第11話「鉄槌!!」
「りゅ、竜騎兵が──────ぜん……消滅?!」
顎が外れんばかりに、口をあんぐりと開けたギーガン将軍。
帝都から
「は、はい……海上を監視していた他の憲兵も確認しております」
そして、言う。
「さらに、そのぉ……。て、敵は多数の兵を伴っており、
「何ぃ!!」
そんな報告は初めて聞いたぞ?!
「馬鹿な! はやい、早すぎる!!」
早すぎるぞ!
いくらなんでも、早すぎる!
たしかに、竜騎兵の物見から上陸部隊の存在は聞いていたが、発見から占領までの間がほとんどない。
竜騎兵にしても、さっき出撃したばかりである。
「き、貴様ぁ、嘘をいっているのではあるまいな?!」
「う、ううううう、嘘ではありません!! 現に、すでに敵は帝都へと侵入し───」
「な、なんだとぉ!!」
ばかな! ばかな! ばかな!!
「───き、貴様ら憲兵はそいつらを止めるのが仕事であろうが!! いったい今まで何をしていた!!」
自分の失言に気付いた憲兵は真っ青になる。
そりゃあそうだ。
帝都の治安維持が役割の憲兵が、帝都へ敵の侵入を許している。
しかもコイツの言い草からすると、抵抗らしい抵抗はしていないようにも───……。
「いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ! め、めめめめ、滅相もありません! わ、わわわわ、我が憲兵隊は果敢に反撃し、敵の侵攻を帝都内で食い止めておりますぅぅぅうッッッ」
だらだらと汗を流しながら、ブンブン首を振る憲兵。
「なぁにが抵抗だ!! それは何もしておらんのと同義じゃあああ!!!」
ブァキィィィイイン!! と憲兵を殴り飛ばすと、ギーガンは肩をいからせて司令部から出る。
「集まれ、将軍ども!!」
陣内全てに届かんばかりの大声を張り上げると、すぐさま近傍に控えていた将軍たちが集合する。
軍議のために、彼らは司令部付近で待機していたのだ。
「第1師団長、ここに」
「第2、第3師団もおりますぞ」
「各旅団長も参りました」
ざざっ! と敬礼する将軍のお歴々。
その素早い動きに満足げに頷き返すと、ギーガンは喧しいほどの声量でがなり立てた。
「貴様らも知っての通り、敵───薄汚い魔族の小娘が帝都を襲っている」
ふむふむ、と頷く将軍たち。
「卑怯にも小娘は多数の死霊を操り、我らの裏をかいて海岸から侵攻を開始した───由々しき事態である」
裏をかくのが卑怯かどうかはさておき、状況は既に将軍たちも独自に集めた情報から知っていた。
そして、竜騎兵が破れたことも───。
「……状況は最悪である。もう一度言うが、最悪である!!」
そうとも、最悪だ。
守るべき帝都は灰塵に
ならば、
「だが、我らは意気軒高───。軍団は幸いにも無傷である。……諸兄らに問う!!」
我らの首都。
母なる帝都。
「皇帝陛下のお膝元を、汚らわしい魔族が犯そうとしている───。いや、すでに犯されているのだ!! ならば、我らのすることは何だ!!」
ダン!! と一歩踏み込み、将軍たちを順繰りに指さす。
「奪還だ!!」
「殲滅するのみ!」
「魔族討つべし!!!」
「「魔族に死をッ! 帝都を取り戻せ!」」
ワッ!!
と、一斉に沸き返る場に、満足げに頷くギーガン大将軍。
「よろしい!! ならば、反撃だ! 諸兄らはすぐに攻撃準備せよ!! 後尾の第10旅団が最も近い。すぐに突入し、魔族を駆逐するのだ!!」
「ハッ!! お任せを!!」
バシッ!! と綺麗な敬礼を決める第10旅団長。
初老の彼は、出世コースを逃し、将軍職を近く退いていた。
しかし、今回の動乱に合わせて急きょ編成された旅団に将軍として配置され、帝都を守る予備部隊となっていた。
精鋭の第1師団~第3師団は帝都正面の前線に配備され、市民兵や予備役を招集した臨時旅団はもっぱら予備として、後続の部隊であった。
だが、エミリアが海岸から上陸を開始したため一転して最前線になってしまったのだ。
今から軍団の配備を変更することは困難であり、やったとしても、時間がかかるうえ、混乱を広げるだけだろう。
そもそも、たかが魔族の残党という思いがあり、ギーガンを含め、帝国側の将軍はエミリアの戦力を侮っていた。
それがために、予備部隊から戦線に投入すると言う愚を犯していることにこの時はまだ気付いていなかった。
「我が旅団が、必ずや魔族を駆逐してご覧に入れましょう!」
そういって、すぐに踵を返し、自らの旅団を率いるために去っていく彼を見送りながら、
「では、諸兄らもすぐに準備せよ! 第10旅団だけで十分と思われるが、念には念を。順次帝都に入り魔族を掃討するのだ!!」
「「「「ハッ! お任せを───」」」」
全将軍の敬礼を受け、自らもゴツイ腕をもって返礼しようと──────……。
その時、
グォォォォオオオオオオオオオオン……。
グゥゥオオオオオオオオオオオオオン!!
突如、空を圧する轟音が鳴り響いた。
※ ※
「なんだ? 何の音だ?!」
ギーガンは上空を仰ぐ。
すると、陽光を塞ぐ多数の黒い影───。
「ドラゴン?」
「竜騎兵隊ではないでしょうか?」
そうだ。
たしかにドラゴンの咆哮の様にも聞こえるが……。
「しかし、竜騎兵は全滅したと───」
将軍のお歴々も首を傾げる。
「……憲兵どもめ! いい加減なことを言いおって!!」
だが、ギーガンはただただ憤慨していた。
不甲斐ない憲兵の態度もそうだが、情報は虚偽だらけであると!
「ええい! 飛竜部隊に決まっておる!! 我が軍の飛竜部隊が、早々全滅してもたまるか!」
そんなことができるのは勇者か、天上におわす神々くらいなもの───。
「そうですな。おそらく、海上の敵を殲滅して、意気揚々と帰って来たのでしょう。もしや我らの仕事は既にないのでは?」
「「「「わはははははははははは!」」」」
頼もしげに笑う将軍たち。
だが、
「お、おい……。あれ、本当に飛竜か? ワシの目が曇っていなければ、飛竜の姿には見えんのだが───」
飛竜部隊に所属していたこともある将軍の一人が、首を傾げる。
そして、さらによく見ようと目を凝らすと、飛竜の様なそいつらが帝都正面に布陣する軍団の上空に差し掛かり、
ひゅるる………………。
「なんだ? 糞……??」
そう。
飛竜の様なそいつ等は腹からバラバラと何か黒いものを落としていった。
あろうことか、軍団の真上で糞を───。
チュドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
帝都正面に布陣していた、10万を豪語する軍団が今まさに爆発した。
ヨークタウン級空母から発艦した、大型爆弾を懸架した
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