第9話「竹槍 VS B29」

「─────って、竹槍ぃぃぃいいい!!」


 それだ!!

 それだ!!


 それだぁぁあああ!!


 あのドラゴン相手に矢では小さすぎる。


 地上で燃え盛る炎に追い回されて、老人たちが逃げ惑う。

 その中にいた竹槍持ちにサティラが呼びかける!!


「そこのぉぉおお、その竹槍もってとっととここまで上がってこい!!」

「へひゃ?!」


 地上30mの巨木の階段をご老人に?!


「そうだ、お前だ! 早く走れ、ダッシュだ、ダッシュ! それがお前の全力かぁぁぁあ?!───命を捨てる覚悟で竹槍持ってこぉぉおいい!!」


 その間にもどんどん、どんどん森は燃えていく。

 母なる大地と父なる森が燃えていく。



    焼夷弾が容赦なく燃やしていく。

   超空の要塞が燃やしていく。

  エミリアが燃やしていく。


 

 燃える燃える燃えるエルフの森。


 だけど、まだだ。まだ終わらん!!


「当たらなければ、どうと言うことはない!!」

 

 この巨木がそう簡単に燃え落ちるものか!!

 まだ時間はあるッ!


「森を焼いた大罪人、エミリア・ルイジアナ───貴様を絶対に討つ!!」


 だから、さっさと竹槍持ってこんかい!!


「──────ぶひーぶひーぶひー……さ、サティラ様、た、竹槍です」

「遅い!!」


 ゴキィ!! と、老人の顔面を取りあえずぶん殴っておいて、サティラは竹槍を構える。

 老人が鼻血を出してぶっ倒れてるが知らんッ。

 お前の人生は今ここで竹槍を持ってきたことで最高の時を迎えた、あとは知らんッ!


「さぁ、これならエルフの矢のフニャ〇ンと違って、太くてデッカイわよ!」

 よがらせてあげるわ、エミリアぁぁぁあ!

 何本も咥えこんできたアナタなら大満足してくれるでしょうよ!


 あーーーーーはっはっはっはっは!!


「サティラさま、そのような槍ををどうやってあの空まで?!」

 ふ……。

「私を誰だと思っているの?」

 勇者パーティの弓の名手───そして、精霊使いのサティラよ。


 弓でなくとも、ようは投槍の要領だ。

 やってできないことなどない!!


 そして、丁度いいことにここにはいい魔力タンクがある。


 そう、

「……さぁ、お前たち───この私、神官長サティラに力を貸すのです。一滴の余裕すらなくすほどに、私に魔力を流し込むのです!」


 テメェらが魔力切れで卒倒しようが、知るか。


「さぁ、さぁ、さぁ!!!」


 ハリー!

 ハリー!

 ハリーアップ!!!


「「「は、はいいい!」」」


 ふんッッッ!!


 ドッスン! と腰を落としこんだサティラ。

 美しきエルフの神官サティラが女性にあるまじき恰好───蟹股で踏ん張って全身の筋肉を竹槍につぎ込んでいる。


 そして、精霊の力を竹槍と自らの筋肉へと流し込む。


「精霊よ───我が肉体に力を。そして、汝の力を我に!!」

「「「「汝の力へ───」」」」


 精霊よ──────!!

 エミリア・ルイジアナに鉄槌を!!!


 太くてデッカイのを一発ぶち込んでやりましょうッ!


 さぁ!!!


 ビキ……ビキ……!!



 ビキキキキ……!!


 ブシュウウ……!!


 筋肉が増強され、渾身の力を籠めるサティラ。

 その肉が弾け、血管が千切れて血が噴き出す。


 だが、止まらぬ。

 止めてなるものか!!


「───……これが私の怒りだ!!!!」

 これが森の民の怒りだ。

 私の怒りが森の民の代弁だ!!


 そして、お前は大便だ!!

 死ねッッ。くそ売女ビッチ!!!


「一発ブッといのでヒーヒー言わしてやるわよぉォぉお!───おらぁぁぁああ!」


 怨嗟と共に、サティラが腕を振り抜くと──────!



 ギャァン!!!!!!!!!



 白銀に輝く竹槍がB-29へと──────着弾!!!


 ズガァァァァアアアン!! と激しい破壊音がここまで響くほど。

 4発あるエンジンのうち、一つに命中し、それを完全に破壊していた。


 まさか、竹槍でB-29を撃墜するというのかッ?!


「は、はは。はははははははは! 見ろッ! 届いたぞ。私の刃が届いたぞ!!」


 だから、私の勝ちだ!!

 そして、私の勝利だ!!

 これが、私の勝鬨だ!!


 わははははははははははははははははははははははははは!!


 あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!


「さ、サティラ様ぁぁぁあ! もう逃げ場がありませんよ───!」

「サティラ様ぁぁぁあ助けてください!!」


 わーわーわーわーと大騒ぎするエルフたち。

 せっかくの勝利の余韻に水を差す無粋な連中───。

 ……なるほど。さすがに火災が強すぎて巨木と言えど燃え尽きようとしている。

 延焼は免れ得まい。


 ───だが知るかッ。

 サティラはサティラで、ゲラゲラと狂ったように笑うのみ。


「げぇーーーーはっはっはっはっは!!」


 もはや森は大火災を起こし止める術はない。

 早晩、この一帯は焼け野原となり、精霊は散ってしまうだろう───。


 だが、それはこいつ等だけだ。

 バカで雑魚・・の森エルフどもだけ。


 私こと、サティラをこいつらと一緒にしてもらっては困る。

 そんなことよりも、


「あーっはっはっは! エミリアに一泡吹かせてやったわッ!」


 それだけ言うと、サティラはニンと口を歪ませる。

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