第3話「超空の要塞」
ゴオォォォォォオン!
ゴォォォォオオオン!
空気の希薄な高空を、銀色に輝く巨人機が滑るように飛行していた。
「ほぅ…………。温かい」
エミリアは乗員に渡されたコーヒーを抱くように抱え持ち、チビチビと啜っていた。
与圧が効いているとはいえ、さすがにマント一枚だけの薄着では高空の寒気は排除できない。
実際、機内の乗員は全員が仕立てのよいスカイジャケットを羽織っていた。
それを尻目にガチガチと震えているエミリアをみかねて、先ほど気を利かせた乗員が温かいコーヒーを注いでくれたのだ。
その温かさの沁みること!!
『目標上空───現在偵察中……かすかに、集落らしきものが見えますね』
「そう? どれかしら?」
機首の偵察員席から声をかけられて、エミリアは機長席から立ち上がる。
『あちらを───』
手渡された双眼鏡を手に、偵察員が示す示方向を確認──────……なるほど、集落がある。
畑や日照確保のために、樹冠を切り開いているらしい。
完全に木々で覆われてしまえば、日光が遮られて食物は育たない。
そのため、大森林のエルフ達は枝葉を刈り取り、陽光を取り入れているのだろう。
ゆえに集落の位置は、
「一番大きな集落ね。高度を落とせる?」
『
ウウウウウウウウウウウウウンンン……。
身体にほとんど感じない程、緩やかに旋回を始めた機体。
いや、違うか───巨大すぎて、感覚が狂うがそれなりに急角度で旋回しつつ緩降下しているのだ。
「いいわ──────……見えた。間違いない。森エルフの集落よ」
双眼鏡のピントを合わせつつ、エミリアは壮絶な笑みを浮かべた。
そして───。
あら……?
あら、あら、あら……!!
あーーーーーーーーーーら!!!
あーらららららららららららら!!
「───サティラ、みーーーーつけた♪」
それは僥倖?
いや、違う──────必然だろう。
一番大きな集落に権力者がいてもおかしくはない。
そして、見晴らしの良い場所で、皆に注目されそうな一にいることも、全くおかしなことではない。
偶然どころか、見つけて当然だ。
そう、このエミリア・ルイジアナが見つけたのだ。
ならばどうする?
それならばどうする?
───私ならばどうする?
決まっている……。
決まっているじゃあないか!!
「───じゃあ、はじめましょうか♪」
『了解! 高度2000mで水平飛行───爆弾倉開けッ』
ウィィィィィィイイン───。
ゴギギギギギギギギギギギギギ…………。
電動駆動、そして、重々しい開放音が機首まで伝わってくる。
外から見れば銀色の機体の腹が開き、まるで魚卵の様にびっしりと黒いものを抱いているのが見えるだろう。
黒いもの──────それは多数の小弾を詰め込んだクラスター爆弾。
E46集束焼夷弾である。
これは内部に前後2段に19本ずつの角型焼夷弾のM69小弾を集束し、38発を一梱包にまとめた爆弾である。
そして、これを腹にびっしりとE46集束焼夷弾で計40発───小弾のM69焼夷弾をトータルで1520発もの数を詰め込んでいるのが──────。
ブゥン……!
アメリカ軍
Lv3:戦略航空軍(WW2後期型:1945)
スキル:B-29
(
備 考:第二次大戦末期に活躍した爆撃機
当時としては活気的な与圧式機体
長大な航続力と大容量の爆弾倉装備
無数の機銃で防御し、成層圏を飛行
多数の都市を焼き、
戦略爆撃の威力を見せつけた……。
うん、こんなの撃墜するとか無理。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
そう、かの名高き爆撃!!!
エミリアが搭乗する、ボーイング社製「B-29」
うふふふふふふ……。
あはははははは……。
アーハッハッハッハッハッ!!
すぅ……。
「──さぁ、エルフの森を焼きましょう!」
ニッコリ……!
エミリアはとてもとてもいい笑顔をしていたとか───。
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