第16話「エルフVS空挺部隊」

 エルフ神殿総員──────突撃ぃぃぃぃいいい!!



 サッと、サティラが手を振り下ろす。

 エミリア・ルイジアナを薙ぎ払えと、配下に命じる。



 ───ろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!



 ズンズンズン!!


 武装したエルフの前面にでたゴーレムたちが、声なき声をあげた!

 そして、エルフ達も鬨の声をあげる。



「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」



 さぁ、準備は整った。

 もう終わりだッッ!!


 ここの神官たちを、エルフの里のゴミクズどもと一緒にするなよ!!


 これがエルフだ!!

 彼らこそエルフ!!

 本物のエルフだ!!


「我らが力を、見せつけてやる!!」


 ───突っ込めぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!


 ダークエルフに突っ込んでやれ!!

 グッチャグチャに掻きまわしてよし!!


 その貧相な体を、我がエルフの逸物で刺し貫いて昇天させてやれッッ!!


 いけ!!

 我が精鋭たる神官のエルフ達よ!


 あの卑怯者を討て!!


「───卑怯者のダークエルフめ!! 空から来るなどと言う禁じ手、断じて許されんぞ!!」


 売女のエミリアぁぁぁぁぁぁああ!!

 素っ首切り落として神殿に掲げてやるぁぁぁあああ!!


「あーーーーーーーっはっはっはっはっはっは!!」


 狂ったように笑い、自らも武器を掴むとサティラも突撃を敢行する。

 エミリアをブチ殺す!!


 その意志だけを最大限にして、

 そして、ドラゴンの脅威ではなく、地上を蠢く死霊になら勝てると───。


 なによりもサティラは、神殿前というホームグラウンドで戦えることに勝利を確信していた。


 だが、彼女は知らない……。

 エミリアのアメリカ軍は、死霊たちなどではない。



 そうとも、

 エルフ達は、あまりにも空挺部隊を知らない──────。



 精強無比。

 空挺降下───。


 空挺部隊の降りる地………………そこは常に敵地である。

 彼らは、敵地のど真ん中に降りて戦うことを念頭にした戦闘集団プロフェッショナル───。






 それが空挺部隊だ!!!




※ ※



『A中隊集まれッ!!』

『こっちはC中隊だ!! E中隊は向こうだぞ、さっさと行けッ!!』

『敵は待ってくれんぞ!! 急げ、急げ!!』

『敵、突進してきますッッ!!』


 保護カバーから銃を取り出し、集結中の空挺部隊。

 軽量化された武器の他、従来の陸上装備も潤沢に備えている。

 

 地上には放棄された落下傘が固定バンドで適当に纏められそこかしこに散らかっている。

 そこを所属部隊への合流を求めて兵士が行ったり来たり。

 ある程度まとまって降下したものの、思ったより上昇気流が激しく流される兵も多数いたようだ。


 それもそうだろう。


 なにせ森は焼いたばかりで現在進行形で大森林を焼き尽くしている。

 この近辺に達するにも時間の問題で、エルフの神殿を責めるタイミングはここしかなかった。


「AでもEでもなんでもいいわ───早くッ!! 連中、相当おかんむりよ」


『了解!! 集合完了です!!』

「いいわぁ! 素敵ね──────さすがは私のアメリカ軍」


 バシッ! と敬礼を受け、エミリアはニッコリと微笑み返す。


 機能的にまとめられた各種装備。

 そして、歩兵たちの背後にズラッと並んだ各種の軽砲類。

 

 60mm迫撃砲に、無反動砲バズーカと支援火器も揃っている。


総員オールメン 傾注アテンション


 慣れた様子で彼らの前に立つエミリア。

 彼女の視線はアメリカ軍を向き、背後のサティラ達、エルフの軍勢には目もくれない。


 今にもここに到達しそうな勢いで突進する、巨大なゴーレムを見ても眉一つ動かさないのだ。



私は命令するアィ オーダー───」


 さぁ、

 始めましょうかッッ!!


 すぅぅ……。

「──────薙ぎ払えッゲッリィダ オフ


『『『了解ッッサーイエッサ閣下マァム』』』



 エミリアの命令を受けたとたん、空挺隊員が物凄い速度で動き始める。


散れッムーヴアウト!! 散れッムーヴアウト! 急げぇえハリーアップ!!』


 投下された重量箱を開梱し、中から30口径機関銃ブローニングM1919を取り出すと、装填する間も惜しいとばかりに、ジャラジャラとベルトリンクされた弾を押し込んでいく。


配置につきましたインポジション!」

右に同じッミィトゥ!」


 やたらとガチャつかせで弾丸を装填、突撃破砕射撃の準備を整える。


 その間に、砲兵たちが素早く迫撃砲列をととのえ、すぐに弾薬を準備する。


半装填よしハーフロード!」

半装填よしハーフロード!!」


 全ての迫撃砲に砲員がつき射撃準備を整える。

 互いの声が届く距離だ、観測射撃もクソもない。撃てば必ず当たる距離───。


 半自動小銃M1ガーランドや、ブローニングオートマチックライフルを構えた兵士達は地面に伏せて銃口をゴーレムたちに向ける。


エネミー来ますッインカミィィング!!」


 ジャキジャキジャキ!!


 空挺部隊の全銃口ががサティラ達を指向する。

 先頭は雑多なゴーレムども。


 土や木や石でできているが、かなり巨大で狂暴そうだ!


『距離200mで迫撃砲の一斉射撃、そののちに突撃破砕射撃を開始ッッ』


 各中隊長が、双眼鏡を構えてサティラ達の動きに注視する。


『女が一人つっこんできます!』

「あら、……サティラ?」


 受け取った双眼鏡で確認すると、憤怒の表情でサティラが突っ込んでくる。

 手には剣を背には弓を。そして、精霊魔法の補助を得て、身体能力を強化しての指揮官突撃だ。


「あらら……。あれは私の獲物。だから、なるべく殺さないでね」

了解コピー


 そんなやり取りを知ってか知らずが、


 ズンズンズンズンズン…………!!



 そして、エルフを背後に護る様に、ゴーレムが先陣を切って──────……。


迫撃砲モーター───撃ち方始めッオープンファイア!!」


『『『撃てぇぇぇえファイァァアア!!』』』


『『『『『装填ッッロォォォオド!』』』』』


 迫撃砲の装填手がスコン──────と、60mm砲弾を砲口から落とし込むと、スーーー……と砲身を滑って行き、



 砲身底にある撃針に、点火薬が叩かれたッッッ!!



 ───ガッキィィィィィィイ!!

 ガガガガガガガガガガガキィィィイイン!!!




 一個中隊に4門、

 5個中隊で20門。


 その数の迫撃砲が一斉に火を噴く!!

 修正射など言っている場合ではない!!

 

 目と鼻の先、僅か200m地点にぶち込むのだ!!


 外れようが何だろうが知らんッッ!!!


 敵を粉砕あるのみ──────!

 


「あーっはっはっはっはっはっは!! エミリア──────今、グッチャ」




 チュドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!




 物凄い形相で突っ込んでくるエルフの集団に迫撃砲弾〇〇発が突き刺さった!!


「うぎゃああああああ!!」

「ひぎゃああああああ!!」


「「「ああああああああ!!!」」」


 ドカーーーン、と一瞬にして爆炎に覆われるエルフの集団。

 旨い具合にゴーレムの集団を避けて、その背後に隠れていたエルフどもの頭上に降り注ぐ迫撃砲弾。


 そして、当然それだけで終わるはずもない!!


『『『早く〇〇撃てぇぇぇえファイァァアア!!』』』


『『『『『再装填ッッリロォォォオド!』』』』』



 ガッッッッッッッッキィィィィイイン!!




 ひゅるるるるるるるるるる…………………──────チュドーーーーーーーーン!!




「「「ぎゃああああああああ!!!」」」

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