第10話「空をかける獅子と駿馬」
周囲が焼け野原になり、地上でウロチョロしていた雑魚エルフはどこかに消えた。
残るは砦にいる若いエルフ達だけだが、彼らの運命とて地上にいたものとそう変わるものではない。
いくら木が巨大であっても、しょせん木は木である。
既に入り口付近には延焼が起きており、じきに木全体が燃え堕ちる事だろう。
哀れな若いエルフとともに───。
「ふふふふ。おバカな子たち───わたしがどうやってドワーフどもから武器を買い付けたと思っているの?」
こんなに短時間に往復できるとでも? 魔法で走ってきたとでも───?
まさかまさか……。
……そんなのはカラクリあってこそよ。
それが、これ。
私の足であり───。
エルフ神殿に居わす、神官たちの守り手、
「───グリフォンよ!」
ザァン!! と突如、枝葉を揺らして巨大な影がサティラの元に。
「ぐ、ぐぐぐ、グリフォン?!」
「な、なんでこんなとこに!」
クルルルルルルルゥ……。
グリフォンは甘えるようにサティラに喉を見せる。
まるで、飼いならされた猛禽だ。
「安心なさい。この子は私の友達───人を襲うことはないわ、…………滅多にね」
よしよしと喉をかいてやるサティラ。その表情は慈母の如し……。
「おお! こ、これで我々も避難できるんですね?!」
「やったー!! 助かったぞ!」
「……………は? 何言ってるのかしら? これは私専用よ?」
「ありがとうございます。サティラ……え?」
ん?
え?
あれ?
「えっと、……さ、サティラ様はそれで神殿へ?」
「そうよ。そろそろここも危ないわよね」
「わ、我らはどうすれば?」
「さぁ?」
「「「………………」」」
「要件がないならもう行くわね。お疲れ様」
「ちょ、ちょちょちょちょ!! 乗れる、乗れますよね!? だって、そんなに大きい───」
ぶわさ!!
と存外軽い羽根音でグリフォンが舞い上がる。
サティラをその背に乗せて───。
「ひゃあああああ!! 高い高い高い!!」
だが、そう簡単に若者たちが諦めるはずがなかった。
グリフォンの足や尻尾や腹にしがみ付き、一緒に空へ。
「あら? 定員オーバーなんだけど……。グリン、お腹空いてない?」
くるるるるる。
少し物悲しげな声、ウルウルとした瞳でサティラを振り返るグリフォンことグリンに、
「オヤツ食べていいわよ」
くるるる!!
パク…………。
「ぎゃああああああああああああ!!」
グリンは腹にしがみ付いていたエルフの若者をヒョイっと嘴で摘まみ上げると、パクンと一飲み。
ついでに足と尻尾にしがみ付いていたエルフもパクパクと───。
くるるるるぅぅ!!
「はいはい。美味しかったわね───……いい子、いい子」
ポンポンと首筋を撫でてやるサティラ。
彼女背後、そして、眼下の森は燃え盛っていた。
だが、彼女の向かう先は大丈夫。
泉と河と精霊に護られたエルフの大神殿は、火災にとっても強いんです。
「森──────燃えてるなー」
やれやれと言った表情でサティラは飛んでいく。
彼女の眼下にはじきに大神殿が姿をみせるだろう。
ほんと、空を飛ぶって素晴らしい。
空を飛ぶって素晴らしぃ♪
空を──────……。
グウォオオオオオオオオオオオオン!!!
「え?」
え?
「何、今の───……」
何か素早いものが一瞬だけ、チラっと───……。
グウォォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
う、後からッ?!
「なにが…………って!」
サティラの目に飛び込んだもの。
そこには、フラフラとした飛行姿勢で、黒煙を吐きつつも何とか飛んでいるB-29が一機。
あれは、エミリアだろう。
どれほどのダメージを与えたか分からないが、あまり長くはなさそうだ。
美麗な銀色の翼に、竹槍が深々と突き刺さっている。
それはいい。
エミリア・ルイジアナ死すべし!!
だが、
「な、なによ、そいつ───」
キュィーン……。
『あはははははははははは、やるじゃない、サティラ! まさか、B-29に竹槍で挑むなんて、ちょっと見直したわ』
ハウリング混じりの大声。
白銀の巨人機。その突然の存在感に、グリンがビックリして飛行姿勢がふらつく。
だが、それよりもだ!
B-29の前を飛ぶのは小さな……鳥?
いや、鳥にしてはなんだか……。
「そ、そいつはなんなのよ!!」
『私の愛しいアメリカ軍───』
アメリカ軍Lv3:戦略航空軍
(第二次世界大戦後期型:1945年)
スキル:P-51マスタング
備 考:第二次大戦末期に活躍した戦闘機。
長大な航続力と高速を誇る傑作機。
また空戦能力も高く、ほぼ無敵。
ブローニング重機関銃で重武装。
大戦末期、動く物は何でも銃撃した
そう、空のキャデラックこと。
銀翼の空駆ける機械仕掛けの駿馬───!
『P-51マスタングよ!!』
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