第13話「鷲は舞い降りる」

 グオオオーーーーーーーーーーーン!

  グオオオーーーーーーーーーーーン!

   グオオオーーーーーーーーーーーン!



 無数のC-47スカイトレインアメリカ軍の輸送機がエルフの神殿上空を圧していた。

 それを嚮導きょうどうする先頭機の損傷したB29に座上するエミリア。

 彼女はひどく上機嫌を鼻歌を歌っていた。


 その調べが外部拡声器に乗ってエルフの森の浪々と響き渡る。


『~~~♪』


 ~~♪


 ズンズンズン♪

  ズンズンズンズン……♪



 彼は新兵でヒーワズジャスト ア飛行でさえ怯えていたルーキートゥルーパー


 あいつはほんの新兵で アンド ヒー シュアリー

      飛行シュックにも怯えていたウィズフライト

 彼は自分の荷物を確認ヒーチェックドゥオフ

      結びを確かにしたヒズエキップメント

 あいつは装備を整えてアンド メイド

  念入りに荷の結びをシュアーヒズパック確かめていたワズタイト


 あいつは座ってヒーハドゥトゥーシットあの不愉快なエンジン音アンド リッスントゥー

   を聞かなければゾーズオフルならなかったエンジンズ ロアー


お前は二度とユウアイント ゴナ 降下出来ねえけどなジャンプノーモア!」♪


 血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

      何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ

  血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

       何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ

   血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

        何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ


あいつはもうエンヒィアイント ゴナ 降下しないのだジャンプノーモア!」♪



 ズンズンズン♪

  ズンズンズンズン……♪



お前ら、覚悟はイズエブリィバディいいかハッピィ?」

  と軍曹はクラィド怒鳴ってザサージェント見渡したルッキンアップ


 我らの戦友はオゥヒーロー弱々しくフィビィ

  「はい…」アンサーェスェンド答えゼン起立したソーニィモォ

 彼は凍えるようなヒィジャンプドゥン突風へと飛び出したトゥアイスィブラスト

     金具をかけないヒィストラインクラインままにグヌゴォ───♪


あいつはもうエンヒィアイント ゴナ 降下しないのだジャンプノーモア!」♪


 血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

      何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ

  血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

       何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ

   血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

        何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ


あいつはもうエンヒィアイント ゴナ 降下しないのだジャンプノーモア!」♪



「ジャンプノーモア♪」

 ズンズンズンズン…………♪


 うふふふふふふふふ……。


 エミリアはご機嫌で笑っていた。

 だってそうでしょ?


 魔族領を出て以来、色んな経験をしてきたんですもの。


 初めての川下り、

 初めての海と砂浜、

 初めての大空と───、


 そして、初めての空挺降下スカイダイビング───!!


「あはっ♪」


 損傷したB-29は、よくもっている方だ。

 エンジンが一つ完全に故障していたが何とか安定した飛行姿勢を保っている。


 少々ガタガタと揺れるときもあるが、練達の航空勤務者たちは騙し騙し上手くやっている。


目標上空ですアバウトザゴール

ありがとうサンキュー行ってくるわねアィムゴーイング


 剣よしソード チェック

 銃よしガン チェック

 落下傘パラシュート……よしオールグリーン───。


 乗員が緊急脱出用のハッチに取り付いている。

 滅多に使うものではないが、早々にサティラに会いに行くにはこれしか方法はない。


 一方で周囲を埋め尽くしているC-47は元々そういった用途にも使えるようにと、簡易に開閉できる側扉を供えているらしい。


 すでに周囲の機体は扉を解放し、先頭降下員が降下の時を今か今かと待っている。


 エミリアが飛び出すと同時に彼らも出撃するのだ。



「さぁ、行きましょう───愛しきアメリカ軍よ……」



アメリカ軍

LV3:戦略空軍

   (第二次世界大戦後期型:1945年)

スキル:C-47輸送機スカイトレイン

    空挺歩兵

   (機関銃B.A.R、小銃M1ガーランド手榴弾マークⅡ

    空挺砲兵

   (軽迫撃砲60mmM2無反動砲M1バズーカ拳銃ガバメント

    空挺戦車兵

   (空挺戦車M22短機関銃トミーガン

    空挺工兵

   (騎兵銃M1カービン、梱包爆薬、火炎放射器)



備 考:第二次大戦期に活躍した輸送機。

    C-47は傑作機と称され、

    戦後も軍民で活躍。

        

    部隊は第101空挺師団を基準。

    オーバーロード作戦、

    マーケットガーデン作戦、

    様々な空挺作戦を経験し、

    精強な部隊である。



「素敵だわ……」



 うっとりと周囲を航行している輸送機の群れを眺めるエミリア。


用意スタンバァイ!』


 ガション!! と緊急ハッチが開けられ、猛烈な風が吹き込んでくる。

 エミリアの羽織る黒いマントが、落下傘の留め具以外の場所でバタバタとはためき、瑞々しい肢体が高空の空気に晒される。


準備よしアイムオーケィ


 ぐっ、と親指を立てて乗員たちに示す。


幸運をグッドラック!!』

あなた達もユートゥー


 バタバタバタ…………!!


 ハッチ開放を知らせるランプが赤く灯っている。

 パイロットがそのランプを強制的に、正常値を示す様に電装系をいじり、合図とするそうだ。


目標上空アボゥザターゲット───高度アゥトチュード300m、進路ノゥアー異状なしノーマゥディス


 あぁ、来た──────。

 来てやったぞ、サティラ。


コースよしグッ…コースコースよしグッ…コースコースよしグッ…コォス


 用意スタァンバァイ用意スタァンバァィ用意スタァンバァィ───。


(ふふふふふふふふふ……! 文字通り飛んできたやったぞ。サティラ? さぁ、お前たち自慢の結界とやらはどこにある?───それ・・は大空から来る私達を止めることできるものなのか?)


 うふふふふふふふふふふふふふふふふふ……!


 ブッ、ブッ、ブッ! アラームが低く唸り、ランプの色が怪しく輝く。

 まだだ。

 この色は待機───……赤。赤。


レッドレッドレッドレッド───」


用意スタァンバァイ用意スタンバーイよーいステェンバァイ……』


 ブーーーーーー!! アラームがけたたましく鳴り響く!!

 ランプは青!!


ブルー!」

 エミリアは眼下を覗き込み───。


『───降下ゴー!!』


 降下ゴー降下ゴー!!


 降下ジャンプ降下ジャンプ降下ジャンプ!!


「エントリィィィイイ!!!」


 ドン!! と思いっきり踏み出すと、衝撃を感じるほどの風圧を体に感じ、クルクルと振り回される。

 

 まずい───……。


 エミリアの装着している落下傘はパイロット用のもので、空挺部隊のように自動開傘する落下傘ではない。

 これは手動で解放しなければならない、航空勤務員用の落下傘だ。


 そう、傘の開放はエミリア自らするのだ。


「(く……)」


 見る見るうちに近づく地面。


 ブワッ!! と嫌な汗が噴き出すが──────主導策を思いっきり引き抜く!



 ─────────……ボンッッ!!


パラシュート開放オープン確認カンファメーションッ!」


 異常なしオールグリーン


 背中で傘が物凄い勢いで開き空気を受けていくのが分かる。

 肩がギシギシと音を立てるほどの開傘衝撃をうけるが無事だ。


 足の先には、まだ燃えていない森と、美しい川、そして石造りの神殿が見えた───。

 その先に、集まる多数の人影。


 彼らは驚愕に目を見開いていることだろう。

 それをもう少しで、間近で見ることができる。


 うくくく……。

「あはははははははははははは! 空を飛ぶのって気持ちいわね───」


 余裕を感じさせるように、エミリアはゆっくりと周囲を振り仰ぎ、空に咲いた多数の落下傘と、空挺隊員の頼もしい姿を見る。



 あいつは大きくヒィカニモォン長く数を数えてヒィカニモォン

          衝撃にヒィウェィ備えていたフォゥザショック


 あいつはヒィフェルトドゥウィンドゥ冷気ヒィフェルトヅコゥド

  そして、ヒィ不快な落下感をフェルトオゥフ感じていたドロップ

 背嚢からザスィン飛び出て広がる布はフォームゲゥズ

        彼の足にラウドロゥド纏わりついたヒズレグス


お前は二度とユウアイント ゴナ 降下出来ねえけどなジャンプノーモア!」♪


 血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

      何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ

  血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

       何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ

   血塗れの、ゴーリ血塗れのゴリ

        何たるワットアヘルオブ死に様だウェイトゥダイ


あいつはもうエンヒィアイント ゴナ 降下しないのだジャンプノーモア!」♪


 ズンズンズン♪

 ズンズンズンズン……♪



 ───さぁ行こう。


 今宵は、森のエルフ達最後の日だ───。


 私は容赦などしない。

 慈悲など与えない。


 滅びるのが、嫌?


 だったら……、

「─────だったら、抗って見せなさい!」




 私達魔族の様に!!

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