第17話「火力の前に──」
「「「ぎゃああああああああ!!!」」」
一度目の斉射で腰の抜けていたエルフの集団に容赦なく迫撃砲弾が突き刺さる!
動きを止めた集団など、タダのいい的だ!!
「あははははは!! エルフが吹っ飛んでるよーーーーーー!!」
エルフが吹っ飛んでるよぉぉぉおお!!
もっと!!
もっと!!
もっともっともっと!!
「もっと、迫撃砲を撃ち込んでやれッ!!」
『『『
『『『『『
そうとも、聞け───……!!
空気を切り裂く音が聞こえるか!?
信管が地面に突き刺さり起爆する音が聞こえるか!?
巻き散らかされるアマトール炸薬の爆発音が聞こえるか!?
ぶちまけられる破片の唸り声が聞こえるか!?
「それが私の嬌声だぁぁぁあああ!!!」
あはははははははははははははは!!
エミリアは上機嫌で笑い続ける。
「ふ……ざけやがって───」
しかし、そこに水を差すものがいた。
未だドカンドカンと迫撃砲弾が降り注ぐ、地獄の中で敢然と立ちあがるお人───。
「ぶっ殺す!! ダーーーーーーーークエルフぅぅぅぅうううう!!」
「やってみろ! 森エルフぅぅぅぅぅぅううう!!」
憤怒の表情で起き上がったのは、そうとも勇者パーティの神官サティラ!!
回復魔法と、精霊魔法の使い手で──────。
「我が一族を楽しそうに切り裂き、殺しまくっていた森エルフの長!!!」
「それが、どうしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
「それだから、こうしているぅぅぅぅぅううう!!」
もっと!!
もっと!!
もっと!!
「────もっと砲火を!!」
地獄の炎で焼き殺されろッッ!!
『
部隊全力迫撃砲射撃!!
自由射撃を実施する!!
「それで我々を殺せると思うなよぉぉぉおお!! 精霊魔法展開ッ!! 頭上を覆え!! 霧を出せぇぇぇえ!!」
るーーー♪♪
神官たちやエルフの騎士の生き残りが美しい旋律で謳いだす。
すると、彼らの周囲に人型を形成する精霊が顕現し、彼らの傷を癒し、空に空気の幕を張り、水蒸気由来に霧を発生させる。
「ははははははは! どうだ、この練度! 高度な精霊魔法で貴様の炎など届くも」
チュドーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
「「「ぎゃああああああああ!!」」」
降り注ぐ60mm迫撃砲弾が次々にドカンドカンと炸裂する。
当然、空気の膜とやらとか、霧だのがあるのだが…………。
「…………届きますが、何か?」
キョトンとしたエミリアの顔。
対して、仲間がバラバラと降り注ぎ、腸を頭から被ったサティラが凄まじい形相で振り返る。
「何をした!!!!」
「砲撃したぁぁあ!」
当たり前だろうが!!
ボケらーと、まとまって突っ込んでくるお前らが悪い。
「こぉぉぉおおのぉぉぉぉおお!! 生き残りはゴーレムにしがみ付けッ!! 一緒に突撃すればエミリアの炎など、いかほどのこともあらん!!」
おぉ~……!!
と、ばかりに大分勢いの衰えた声がついてくる。
見ればサティラの配下のエルフは半分近くがボロクズのようになって戦死。
ほとんどが地面の染みだ。
「おのれ……!!」
それでも、今更引くに引けず、サティラ達はゴーレムに見っとも無く縋りついて突進を再開。
ズシーン、ズシーーン! と歩みは遅いものの3~5mを越える巨体は実に頼もしい。
彼らは心を持たない戦闘人形だ。
足元でエルフ達が砲弾によってグチャグチャにされていようとも心は折れない。
だから、頼もしい!!
「ははははは! どうだエミリア!! 我らが精鋭ゴーレム部隊だ!」
この土地ならではの精霊魔法の産物──────!
「お前の死霊術と我らがゴーレム! どっちが強」
「
『『『
ふんぬ、と腕を組み堂々と前面に立つエミリア。
ズシンズシンと足音を立てて近づくゴーレムを見て、空挺部隊に告げる。
明確に短節にハッキリと───。
ジャキィィイイ!!!
と、空挺兵らが構えるのは─────────!
『『『
装填手が、射手に装填の終わった事を教えるため、ヘルメットをパンパンと叩く。
『『『
射手が簡易照準器にゴーレムの姿を捕らえると、150mの距離で必中の弾を──────。
『『『
ズババッババババババアアァァァァァッァアァン!!
と、一斉射撃!!
60mmのロケット弾が発射炎を延々と棚引きながら──────着弾!!
ズドォォォォオオオオオン!!!
「ほげぇぇぇえええええ!!」
「ひでぶーーーーーー!!!」
「「「はぶぁぁああ!!」」」
命中に次ぐ命中!!
ロケット弾がゴーレムに次々と突き刺さりぶっ飛ばしていく。
当然しがみ付いていたエルフも同様。
ゴーレムと一緒に木っ端みじんになる。
そして、この人───。
「あーーーーーーれーーーーーーーー!!」
サティラさんも、ギュルギュルと錐もみ状態で空に舞いながら哀れな悲鳴をあげる。
ケツに火がついて神官服から黒煙が、
「あはははは! エルフが飛んでるよぉぉお♪」
あははははははははははははは!!
エミリアもサティラに合わせて空を仰いでクルクルと舞い踊る。
「あーーーーーーれーーーーーーーまーーーーーーー…………!」
だが、そこは神官長のサティラ!
腐っても勇者パーティのメンバーだ!
空中でキリっと表情を整えると、精霊魔法を駆使して態勢を整えると、スタンと危なげなく着地。
…………尻から黒煙出てるけどね。
だが、気付かない本人は涼しい顔をしつつ、エミリアを睨むと、
「何よあれは?!」
「バズーカである!!」
スチャキ! と、エミリアも構えて見せる。
ちゃかりと空挺部隊から借り受けたもの───バズーカ。正式名称『M9ロケットランチャー』である!
それを二挺も!!
「さぁ! 踊りましょうか、サティラ───」
ぶっとべや!!!
ズバァッァアアアン!!
すかさずサティラ目掛けて発射!
60mmロケット弾が尾を引き、ぶっ飛んでいく。
「ぎょえぇぇぇぇええ!!」
ギリギリのところを掠めてロケット弾が飛び退りサティラの神官服をズタズタにする。
「もう一丁!!」
───あらよっと!!
ズバァッァアッァァアアア!!
今度はイイ感じに直撃コース───……!!
チュドーーーーーーーン!!
「あっちぃぃぃぃいいいいい!!」
あ、微妙に距離が足りなかったわね。
惜しい……!!
だが、至近弾を食らったサティラは破片が服の中に飛び込み、「あちぃあちぃ」とピョンピョン飛び跳ねる。
その姿が面白くてエミリアがケラケラと笑うと、サティラが熱がりながらも睨むという妙技を見せてくる。
「あっつ……! も、もう許さんッ!! あと、100mだ、根性だせやぁぁああ!!」
ガラガラと崩れ落ちるゴーレムから辛うじて逃げたエルフ達。
生き残りはあと何人やら───。
だが、ここまで来た。
数多の兵を失いながらもここまで来た!
100mなら弓の必中距離!!
弓の名手エルフを舐めるなよぉぉぉお!!
「突撃破砕射撃用ぉ意───」
「弓ぃぃぃいい!! 構えぇぇぇええええ!!」
サティラもボロボロの姿で駆け抜け、弓を引き絞る。
もちろん狙いはエミリアただ一人。
やつは妙な筒を捨ててしまうと、剣だけを武器に優雅に微笑んでいやがる。
馬鹿め──────死ねッ!!
ヨレヨレのボロボロのエルフの生き残りも弓を引き絞る。
どのエルフも弓の名手。
そして、精霊魔法の使い手で、彼ら弓手を援護するように精霊が顕現し矢に力を付与する───。
そうだ! 見ろ、エミリア!!
これが本物のエルフの力だ!!
お前のような薄汚いダークエルフなど、エルフではないッ!!
矢に貫かれて死ねッ!!
数多の英霊と、グリンと、クソゴミ雑魚エルフどもの恨みごとあの世へ持っていけぇぇえ!!
「──────放て」
「
『『『
サティラの号令とエミリアの射撃指示が重なる。
ギリギリと、限界まで弓を引き絞っていたエルフの矢が放たれるその瞬間──────。
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
空挺部隊が地上設置していた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます