第11話「空戦」

 ズダダダダダダダダダダダダダダダ!!


「ひぃ!!」


 突如、そいつが火を噴きグリンを狙う。


「なによ! なんなのよ!! 飛竜なのぉ?

そいつはぁぁ?!」


 サティラはグリンの飛行を誘導するのをやめ、彼自身が飛ぶに任せる。

 彼女の指示で飛ばすよりも!ずっと安全だろう。


 だけど!!


 グォォオォオオオオオオオン!!!


 ───速い!!


「ダメ!! 直線飛行では負けるわッ! グリン、地上スレスレを飛びなさいッ!!」 


 くるるるうう!!


 ズダダダダダダダダダダダダダダダダン!


 光の奔流がすぐそばを掠めていく。

 そのうちに一発が掠っただけでグリンの尻尾が弾け飛んだ!


 くるるるぅぅうう!!!

「ひぃ!!!」


 痛みでグリンが身を捩るが、さすがはグリフォン! 大空の覇者だ!

 グッと耐えて、飛行姿勢を安定させる。


「ご、ゴメンね! ゴメンね、グリン!──あとで間抜けな人間かドワーフをご馳走するから」


 グォォォオオン! と2000馬力級エンジンを唸らせながらP-51がサティラの脇を掠め飛んでいく。


 動きは素早く、炎も強力だが───……。


 落ち着け。

 落ち着きなさい、サティラ。

 奴の動きを観察するのよ……!


 ッ?!

「───柔軟性に欠けるのね?!」


 そうとも、いける!


 コイツは直線飛行なら他を圧するが、旋回性や急な方向転換についていけないようだ。


 ならば、

「───グリン! ジグザグに、トリッキーに飛ぶのよ。そして、森に……! まだ燃えていない木々の間まで逃げ切って───」


 そうすれば神殿にたどり着ける!

 神殿なら迎え撃てる!!


 あの女を殺せる!!


「飛んで、グリン──────!!」



 ズダダダダダダダ!! ズダダダダダダダダダダ!!


 まるで威嚇するように次々に炎がサティラを掠める。

 こ、このままでは、いつか喰いつかれる───……。


 まだ地上は遠い───!

 遠すぎるッ!


 神殿は遥か先………………いえ! 見えたッ。


 あは!

 私の粘り勝ちのようね。


「これでも、──────喰らえッ!」


 ギリリリリリ…………カィン!!


 役立たずだったミスリルの鏃を、P-51に向け発射!

 

 そいつが何と真正面に命中─────……キィン♪


「な?! ばかな!! ミスリルよ───きゃあ!!」


 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!


 プロペラに当たり跳ね返されたサティラの矢。

 そして、お返しとばかりに12.7mm機関砲をこれでもかとぶち込まれる!!


 それをまともに浴びるグリフォン───。


 翼が弾け飛び、後ろ足も二本千切れた。

 だが、まだ飛べる──────!!


「グリンッ!!」

 くるるるるる……───!


 フラフラとした飛行姿勢で飛ぶグリンに、P-51がトドメの一撃を加えようと機位を射撃位置に持ち直すも──────。



『ち……!!』



 エミリア的にはあと一歩───。サティラ的には間一髪と言った感じで、グリフォンの巨体が森の中に沈んでいった。


 この辺はまだ燃えていない。


 そこについでだと言わんばかりに、P-51マスタングが森をバリバリバリッ! と地上掃射するも、

『あれくらいで、くたばる女じゃないわね』


 拡声器のハウリング音を残してB-29が上空を飛んでいった。

 機内では、エミリアが残念そうな顔で、機長席にドッカリと座りなおしていた。


 ※ ※


「ま、元々空で仕留める気はなかったからいいんだけどね」


 負け惜しみでもなんでもなく、エミリアはそう思っていた。


 そうだ。

 落下死なんて生温い。


 サティラもこの手で殺す。

 くびり殺してやる。

 ロベルトの時どうように、自らの手で仕留めないと、誰も浮かばれない……。


 魔族も、

 ダークエルフも、

 そしてエミリア自身も───。


「ふふ。……じゃ、エルフの大神殿とやらに行きましょうか───皆、ありがとう」

『『『問題ありませんノープロブレム』』』


 B-29の乗員からパシリとした敬礼を受けると、エミリアは彼らに渡された落下傘を背負う。


 使い方のレクチャーは受けたし、Lvが上昇して、彼らの知識がドンドン流れ込んでくる。


 拳銃コルトガバメントを手渡され、一応予備の弾と共に、足に装着するホルスターに収めた。それ以外はエミリアを覆うものは黒いマントのみ。


 抜き身のままのオリハルコンの大剣を、落下傘を固縛する空きスペースにねじ込むと、いっぱしの落下傘兵のようにも見える。


「さぁ、おいでなさい───愛しきアメリカ軍よ……。共に舞い降りましょう」



 エミリアが魔力を流すと背中の入れ墨が怪しく輝く。


 『ア&%$#』



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!


 『USゲート』が開き、中から中型の航空機が次々に飛び出してくる。


 B-29程の大きさではないが、それらが無数に!


 無数に!!


 ───無数に!!!!


 グォォーーーーーーーーーーン……!

 グォォオオーーーーーーーーン……!!


 グオオーーーーーーーーーン……!!!!


「ふふふふふふふ…………待ってなさい、サティラ」



 飛んでいく。

 すぐに行く。


 あなた達を根絶やしにするために、ダークエルフが舞い降りるわよ。



「だって、あなた達が始めたんでしょう?」

 

 魔族を根絶やしに───。


「だったら、覚悟しないとね───仕返しされることを!!」

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