第8話 社会人

 求人に記載されていた金額は16万程だったと思う。


 蓋を開けてみると、手取りは8万程。


 年金、保険料、寮費、食事代で手取りは8万程らしい。


 仕事の時間は8時30分〜17時30分、昼休憩1時間、15時の休憩15分と記載されていだが


 朝7時作業開始で終わるのは19時頃、遅い時は21時だった。

 17時30分頃に帰っている人はパートのおばさんくらい。

 タイムカードは17時30分頃に工場長が社員の分を押しているので証拠はない。


 大人って汚いなって改めて実感した。


 昼の休憩も1時間と書いてあったが、15分程しかない。

 15時の休憩は水分補給でお茶を飲んだら終わり。2分も休憩できていない。


 給料から差し引かれている食事は仕事が21時過ぎると食堂の食事は片付けられている為、近くのコンビニに買いに行かなければならない。


 朝も7時に朝食を置きはじめるので当然食べれない。


 なので仕事が終わった後、同期の四人と朝食を買いに行くのが日課になった。


「あーー、はやく子供産んで養われたい」


 そう言葉を漏らしたのはKちゃんだ。

 Kちゃんは孤児の施設育ちで両親がいない。高校までは施設が面倒を見てくれるらしいが高校を卒業したら施設から出されるらしく寮付きの仕事を選んだらしい。

 Kちゃんはいつも子供、子供と言っていた。

 両親がいないので、はやく家族を作りたいらしいが女性が多い職場なので彼氏を見つけるの難しいだろう。


 コンビニで好きな物を好きなだけ買えることは今までの人生であまり体験したことが無かったので私には新鮮だった。

 高校の時、友達から遊びによく誘われていたがお金が無いので断っていた。

 友達から見れば、バイトしてるから遊ぶ金は持ってると思われていたかもしれないが、家の事情で生活はカツカツだったので食べたい物や欲しい物を好きなだけ買えてるは夢のような生活だった。




 その3ヶ月後、私は仕事を辞めた。

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