さんが無言になった。
「佐藤さん?」
「もういい」
「えっ」
「あんたがその程度の気持ちならもう協力しない」
「え・・・佐藤さん、ちょっと待ってよ」
「そんなこと口にするの、許せない」
「いや、あの・・・」
「そんなんなら協力なんかしなかったのに!」
佐藤さんはそう言ってどこかへ行ってしまった。
「佐藤さん!」
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