第10話「エミリア、帝都に立つ」

「あはははははははは!!」


 あはははははははははははははははは!!


 エミリアはご機嫌で笑い続ける。


 だってそうでしょう?

 おっかしいんですもの───。


 ドラゴンライダーズ?

 あは! あの程度の連中が、帝国最強で最精鋭をほこる飛竜部隊なんですもの。

 最強なんですもの。

 雑魚なんですもの。


「あはははははははははははは!!」


 コロコロと笑い、黒いマントをフワフワと海風に靡かせるエミリアは、美しく妖艶だった。


 既に帝都は艦砲射撃をうけ、爆発炎上している。

 だから、戦艦の援護射撃は終了していた。

 もちろん、味方への誤射をも考慮している。


 戦艦の主砲は強力無比!!

 上陸支援としては過剰なまでの火力も、止んでしまえばあっと言う間だ。


 ゴウゴウと燃え盛る帝都の音と、海兵隊の怒号以外は静かなもの。


 あっという間に無血上陸を果たした海兵隊は、既に支配地域を奥へ奥へと広げ、安全地帯となった海岸に次々と物資を揚陸している。


 積み上がる弾薬箱。

 仮設陣地に引き込まれる軽榴弾砲。

 揚陸されていく軽戦車。


 そして、彼らが万全の態勢を整え、海岸でエミリアを出迎えてくれた。


 海岸の手前で停止した水陸両用車両LVTから飛び降りるエミリア。


 バシャリ!! と、足に感じる海水が実に気持ちよかった。



 あぁ、気持ちいい─────……。



 バシャリ、バシャリ! と、海をかき分けエミリアは砂浜へ向かう。

 ハタハタとマントをはためかせ、艶かしい肢体をチラチラと晒しながらも、悠然と歩く───。


 誰にも邪魔されることなく、魔族が悠々と帝国のお膝元に上陸しているのだ!



 来たよ。

 父さん、母さん。

 ダークエルフ里の皆───。

 


「エミリアは来たよ───人類の最奥へ……」


 触れることも敵わぬ最強国家帝国の首都へ……。


「私は来た。私が来た。私も来た!!」


 魔族と共に、


「───多くの英霊とともに!!」


 すぅ……、

「人類よ!! 魔族わたしが来たぞッ!!!」


 ザッ!!


 遂に砂浜を噛んだエミリア。

 暖かくさらさらとした感触を足裏に感じ、ついに乾いた大地に……。


 そして、人類の支配地域へと魔族エミリアは到達した。


 史上初───……。人類は魔族の侵攻を受けることとなる。

 そして、


 今日をもって、

「───滅びの時は来たぞッ!!」


 思い知らせてやる。

 私達の思いを!


 虐げられ踏みつけられた者たちの悲願を!!


「さぁ、さぁ、さぁ!!!」


 滅びが来た。

 私が来た!!


 お前たちの悪夢が来たぞ!!


「滅びるのが嫌ならば──────!!」


 ザッザッザ……。

 無防備に帝都に身を晒し、砂浜を越えるエミリア。

 そして、浜と帝都を分かつ堤防の上に立つと、ザァ! と広がる帝都を見渡すッ!!



「───抗って見せろッッ!!」



 バサァ!! とマントを翻し帝都を圧倒するエミリアはたった一人で立ってみせた。

 

 魔王軍最強───魔族最強の戦士として!

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