(6) 夏のせい
6-1
蝉の鳴く声が、締め切った窓の外から聞こえる。眠い目をこすりながらカーテンを少し開けると、日差しの強さにげんなりした。今日も暑い。
季節はあっという間に流れてもう7月も下旬、柊学園高校は先日から夏休みに入っていた。結局夏休み前の期末テストも僕は平均点、
櫻木さんとは、夏休み前の最終登校日にお疲れ様のラーメンを一緒に食べてからというもの、まだほとんど顔を合わせていない。プール、海、花火・・・夏といえば恋人たちの季節といっても過言ではない。僕はできれば櫻木さんと一緒に夏休みも過ごしたいというのがここ数日の願望なのだが、デートのお誘いどころか、何気ない会話のメッセージすらも送れないでいた。
––––ブーブブッ
スマホが鳴った。見ると、櫻木さんからのメッセージだ。心臓が飛び出しそうなほどバクバクする。
『カズおじちゃんにまた新しいレシピを教えてもらったの!よかったら今夜夕飯を一緒にどうかしら?』
櫻木さんからの夕飯のお誘いだった。願ってもいない幸運に、嬉しすぎて顔がにやける。
『ありがとう!ぜひ夕飯一緒に食べたいな!』
さんざん文面に悩んで、この無難な返信になった。
『良かったわ!では18時ごろに!』
***
僕は家の近くの商店街を歩いていた。アーケードもなく、野ざらしのこの商店街は地獄のように暑い。時折、ドアが開いた店から吹いてくる冷房の風がオアシスのようだった。
僕は、櫻木さんとの約束の前に手土産のスイーツを買うつもりだった。櫻木さんに夕飯をごちそうになるときはいつも手土産にスイーツを持って行く。今日は和三盆を使った抹茶ロールケーキを買おうと思っている。このロールケーキは1切れ400円と高校生にはなかなか高額なのだが、とにかく絶品でこの商店街ではカズおじちゃんのコロッケと並ぶ、いやそれを凌ぐかもしれない人気店だ。
「おい、
口の中が完全にロールケーキの味になっていたとき、突然大きな声で名前を呼ばれた。
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