3-4

 ––––ピーンポーン


『はい』


「水野です」


『いらっしゃい。鍵は開いているから、入ってもらえるかしら』

 櫻木さくらぎさんに言われた通り、僕は部屋に入った。


「櫻木さん?」


「あ、水野くん」


 寝室の方から声がした。


「あの、高校生ってこんな感じでいいのかわからないのだけど・・・」


 櫻木さんは寝室のドアから顔だけ出している。


「うん?こんな感じって?」


「どうかしら・・・」


 そういって櫻木さんは寝室からぱっと出てきた。


「うん、すごく似合って・・・って・・・え?」


 シャツのボタンは第二ボタンまで開いていて、リボンがだらんとつけられている。スカートは膝上二十センチぐらいだろうか。キャメル色のカーディガンを腰に巻き、そして極め付けにルーズソックスを着用していらっしゃる。ブレザーはもはや着ていない。これは・・・。


「コギャル?」


「え?何?」


「いや・・・あの・・・その着方は・・・どうしたの?」


「これが高校生の正装だって調べたのだけど・・・」


「何で調べたの!?」


「スマホよ」


 なぜスマホで調べたのに90年代のファッションにたどり着くのか・・・。


「あの・・・似合っていないかしら・・・」


 似合ってないかと言われたら、めちゃくちゃ似合っているし可愛い。やっぱり元の素材がすばらしいから何をしても可愛い・・・。


「いや、あの、すごく似合ってるよ・・・でも・・・それだとちょっと・・・伝統的すぎるかな・・・」


「伝統的?・・・なるほど!普段からこの着こなしは堅苦しいということね」


「え?」


「ほら、いくら伝統的だからと言っても、私たちも毎日着物を着て暮らしていないじゃない?それと同じようなことでしょ?」


「う・・・うん、だいたいそんな感じ」



***



 そんなこんなで、櫻木さんにはかっちりと制服を着ていただいた。


「うん、この方がなんだか落ち着くわ。やっぱり普段はこうでなくちゃね」


「そう思ってもらえて安心したよ・・・」


「どうして水野くんが安心するの?」


「え、ううん、何でもないよ」


「それより、水野くんもその制服、とっても似合ってるわ。いつもより大人っぽく見えるわね」


「あ、ありがとう・・・」


 櫻木さんに褒めてもらえるなんて、幸せすぎる!


「ますます入学が楽しみになってきたわ!」


「そうだね」


「桜が咲く中、この制服に身を包んで外に出るの」


「うんうん」


「そして爺やが運転する車に乗って、学校に向かうのよ」


「うんうん・・・えっ?」


「えっ?」


「今、爺やが運転する車って言った?」


「ええ、爺やが・・・あ!」


「気づいた?」


「爺やは・・・もういないのだったわ」


「うん・・・なんかそれ爺やさんが死んだみたいだけど・・・」


「ど、どうしましょう!」

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