第15話 残り時間

 大阪に移り住んでからも私は父親の見舞いには、回数は減ってしまったけど通っていた。


 口から食事を食べれなくなって、喉に管を通されていた。

 会う度に痩せ細っていく父の姿を見るのは本当に苦しかった。


 以前の様に首を動かしたりは出来ない。


 私が来ても天井を眺めている。



「お父さん、久しぶり」



 視界に入るように父の顔を覗き込んだ。

 お父さんは荒く呼吸をしていたが、私の顔を見て思い込みかもしれないけど呼吸が少し落ち着いたようにも感じた。


「お父さんが借りて観よった24のドラマ、シーズン増えたばい、元気になったらウチが借りてきちゃるけん」


 父の手を握る。

 以前のように強く握り返してくれることはなかった。

 そのかわり私の瞳をジッと見つめて口をゆっくり動かしている。

 何を言っていたのか聞き取れなかったけど、意識はハッキリしているんだと思う。



「また来るけんけんね」






 その言葉が父に向けての最後の言葉になった。

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