第2話「鉱山襲撃!!」

「え、エルフの森が……」

「燃えている──────」


 ドワーフ鉱山、山頂の物見櫓にて多数のドワーフが驚愕の眼差しでこの光景を目にしていた。

 彼らドワーフ族の眼前には、つい先日まで青々とした木々を蓄え、まるで一個の緑のモンスターのように横たわっていたエルフの大森林が一夜にして焼け落ちていた。


 その光景はまさに神の所業。


 昨日まで平穏であった森は、たったの数時間で姿を変えていた。

 まだまだ燃え広がる森は、早晩灰塵に帰すだろう。


「た、たたたたた、大変だ!!」

「森が……! 我らの燃料・・が燃えていく!!」

「は、早く工房長に連絡しろッ! 騎士団も総出で消火に当たらせなければ!!」


 櫓の責任者が大慌てで伝声管・・・に取り付く。


『──あー、テステス、テステス!?』


 キュィィン……とハウリング音が鉱山中にこだまする。


 ……これは山中をくりぬいて、鉱山深部にまで声が届くように設計されたカラクリんおだ。


 それも、ドワーフと一部の帝国軍でしか知らない新技術。

 それを使って、至急エルフの森に起りつつある悲報を届けようとしたのが───……。


「哨戒長ぉぉぉお!! あ、あれを!!」

「──テステス、工房本部! 工房本部───至急応答を……。って、なんだ! 今報告中だ!!」


 見りゃわかるだろう!!

 伝声管にがなり立てていた恰幅のいいドワーフの哨戒長が部下に肩を掴まれて不機嫌そうに振り返る。


 報告の最中なのは見ればわかるだろうに……!


「わ、わかっております! で、ででででで、ですがぁぁぁあ!!」


 同じく恰幅の良い部下のドワーフ族の斥候が顎が外れんばかりに大口を開けている。


 何をそんなに間抜け面を……????

 エルフの森が焼ける以上の異常事態が──────。



 って、……おいおい。


「──────な、な、な、」


 なんだありゃぁぁぁあああああああああああ……?!


 そう。

 哨戒長の目に飛び込んだもの。

 ……それは一言でいうならドラゴンだろうか?


 いや違う。

 技術に優れたドワーフならわかる。


 ──生物と機械の違いなど一目瞭然だ。

 だから、わかる。

 そう、あれは────……鉄???

「空を……飛ぶ…………鉄の鳥?」


 そうだ、鳥だ。

 あれは鉄でできた──────。


「なん、なんですかぁぁ、ありゃああ!?」


 わいのわいの、と大騒ぎする若いドワーフたち。

 そして、哨戒長とて聞かれてわかるはずもない。

 ただ、鉄の鳥だとしか──。


「ぇ、ええい! うるさい!! まずは報告が」


 バシュンバシュンバシュン!!




「なんだ、光っ──」

 チュドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!





 その言葉が哨戒長───いや、物見櫓にいた全員の最後に聞いた言葉になった。


 一瞬のうちに爆散した櫓がガラガラと崩れていき、ドワーフだったものを焼き落としていく。

 その上空をギュオーーーーーーーーーーーン!! と爆音を立てて航過していく影。


 それは、空対地ロケット弾を満載した戦闘爆撃機型のP-51だった。


『『『タリホー!! タリホー!!』』』


 ──ギュォォォォオオオオオオオオオオオオオン!!!


 それは死の天使のごとく、ドワーフ鉱山に突進したP-51の群れが次々に哨戒地点を焼き潰していく。

 見晴らしを優先し、そもそも対空警戒という概念がほぼないこの地では、偽装など施しておらず上空から見れば丸見えの櫓があるだけ。


 それらが次々に燃えていく。


 そうとも──────エミリア・ルイジアナの先行部隊が来たのだ!!

 ドワーフを滅ぼせと、簡潔明瞭な意思を持ってやってきたのだ!!



 う、うぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!




 その日、ドワーフ鉱山の哨戒拠点はほぼ壊滅した……。

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