ドワークの山を砕く
第1話「山、動く」
※ 新章 ※
サティラの残骸をうっすらと眺めるエミリア。
その残滓が風に流れていく様を見送り──そして、たなびくサティラの魂が消えていくのを見送りながらその先に聳える山に焦点を合わせた。
「ふ…………」
そうか、次はお前だったな。
ドワーフ族の騎士──グスタフよ。
そうとも。次は、
「次は──────お前だッ」
魔族を滅ぼすに十分な動機と、利益がある種族。
……薄汚い、クソのようなドワーフ族!!
「我が魔族の力でる……かの燃える水は役に立ったか? 希少金属たるオリハルコンは好きなだけ手に入ったか? そして、あのミスリルはそうだ?……鍛えて高く売れたか?」
資源、資源、資源。
山にこもるドワーフが好みそうなことだ。
「だけど……」
エミリアは、エルフ大森林跡地に一人達、うっすらと雲を被るドワーフ鉱山を見つめた。
あそこにいるのだ───……。
ドワーフの騎士。グスタフが。
「そう。だけど────それは、あなたたちのものじゃァないよ」
魔王領から資源を奪い、物資を、そして人々の命まで奪ったドワーフ族が……。
だからね♪
取り返しに行こうじゃないか。
大切な資源を、
大切な命を、
大切な────。
「くくく。……うふふふふ! ふはははははは!!」
目を細めて笑うエミリアの視線の先に、荷車を曳いて退却する帝国軍や、家財を担いでトボトボと歩くエルフ達が見える。
さらには、帝都から脱出したと思しき人々の姿も多数ある。
森が焼け、視界が広がったおかげで、よーーーーーーーく見える。
ふふふふふ……。逃げた先に楽園があると?
誰か助けてくれる人がいると思う?
「逃げる、逃げる。逃げてるよぉぉお♪ 帝国軍が、森のエルフどもが……♪」
ドワーフの地に。
追いやられるように、逃げる逃げる!
くははははッ!
甘いわね……。
私達も逃げた───。魔族も落ち延びた。
だけど、
リリムダの街は魔族を食いつくし肥え太った。
魔王領に残った帝国軍は、幼子に至るまで狩りつくした。
そして、私をしゃぶりつくし───死ぬまで犯そうとした。
だからね?
私に慈悲を期待しないで頂戴───。
私は一変の容赦もなく、
私は一欠けらの情けもなく、
私は人並みの憐憫の情すらなくお前たちを狩りつくそう。
さぁ、
「……逝きましょうか───おいでなさい、愛しいアメリカ軍よ」
エミリアが手を翳すと、地上に「USゲート」が多数出現し、内部から重低音を立てて重戦車が大量に顔を出した。
ゴゴゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ───。
ギャラギャラギャラギャラギャラギャラギャラギャラ───。
「見せてもらおうかしら、ドワーフ謹製の武器の性能とやらを!」
あははははははははははははははははははは!!
大量の戦車を背景にエミリアは笑う。
朗らかに、楽し気に、クスクスと笑う。
彼女はとても綺麗に綺麗に笑う笑う。
まるで少女のように、花咲くように笑う。
そして、
「
『『『
召喚獣ステータスを記載。
M26重戦車パーシング
ベトナム戦争くらいまでをチラ見させる。
「さぁ、駆け抜けるわよ───。目標はあの山……!!」
ドワーフ鉱山!!!!!
「全軍──────最大速力!!
『『『フーラー!!』』』
ギャララララ……!
──ギャララララララララララララララララララララ!!
凄まじい轟音と土煙を立てて重戦車が駆けていく。
焼けた木々を薙ぎ倒し、焼けた大地をかき分けて、焼けたエルフ達を踏みつぶしながら征く。
エミリア・ルイジアナと共に征く!!
「さぁ、良い鳴いてもらおうかしら、ドワーフ族! お前たちの隣人、エルフ達は抗ったぞ? それはそれは見事に抗った───」
そして、滅びた……!
ならば……。
ならば、お前たちも私に抗うがいい!!
さもなくば…………。
「さもなくば、無慈悲な殺戮が待っているぞ!!!」
そうとも。因果応報の時は来た。
だから、来た!!
私が来た!!!
エミリア・ルイジアナが来たッッ!!
そして、
「───私が征くのだ!!」
ドワーフ族よ!!
覚悟しろッッッ!!
あーーーーーーーはっはっはっはっは!!
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