第8話「敵前上陸」

 ザァァァァアッァアアン!!


 ズザァァッァアッァアン!!



 ノースカロライナ級が、海を割りながら進む。

 巨大な四万トン級戦艦が、船首で海を盛大に切り裂き進む様は、実に圧巻であった。

 そこに、寄り添うようにして進むのは、海兵隊の上陸用舟艇───他に水陸両用車輌も併走している。


 それらの背後では、4隻の戦艦群が帝都に向け、何度も何度も艦砲射撃を繰り返していた。


 ズドン!

 

 ズドンッ!


 と、腹に響く音が空と大地を圧している。


 そして、帝都───。


 エミリアの視線の先の帝都は、ゴウゴウと燃え盛り、まるで魔女の釜だ。


 あの威容を誇っていた皇城は、まっさきに崩れ去り、今や基部がむき出しになっている。

 市街地に至っては、巨大な拳に殴られでもしたかのように、あちこちにクレーターが開き、そこから真っ黒な黒煙をふき出している。


 これから向かう砂浜にも、多数の砲弾が落下し、漁船や係留設備などが木っ端みじんに吹き飛ばされていた。


 そこかしこで、濛々とした煙が立ち込め、あそこで生きている人間がいるなんて、とてもじゃないが信じられないだろう。


 エミリアはその光景に、ニコニコと笑いながらみつも、時折うっとりとした表情をみせる。

 今も、ほら!

 着弾の度に何か・・が、派手に打ち上げられるのを見て下半身を疼くのだ。


 くぅ……♡


 見るものがいれば、彼女の顔をみてゾクゾクとしたことだろう。


 色気を感じさせる声で、体を火照らせるダークエルフの少女……。


「あぁ……。あぁ……♡」


 燃えている。

 燃えている───!


 あの帝都が燃えている!


 あの人類最強国家の首都が燃えている。


 あの魔族を殺した元首のお膝元が燃えている。


 なんて、

 なんて、


「───なぁぁんて、胸のすく光景ッ!!」


 いいわぁ。

 嬉しいわぁ!!


「もっと! もっと!! もっと!!」


 ───もっと榴弾を!!

 ───もっと榴弾を!!


「もっと榴弾を!!」


 奴らのねぐらに、16インチ砲弾をぶち込んでやれ!!


「───わたしに、散々ぶち込んだんだ!」


 だから、お前たちにもぶち込んでやるッ!


 さぁ、さぁ、さぁ!


さぁナァウ──────!!!」


 撃てッファイア

 撃てッショット!!

 撃てッアタック!!!


ドンドン撃てファイアウェイ! ドンドン撃てファイアウェイ!! もっと撃てぇぇえキープファイァァア!!」


 ドカン、ドカン、ドカン!!!


 次々に立ち昇る火柱。

 もはや、撃ち漏らした場所などどこにもないと言わんばかりに!!


「あははははははははは!! 帝国が燃えている!! 帝国を燃やしている!! 帝国は燃えているぞぉぉぉおお!!」


 あーーーーーっはっはっはっはっはっは!


『閣下!───上陸3分前!! 我が艦は座礁します!』

 

 キュィイインとハウリングを流しながら、艦内放送が流れる。

 ……なるほど、この巨大船だ。


 港でも、なんでもない砂浜にそのまま上陸できるはずもなし。


 だが、それでいい。


 これは威嚇だ!

 この巨大戦艦を帝都の前に乗り上げ連中のド肝を抜いてやるッ!!


「上陸用意! 艦は支援よ!」


 エミリアは美しい笑みを見せると、眼下にいる海兵隊員を見送る。


 速度を落とし始めた戦艦を追い抜くようにして、多数の上陸用舟艇と水陸両用車が白波を蹴立てて砂浜に向かう。


 さぁ、地獄の始まりはこれからよ───。


 精々抗って見せるがいい人類ッ!!


 そして、

「賢者ロベルト───……この程度で死んでもらっては困るからね」



 うふふふふふふふふふふふふふふふふふ。



「あはははははははははははははははははははははは!!」



 ケラケラと笑うエミリア。

 そうして、ようやくエミリア達は帝都に敵前上陸を果たす───。



 ズン……!!


 ズズズズズズ……。


 小動する戦艦。

 どうやら船底が砂浜を削っているのだろう。


 質量と運動エネルギーだだけで強引に乗り上げていく。


 波を受けない砂地はもう目と鼻の先───。


 海兵隊員は一足早く砂浜に取り付く……。




命令するアイオーダー───帝都をデストロィ ザ 滅ぼせインペリアル キャピタ


『『『『我々にイエスウィお任せをキャン!!』』』』




 ズザザァ………………ッ!


 波を割り、水の中に砂が混じり、スクリューとともにかき回される様子がまざまざと見えた頃、



 先頭船舶──────……達着ッッ!!


 上陸用舟艇の先端が砂浜を齧り、僅か先の乾いた地面を睨む。

 そして、それを目掛けて上陸用舟艇の先端が───ぱかりと前に倒れたッ!



行け行けゴーゴー行け行けゴーゴー行け行けッゴーゴーアヘッド!!』

進め進めムーヴムーヴ進め進めムーヴムーヴ進めぇぇぇぇええキープムーヴィング!!』


 手に手に小銃を持った海兵隊が砂浜に躍り出て、帝都に向かう。


 念のために、上陸用舟艇にある2門の機銃がババババババッと、前方を掃射していく。


 海兵隊自身も分隊支援火器B.A.Rの、ブローニングオートマチックライフルをバリバリバリ! と、撃ちまくり戦友を支援。


 そして、水陸両用車は搭載火器の12.7mm重機関銃でドゥドゥドゥ!! と腹に響く音を立てながら、僅かに残る家屋を薙ぎ払っていく。


 砂浜に乗り上げた水陸両用車は、後部から海兵隊を吐き出すと車体を盾に、兵士を援護して前へ前へと。


 そうしてあっという間に砂浜を占領すると、ドンドン前へ進み、帝都へ占領地域を広げ始めた。





 今のところ反撃はない……。

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