(7) お嬢様とラーメン
7-1
「ラーメン屋さんをやりたいです!!」
そうキラキラした目で発言したのは
***
そして夏休みも明けて1か月がすぎ、文化祭まであと1週間となった。ようやく残暑も去り、涼しい季節の訪れを僕は喜んでいた。
結局夏休み中はあの猫カフェのとき以降、櫻木さんとデートらしいデートをすることはできず、僕は自分自身にいい加減嫌気がさしてきていた。あのあと、カズおじちゃんにことの顛末を正直に話すと、「このヘタレが!」と罵倒されてしまったが、櫻木さんの顔に免じて、ということで今年も誕生日のコロッケをもらえることになったのはほっとした。しかし、夏休みが明けたことによって、休み中は会うことのなかったあの橘尊が再び僕たちの前に姿を見せることとなってしまった。邪魔者のいない間に何も行動を起こせなかったことを僕は激しく後悔した。
「それにしても、櫻木さんがラーメン屋をやりたいって言うなんて驚いたよ。ラーメンが好きなのはわかるけど」
僕と櫻木さんは教室の外の廊下で話していた。
「そう?だって、食べるだけじゃなくていろんな人にラーメンのおいしさを知ってほしいの。今回はラーメンの中でも私が特においしさを伝えたい博多ラーメンにさせてもらったのよ」
つまり、ラーメンの中でも櫻木さんが特に好きなのが博多ラーメンということらしい。
多くの生徒が、文化祭当日はできるだけ店番をせずに楽しみたいと思うものだ。しかし櫻木さんは2日間行われる文化祭で両日ともフルで店番をしたがっていた。もちろん、櫻木さんだけに任せるわけにはいかないので、何とかお願いして休憩の時間を取ってもらうようにした。櫻木さんは店番ができない時間があることを残念がっていたが、「そうよね、みなさんも店番がしたいわよね」としぶしぶ納得していた。
夏休みに行動が起こせなかった僕にとっては、文化祭は第2のチャンスだった。どうにかこうにか、文化祭2日目の午後は
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