第15話「エルフたちの戦い」

 だったら、


 死ぬまで・・・・抗って見せろッッ!!


 ───ゴゥ!!

 と、エミリアの絶叫が神殿前に響き、その後ろに続々と空挺隊員が集結し始める。


「さぁ、来いッ!! その命の限り戦い───私を駆逐して見せるがいい!!」


 ───サティラよ、森のエルフ達よ!!!


「……魔族が来たッ!!」


 ドン!!!!


 かなりの距離をおいて相対する両者。


 ダークエルフの巫女エミリア。

 森エルフの神官長のサティラ。


 ついに、最後に決戦を!!!


「エーーーーーーーミーーーーーーーリーーーーーーーアーーーーーーーー!!」


 結構な距離があると言うのに絶叫して対峙するサティラ。

 怒髪天つくとでもいうのだろうか?


 見たこともないほど凶悪な顔。

 まるで般若のごとく怒り狂ったサティラが地団太をふんでいる。

 エミリアがそれを小馬鹿にするようにケラケラと笑うと、サティラが───まーーーーーデッカイ声で、


「クソ売女のエミリア!! ぶっっっっっっ殺してやるぁぁぁあああああああああ!!」


 森と神殿がビリビリと震えるほどの大声量。

 そして、混乱と怒りの中で、サティラは自分が今まで被っていた森エルフの神官長という仮面をかなぐり捨てる。


 そうさ!!!


 そうさ!!!


 そうさぁぁぁぁあああ!!!


 あ、あああああ、あの女!!

 あの女ぁぁぁぁああああ!!


 しつけぇ!!

 しつけぇ!!


 しつけぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!


「───しつっこいんだよ!! この粘着クソダークエルフがぁぁぁぁあああ!!」


 と、まー分かりやすく激高してみせる。


 そして、エミリア達がまだ態勢が整っていないことに気付いたのか、配下の兵に指示をだし、川を挟んで突撃を仕掛けようとした。


「あ、ああああ、あの女ぁぁぁ!! 今度こそグッチャグチャの挽肉にして、男どもの晩飯にしてくれるわぁぁあ!!」


 この、ド粘着ドブスのくそダークエルフががああぁあ!!


 どんだけ、粘着する気だ!!

 何回、私に屈辱を味合わせればいい!!


 お前は、クソ人間どもに嬲られて北の僻地でくたばってればよかったんだよッ!!

 てめぇは、オッサンどもの子種で喘いでいろ!


「ああああああああ!! もうぅぅぅうううううう!!」


 いいさ!

 やってやるさ!!


 舐めんじゃねぇぞ!!

 くそ女!


 そして、グリンの仇を討ってやる!!!


 すぅ

「──────全員、聞け!」


 ザワザワと騒いでいた神官たちにサティラが怒鳴り声を駆ける。


「予定は変わった!! いいか! 予定は変わった!! 見ろッッ!!」


 バッ!! と大袈裟な仕草でエミリアとその周囲のアメリカ軍を指さすと、

「───あれが敵だ!! 我らが母なる森を焼き潰したにっくき敵だ!!」


 そうとも、敵だ!!


「……見ろッ。アレが我らが怨敵、魔族の生き残り───そして、」


 すぅぅぅ……。

「───薄汚いダークエルフの最後の一人!!」


 ならば!!


「……ならばどうする、我らが一族よ!!」


 そうだ!!

 我が一族よ考えろ!!


 たった一つしかない結論を考えろッ!!


 今さら、予定など知るかッ!!


 悠長に、クソ精霊どもの結界がどうのと言ってる場合か!!

 神殿の奥に避難してガタガタ震えていれば難が去ると───??


 ん、なわけねーーーーーーーーーー!!


 だったら、

「───考察せよ、想像せよ、夢想せよ!! 種族の汚点たる、ダークエルフをどうする?!」


 ビシッ! と侍従長に指を突きつけると、彼は一瞬弾かれたようにビクリと震えるが、自分が指定されたことに気付くと、オズオズと手を上げ、


「───だ、断罪だ!」


 そして、おおよその望んでいた答えを貰ったサティラはそれを更に増幅する。

 

「そうだ断罪だ!! 断罪しなければならない。……奴らの罪は裁かれねばならないのだ! 森を焼いた罰。我が神殿に土足で踏み込んだ罰───」


 そしてなによりも、

「ダーーーーーーーークエルフであると言う、生まれついての罰だ!!」 


 ダンッ! と一歩踏み出し、サティラは言う。


「ならば、我らはどうする!」

 若いエルフを指名する。


「殺せぇ!!」───よし!!


「ならば、貴様はどうすべきか!?」

 エルフの騎士を指名する。


「殲滅あるのみ!」───すばらしい!!


「ならば、森のエルフの総意はなんだ?!」

 次席神官長を指名する。


「ダークエルフ滅すべし!」───その通り!!



 ならば、

「───ならば汝ら、全員武器をとれ!! そして、ゴーレムを起動し、精霊に力を乞えッッ!」


 そう。我らが敵を殲滅するのだ!!


「う……うおぉぉお!」

「うおおおお……!!」


「「「うぉぉぉぉぉおおおお!!!」」」



 うおおおおおおおおおおおお!!!



 サティラに乗せられたエルフ神殿の神官や騎士たちが一斉に気勢をあげる。

 そして、ニヤリと笑うサティラに気付かず、侍従長の指示に従い、騎士や衛兵らが優先して武装を準備し、手隙の者も精霊魔法行使の態勢、そして、神殿の守護に遣う、ゴーレムを起動させていった。


 なにせ、ここのいる連中はエルフの里にいるような雑魚どもとはわけが違う。

 騎士や神官は精霊魔法の一級の使い手──────。


 そして、

ウッドエルフの技術の産物───ゴーレムたちよ!」


 ずももももも……!!


 突如土が盛り上がり、人型を形成する。

 さらには、石や木までもが鳴動し始め、徐々に人型を形成していく。


 それも多数!!


「精霊の力をたっぷりと吸った土と木と石よ! ダークエルフの死霊如き、何ほどのことがあるッ!!」


 征けッ!!

 森の守護者たちガーディアンズ!!


「我らが敵を根絶やしにしろ!!」



 エルフ神殿総員──────突撃ぃぃぃぃいいい!!

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