8-4

 どれぐらいもがいていただろうか。突然、羽交い絞めが解かれた。


「うおっ」


 僕は床に膝をついた。長時間羽交い絞めにされていたせいで腕の感覚がない。しかし、そんなことを気にしている場合ではない。僕は立ち上がり、急いで櫻木さくらぎさんの後を追った。櫻木さん・・・櫻木さん・・・櫻木さん・・・。


 校舎の外に出てあたりを見回した。しかし櫻木さんの姿はもうどこにもなかった。


「櫻木さん・・・」


 ––––いざという時はちゃんとお前があの子を守ってやるんだぞ?


 カズおじちゃんの言葉が頭の中を駆け巡る。カズおじちゃん・・・僕は・・・櫻木さんのことを・・・。


「くそっ!」


 僕は左腕につけた時計を見た。涙が込み上げてきて、もう止められなかった。

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