第6話 高校卒業

 無事に高校を卒業することができた。


 3月末には会社の寮に入らねばならないので荷物を纏めたりスーツを買いに行ったり、新生活に向けての準備をしていた。


 祖母は私が荷物を纏めているのを見て不安に思ったのだろう。そわそわと私の様子をジッと離れた場所から見てきた。


 トイレ問題はまだ解決していない。よく転がっているのを目にするので祖母が下着を下げはじめた時にズボンをはかせてトイレに連れていく。

 出す前にトイレに連れて行けばトイレでやってくれるが四六時中、祖母を監視することは不可能だ。


「めぐちゃん何処か行くと?」


「何処にも行かんよ」


 悟ってはいると思うけど、荷物を片付けてしまえば祖母は普段通りに戻る。

 何度か福岡の市内に働きに行くと話したが、すぐに忘れてしまうので話すことをやめた。

 何処にも行かないと言うのが一番祖母が安心するんだと思う。


 一人にさせてしまうけど、ごめんね。


 近くに和枝ちゃんもトミエおばちゃんも居るから大丈夫だろうとは当時思っていた。

 負担を掛けてしまうだろうとは思っていたが、私も我慢の限界だった。

 祖母の娘さんや息子さんはあまり様子を見に来てくれない。来ても昼頃に来て夕方には帰って行く。

 働いているから仕方ないのはわかるけど、高校とバイトで疲れてる私に全てを擦りつけるのが許せなかった。



 会社の寮に入り、仕事を始めて暫くして祖母は施設に入所することが決まった。


 面倒をみてくれる人が居なくなったから祖母の娘さんと息子さんがお金を出し合って施設に入れることにしたらしい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る