9-2

「あ、見て!あれかわいい!」


 小夏がはしゃいでいる。その指さす先には水風船釣りがあった。


「水風船?」


「うん!あそこのお店の水風船すごくかわいい!あれやりたい」


「わかったよ」


 俺たちは水風船釣りの店へと向かった。



***



「らっしゃい!お2人かい?」


 水風船釣りの店のおっちゃんに声をかけられた。


「はい!2人でお願いします」


「え、俺は別にいいよ」


「いいから一緒にやってよー」


「うーん」



***



 結局小夏に押し切られて一緒に水風船釣りをやる羽目になった。小夏は一回で目当ての水風船を見事に釣り上げたが、俺は5回やってもつれず、店のおっちゃんに同情されてサービスで水風船をもらったのだった。


「取れてよかったー」


「小夏うまかったな」


「カズくんが下手くそすぎるんじゃないの?」


「うるせえよ。でも水風船なんてすぐしぼんでダメになるのに何がいいんだか」


「何回も挑戦してた人がそれ言う?」


「う・・・」


「まあ、水風船釣りをやるっていうのがお祭りらしくていいんじゃん。それに、いつかなくなっちゃうっていう儚さもなんか・・・ね・・・」


「なんだよ」


「いや、別にー」



***



「小夏、この後行きたいところがあるんだけどいいか?」


「え、行きたいところ?花火は見ないの?もうすぐ始まるよ?」


「来たらわかるって」


「うーん、わかった」



***



 俺は小夏を連れてとあるマンションに向かった。


「着いたぞ」


「え、何ここ」


「ここは俺のじいちゃんが持ってるマンション」


「え、カズくんのおじいちゃんってマンションなんか持ってたの!?」


「あ、うん、まあな」


「で、なんでここに来たの?」


「あー実は・・・じいちゃんに頼んでここの屋上を貸し切りにしてもらった」


「貸し切りって?」


「花火の特等席だよ」


「え、うそっ!カズくんってそんなことできる人だったっけ!?」


「どこに驚いてんの?傷つくだろ」


「ごめんって」


「とにかくさっさと行くぞ」

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